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『まあでも、最初から教祖様はそういうことがしたかったのかもね。何せ、しんかホーム、なわけだし。あたしたちからしたら、家族を造る、だけど、あの宗教の人らからしたら、家族を進化させる、の方が正しいわけじゃん』
「家族が……進化?」
あの黒いのが、母さんが進化した姿だとでも言うのか? でも、僕には到底進化したとは思えない。どちらかと言えば退化じゃないのか。
あんな、雑な人の形をした何かなんて。
『具体的なやり方は――まあ、犯罪になっちゃうから濁すとしてー。依り代を使って、理想の家族を造るの。母親とか、父親とか、兄弟姉妹。あとは夫と妻かな』
『本当に救いようのない駄目な奴もいるけどさ』と前置きをした上で『百パー嫌いになれる相手って、そうそういないじゃん』と丑師は言った。
それは、確かにそうかもしれない。
僕だって、母さんへ対して、嫌な思いや、やめてほしかったこと、怖くて逆らえない、そういう負の感情が多めだったことは否定できない。
でも、全部が全部、そうだったかというと違う。
僕がおいしいと言ったおかずは絶対お弁当に入っていたし、甘えたくて手を伸ばせば、笑顔で抱きかかえてくれた。それがたとえ、母さんの『そうあるべき母親像』だったとしても。
僕にとって、大切な思い出であることに変わりはない。
『例えば、酔ったら暴力をふるう父親が酒をやめさえすれば最高の父親だったり。浮気癖がなくなれば大好きな母親のままだったり。そういう、一部分だけ直してほしいとさ、理想の相手をゼロから探すよりも、既にいる家族の悪い部分を直せばいいわけじゃん?』
――だから、そういう悪い部分がなくなった理想の家族に進化させる。
そういう、ことなのか。
『ま、でも、初見さんの方は、出来上がった理想の家族じゃなくて、その副産物の方だと思うんだけどね。たまごの殻とか、さなぎの抜け殻とか、そんなイメージ? 生き物が次のステップに進むときにそういうものが残るの、割と定番でしょ』
「――……副産物?」
『依り代に使われる物が物だから。ぎぃか様をやろうとすると、本物の家族がいなくなっちゃうからね。周りに儀式をやったことがばれないよう、本物の家族の代わりに、今までの本物の家族がやってきたことを繰り返す偽物の家族が残るようになってるの』
――まさに、僕の今の状況だ。
ほとんど決まった時間に僕の食事を用意し、時折二階のトイレと風呂場を掃除する、母さんの偽物。
でも、依り代の、物が物、ってどういうことなのだろう。依り代を用意するのが犯罪というのならこの儀式を行うこと自体が法的にアウトになるのだし、絶対ろくな物じゃないだろうけど。
そう考えていると、丑師は、わざと重々しい空気を出す声のトーンで、言った。
『でも、気を付けてね。副産物の、偽物の家族に、偽物だって気が付いてることがばれちゃうと――帳尻合わせのために、殺されちゃうから』




