↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪族  作者: ゴルゴンゾーラ三国


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/48

31

 スマホを持っている手に力が入らなくなって、ぽとり、とそれを落とした。

 こんな生活をしていれば、親の死に目に会えるとは思っていなかった。気が付いた頃には親が死んでいて、僕は何も知らないまま、部屋にいて。なんとなく、そんな予想をしていた。


 でも、まだ、三十半ば。親の死なんて、童話よりも遠いどこかの、関係ない話のように思っていた。

 僕はたまらなくなって、身を丸め、頭を抱えた。


 心から大好きだと言える母親ではなかったけれど。

 なんの迷いもなく大嫌いだと思う母親でもなかったのだ。


 自分の理想の『こうあるべき』に当てはめてこようとする悪癖さえなければ――。しんかホームの信者たちも、同じようなことを考えて、家族を殺し、進化させようとしたのだろうか。


「――……まって」


 さらにもう一つ。気が付きたくなかったことに、気が付いた。思い至らなければよかった。その事実に、意識が向かないまま、母さんの死の可能性に、嘆いていられればよかった。


 でも、後悔しても遅い。

 僕は気が付いてしまったのだから。


 母さんは殺されて、『進化』して、抜け殻の副産物だけがこの家にいて――僕は生きている。

 僕は、殺されていない。

 つまり、僕は――。


「――いらなかった、って、こと……?」


 僕はもう一度スマホを取り、事件を調べた。あらましだけではなく、被告人の言葉ものっているようなニュースサイトを探す。必死になって、僕が察した事実が嘘であってほしいと、願いながら。

 でも、現実なんて、甘くない。そんなものだ。

 信者たちの一言には【ぎぃか様のために行った】【『進化』に至るには、依り代が必要。そのために殺した】【ぎぃか様】【ぎぃか様】【ぎぃか様】……。被告人の言葉があるニュースサイトでは、どこでも、ぎぃか様の一言が掲載されている。ある種の狂気のようなものを感じるが、今問題なのは、そこではない。


 僕の予想は、正しかった。

 ぎぃか様を行うには、進化させたい家族を殺す必要がある。その死体を依り代として理想の家族に進化させるから。


 でも、僕は生きている。

 つまり――理想の家族に、僕は必要なかったということだ。


 一部分だけ直せば、理想の家族。僕はそのレベルではなかった、ということだ。

 今の僕を見た誰かは、こんなニートが、何を言うかと思うだろうか。自業自得だと。

 それでも、リビングにある、あの四人掛けのテーブルが、家族みんなで埋まることは、どうあがいても、もう二度とないことが分かってしまった僕は、どうしようもなくて、ただ、鼻をすすってごまかすしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。