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『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第1章:平穏な日常

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第八話:騒がしい吉報

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。

僕たちはまだ、河口湖の桟橋で巨大な鯉を釣り上げたことを喜び続けていた。


笑い合い、互いの背中を誇らしげに叩き合っていた。


だが、その笑い声は――宿の建物の中から轟いた叫び声によって、突然止まった。


全員の視線が、一斉に建物へ向けられる。


「……お父様の声?」


ホタルが困惑した様子で尋ねる。


「宝くじにでも当たったみたいな声だったな……」


リンドウが眉をひそめながら呟いた。


スズランとカゲロウは互いに顔を見合わせた。


二人とも同じくらい戸惑っている様子だったが、やがて一緒に声のした方へ歩き出す。


僕と他のみんなも、その後に続いた。


――その少し前。


宿の中では、さらに大きな騒ぎが起こっていた。


アラリックは窓の前に立ったまま、手に湯呑みを持っていた。


その表情には、ユズキを偲んでいた余韻が残っているのか、薄い微笑みが浮かんでいた。


河口湖での休暇は、二日前に終わっていた。


シロガネ家の大きな屋敷も、すっかりいつもの日常へと戻っている。


エツコをはじめとする使用人たちは家事に追われ、カゲロウはいつもの訓練へ戻っていた。


そしてアラリック自身も、その朝から留守中に溜まった大量の報告書を処理するため、書斎に籠もっていた。


すでに冷めかけたお茶を一口飲もうとした――その瞬間だった。


上着の内ポケットに入れていた携帯電話が激しく振動し、静かな部屋を切り裂くような着信音が鳴り響いた。


「ふんっ――」


突然の音に驚いたアラリックの手が、反射的に跳ね上がる。


その拍子に、湯呑みが宙を舞った。


湯呑みは一回転した後――幸いにも冷めていた中身を、アラリックの顔と胸元のシャツへ盛大にぶちまけた。


「…………」


アラリックは、しばらくその場で固まっていた。


鼻先から水滴が落ち、その表情は、今自分の身に何が起きたのか理解するのに時間がかかっているようだった。


「……くそ。」


小さく呟いたアラリックは、近くの机からハンドタオルを掴んだ。


濡れた顔とシャツを手早く拭き、それからようやく、まだ鳴り続けている携帯電話に応答する。


「もしもし? どちら様――」


言い終わる前に、電話の向こうから叫び声が爆発するように響いた。


アラリックは反射的に携帯電話を耳から離し、顔をしかめながら耳を押さえる。


「――さあああああん! 成功しました! ついに成功したんです!」


「痛っ――! 声を落とせ、キリシマ!」


アラリックは耳鳴りのする耳を擦りながら呻いた。


「すみません! ですが、これは本当に重要なことなんです、大佐!」


電話越しの声――アラリックの部下の一人、副長キリシマは、注意されたにもかかわらず、まったく声量を落とさない。


むしろ興奮した様子のまま、さらに話を続けた。


「この三年間ずっと取り組んできた、あのプロジェクト――!」


「最終段階で何度も失敗していた、あのプロジェクトが――!」


「ついに成功しました!」


「試験データは完璧です、大佐! 本当に完璧なんです!」


アラリックの表情が、一瞬にして変わった。


先ほどまでの疲労も、ユズキを偲んでいた余韻も、すっかり消え去っていた。


その代わりに、瞳にはこれまで見たこともないほど生き生きとした光が宿っている。


まるで、人生で最高の知らせを聞いた子供のようだった。


「……本当か?」


アラリックが尋ねる。


その声には、すでに抑えきれない期待が滲んでいた。


「本当です、大佐!」


「こんなことで冗談を言う勇気なんて、俺にはありません!」


アラリックは一瞬、黙り込んだ。


そして、その知らせをゆっくりと噛み締める。


次の瞬間――。


「よっしゃあああああああ!!!」


アラリックは突然、喜びのあまり飛び上がった。


拳を固く握り締め、そのまま天井へ向かって突き上げる。


宿の中は、さらに大きな騒ぎになっていた。


周辺を警護していたアラリックの護衛たちは、主室から響き渡った大声を聞き、腰の武器に手を添えながら一斉に駆けつける。


「大佐! 何事ですか!?」


護衛の一人が扉を激しく叩いた。


その声には、隠しきれない焦りが滲んでいる。


「襲撃ですか!? 大佐、お返事を!」


次の瞬間、扉が勢いよく開いた。


そこに立っていたのは――髪を少し乱し、シャツをお茶で濡らしたまま、携帯電話を握り締めているアラリックだった。


その顔には、両耳に届きそうなほどの満面の笑みが浮かんでいる。


護衛たちは、その場で固まった。


半ば武器を構えたまま、目の前の光景を理解できずに困惑している。


「落ち着け、落ち着け。」


アラリックは興奮で息を弾ませながら、両手を上げた。


「襲撃じゃない。」


「プロジェクトが成功したんだ!」


「ついに成功したんだ!」


護衛たちは互いに顔を見合わせた。


やがて、その困惑は少しずつ安堵へと変わっていった。


とはいえ、突然の緊張とアドレナリンのせいで、まだ半分放心している者もいる。


ちょうどその時、僕と四人の姉たちが廊下へ到着した。


そこで僕たちは、なんとも奇妙な光景を目にした。


武器を構えた護衛たちが扉の前で困惑し、そしてその中心には――シャツをびしょ濡れにしたアラリックが、世界で一番幸せそうな笑顔を浮かべて立っている。


「……お父様?」


スズランが恐る恐る声をかける。


心配すべきなのか、それとも笑うべきなのか、明らかに判断に困っている様子だった。


アラリックが振り返る。


そして子供たちの姿を見た瞬間、その瞳はさらに輝きを増した。


「お前たち!」


「父さんに素晴らしい知らせがあるんだ!」


リンドウが片眉を上げる。


「宿全体をパニックに陥れるほど叫ぶような、素晴らしい知らせって何?」


「後で説明する!」


アラリックは声を上げて笑った。


その溢れ出すエネルギーは、普段の落ち着いた威厳ある姿とは、まるで別人のようだった。


「だが、これは……!」


「これは、父さんが何年も待ち続けていたことなんだ!」


僕はただ、姉たちの間に立ったまま、いつもとはまったく違うアラリックを見つめていた。


普段の彼は、何もかもを冷静に制御しているような人物だ。


けれど今だけは――とても、人間らしく見えた。


そして、とても生き生きとしていた。


僕には、アラリックが口にした「プロジェクト」が一体何なのか分からなかった。


それでも、養父の純粋な喜びに満ちた表情を見ていると、なぜか胸の奥が温かくなった。


それと同時に、心の一番深いところで、小さな好奇心が芽生えていく。


自分でも、うまく説明できないような好奇心だった。


一体どんなプロジェクトなら――。


あの元大佐が、まるで子供のように叫んでしまうほど重要なものになり得るのだろうか。


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