アンドロイド③
父が亡くなり、私と私の為に作られたと言っていたアンドロイドの奏多との生活が始まって一ヶ月が過ぎた。
奏多と過ごす日常に慣れてきた私は、あまりにも人間らしい彼の行動に、時折奏多がアンドロイドだということを忘れてしまう程だった。
「奏多」
「何?」
「いつもの歌って?」
「分かった」
奏多が歌う甘い声が好きな私は、こうして奏多におねだりをしてはいつも歌を聴かせて貰っている。
彼の声を聞く度、父が居なくなって寂しかった心が癒されていくのを実感する。
だけど奏多の歌う横顔を見るのが私の至福の時間であるのと同時に、何故か急に胸が苦しく感じることも多くなっていった。
「杏里はこの歌が気に入ってるんだね?」
「うん、奏多の歌の中で一番好きよ」
「良かった……所で今日は薬はもう飲んだ?」
「あ……そう言えば今朝はまだ飲んでないな」
「それはダメだ。すぐに飲まなきゃ」
そう言うと奏多はすぐに立ち上がり、キッチンに置いてある瓶の中から薬を取り出し、私の目の前に差し出した。
そしてそれを受け取り水で飲み干す。
「おやすみ……杏里」
ソファに横になった私の髪を優しく撫でる奏多に見守られながら私は瞼を閉じた。
薬を飲むと短い時間ではあるが記憶が曖昧になる。
父は薬の副作用だと言っていたが、今の私にとって奏多の声が聞けない時間が苦痛になりつつあった。
ふと目が覚め、辺りを見回してみても奏多の姿が見当たらない。
窓の外はいつの間にか降り始めていた雨が、既に葉が落ちて剥き出しになった樹木を濡らしている。
「奏多……?」
その樹木の幹にもたれるように腰を降ろしている奏多の姿を見付けた私は、驚いて外に飛び出した。
「奏多! 奏多!」
いつからここに居たのか分からない程グッショリと濡れた彼の名を叫ぶようにして呼び掛ける。
だけど何度呼び掛けても反応しないまま、奏多の瞳は固く閉ざされていた。
そんな奏多の身体をどうにか引きずって家の中に入れたが、依然として奏多は動かない。
私の心はザワザワとざわつき、そこから立ち上がると彼と初めて出会った地下の部屋へと急いだ。
そして部屋の中にある机の引き出しを上から順番に開けて回り、最後に開けた一番下の引き出しに探し求めていたある物を見付けた。
私はそれを手に取りページを捲る。
そこに書かれていたのは、奏多の説明書と設計図——。
それを読んだ私はまた奏多の元へと走り、この家の中で一番陽のあたる場所へと運んだ。
奏多の身体は、太陽の光を瞳に当てることで維持すると書かれてあった。
だから私が眠りについた頃を見計らい、彼は外に出たのだろう……。
だけど降り出した雨雲が邪魔をして、必要な太陽光を取り入れることが出来なかったのかもしれない。
「奏多……お願い……目を開けて!」
祈るように私は彼の名を呼び、身体中に付いていた泥と雨の雫を拭った後、固く閉ざされていた瞼をこじ開けた。




