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僕は盆と漫画雑誌を取り、部屋に戻る。料理ののった盆を適当に机へ置き、漫画雑誌の発行された日付を確認する。
――最新号だ。
本の質感からして新しいものなのはすぐに分かったが、日付を見ると、より確実に、新しいものなのだと分からされる。少なくとも、十年前の、古いものなんかじゃない。
……本当に、わざわざ買いに行ったのか?
レシートが挟まっているわけでもないので、コンビニで買ってきたのかは分からないが。
――僕の方が、おかしいのか?
僕が見た、あの黒い手は、本当はちゃんとした母さんの手で。走り回る足音も、幻聴で。ずっと部屋にこもっていた引きこもりの頭がイカれただけだというのか?
「そんな、そんなわけ――ないだろ」
足の裏にある、埃の不快感。明らかに掃除をされていない階段を歩いた感覚。
あれは絶対、偽物なんかじゃ――。
「――……配信者?」
ふと、漫画雑誌に載った、巻頭漫画の絵が目に入る。あのときは新しいものが始まる、なんて適当を言ったから、本当に新連載が始まっているわけではなかったけれど、ネットで有名なバーチャル配信者のコラボ漫画が巻頭読み切りで載っているらしい。
この漫画雑誌に載っているバーチャル配信者の配信を追っているわけではないけれど、切り抜き動画がおすすめ欄に並んでいるのを見たことがある。
この、コラボ漫画の配信者は見たことがないが、たまに他の配信者の切り抜き動画は見ることがあって、そのときにはおすすめ欄によくいる。
「……そうだ、まだ、そこには相談してないな……」
果たしてバーチャル配信者に対して急に相談を持ちかけていいのか分からないが、バーチャルだろうが何だろうが、配信者として活動しているのなら、コメントを拾い上げて読んでくれるだろう。
ネット掲示板と質問サイトは全く駄目で。一つでも、話を聞いてくれる場所があるのなら、僕はそこにすがりたい気持ちで一杯だった。
そうと決まれば、僕は動画サイトで、今配信している配信者の中で、雑談系のもの、なおかつ、僕の話を聞いてくれそうな人を探す。あまり人数が多くなく、コメントがあっという間に流れて行かなそうな人数で、なおかつ、オカルト系だといい。現状を面白可笑しくされたって、少なくとも幻覚、幻聴、現実逃避の類ではないと信じてもらうところから始めないといけない。
そして、僕は一つの配信チャンネルを見つける。
「丑師こっこん……」
和風ゴスロリっぽく、いかにもホラーコンテンツに特化したデザインのイラストの女の子がサムネに入っている。同時に、『雑談枠~昼なら怪談も怖くないっ~』という配信タイトル。怪談系で、なおかつ雑談もある。今の僕が求めてやまないものだ。
視聴人数は一桁。流石にこれだけ少なければ、僕のコメントが無視されることもないだろう。
僕は、ごくりと唾を飲み込んで、その配信動画を開いた。




