↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪族  作者: ゴルゴンゾーラ三国


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/48

28

 コンビニに行くことすら止められたのだ。カフェのために外出できるとは思えない。僕が、高校中退をしてニートになったとしても、頻繁に外へ出る人間だったら、そこまで怪しく思われなかったかもしれないが……。いや、母さんのことだから、ニートは引きこもり、という枠に当てはめようとして、結局は、今と同じような状況になる気がする。


 短い間に二度も外へ出ようとしたら、流石に言い逃れもできないだろうか。

 自室の窓から出ていくことを視野に入れたとき――。


「――駿汰」


 母さんの声がして、僕は反射的にスマホを消し、画面をベッドに押し付けた。透視能力があって、扉を開けずとも僕の行動が見えている、というわけではないだろうけど、考える前に体が動いた。

 僕はゆっくり、片耳につけていたイヤホンを取る。


「どうして、ご飯食べてないの? 食べなさいって、お母さん、言ったよね?」


「それは――」


 ――カチャ。


 僕が親子丼の味について言う前に、ドアノブが、少しだけ動いた。でも、扉の前に置いたカラーボックスが上手い具合に引っ掛かり、最後までドアノブが下に下がり切らない。半端な状態では、ドアノブでドアを開けることは不可能だ。


 一拍の間。

 そして、ドアノブが激しく動き始めた。


 ――ガチャガチャガチャッ!


 ――カコッカコッカコッ!


「――ッ!」


 尋ねなくとも分かる、母さんの確かな怒り。ドアノブが何度も動かされるだけでなく、そのたびにカラーボックスが叩かれるのだから、音が二重になって、騒がしくなる。


「なんでご飯を食べないの。なんで扉が開かないの。なんで、なんでなんでなんで――」


「――、っ」


 僕は思わず息を飲んだ。


 母さんの声が――歪んでいる。


 二重にも、三重にも感じられる声。母さんの声に重なって、母さんの声を加工したような声が聞こえてくる。そして、徐々に、母さんの声よりも、その、重なっている声の方が大きくなっていくような気がした。


 確かに母さんの声もあるのに。

 だんだんと、声が、低く、別人のようなものに、すり替わっていく。


「ま、まずかったから!」


 僕は必死に叫んだ。

 鼓動の音が、自分でも分かるくらいに、早鐘を打つ。


 今、聞こえている母さんの声が――歪んだ声に、全てかき消されてしまったら。

 僕の命はない。


 直感で、そう思った。


「あ、ああ、あんな酸っぱい親子丼、なんて、食べられるわけないだろ!」


 投げやりに叫ぶ。下手に出たら、余計に母さんへ不信感を募らせるだけ。

 なるべく、普段言っていたような、乱暴な言葉遣いをしようと心がけて、声が情けなく震えた。

 だか、ぴたり、と。

 あれほどの音を立てて動いていたドアノブが、斜めなまま、止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。