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『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第三部:PANDEMONIUM、アジア侵攻

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第68話 追う者、見つける者

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。

カルマンタンの森林。


夜はすでに深まり、森全体が静寂に包まれていた。


暗い木々の間を、数人の人影がゆっくりと進んでいく。


彼らは身を低くし、ときには地面を這うようにして、湿った土の上を進んでいた。


聞こえるのは、かすかな呼吸音と、時折揺れる葉の音だけだった。


先頭の一人が手を上げる。


全員が、その場で動きを止めた。


「……将軍、本当にここにいると思うんですか?」


先頭にいた人物は、すぐには答えなかった。


木の陰から顔を出し、数百メートル先にある古びた建物を静かに見つめる。


「……ああ。」


「私はそう確信している。」


その声には、迷いがなかった。


「それなら……」


一人の兵士が銃を構える。


「全員、準備しろ。」


数秒後――。


ドンッ!


静かな夜を、一発の銃声が切り裂いた。


遠くに停められていた車両のそばにいたPANDEMONIUM兵が、突然身を伏せる。


「何だ!?」


「スナイパーだ!」


「隠れろ!」


それまで安全だと思っていたPANDEMONIUM兵たちは、一斉に散開した。


しかし、再び遠くから銃声が響く。


ドンッ!


ドンッ!


敵兵たちは次第に動揺し始めた。


どこから撃たれているのか、まったく分からない。


「動くな!」


「敵はこの周辺にいるぞ!」


やがて、数人の兵士がゆっくりと両手を上げた。


「降伏する!」


森の中が静まり返る。


しばらくすると、木々の間から武装した一団が姿を現した。


その先頭を歩いていたのは、日本軍の軍服を身にまとった一人の女性だった。


夜風が、彼女の髪を静かに揺らしている。


PANDEMONIUM兵の一人が、その顔を見た瞬間――目を見開いた。


「……待て。」


女性が足を止める。


「まさか……」


「あなたは……」


兵士は息を呑んだ。


「ホタル将軍……?」


ホタルは無表情のまま、彼を見つめた。


「そうだ。」


その瞬間、周囲の空気が変わった。


「日本軍の将軍……?」


PANDEMONIUM兵の一人が、一歩後ずさる。


「なぜここにいる!?」


ホタルは、その問いには答えなかった。


ただ、目の前の兵士たちを見つめる。


「私は、人を探している。」


「誰を?」


ホタルは迷うことなく答えた。


「弟を。」


「……弟?」


「ヒカル。」


兵士たちは互いに顔を見合わせた。


ホタルが一歩前へ出る。


「ヒカルはどこにいる?」


誰も答えない。


「答えろ。」


それでも沈黙が続く。


そのとき、ホタルの後ろにいた兵士が銃を構えた。


ドンッ!


先頭にいたPANDEMONIUM兵がその場に倒れ、残った兵士たちは慌てて両手を上げた。


その隙に、近くで拘束されていた人々も救出された。


ホタルは彼らの方へ振り返る。


「大丈夫か?」


一人の男が小さく頷いた。


「……はい。」


「あなたたちが来てくれたおかげです。」


ホタルは再び彼らを見る。


「ヒカルはどこにいる?」


すると、救出された男の一人が口を開いた。


「……知っています。」


ホタルがすぐに振り向く。


「知っている?」


男は頷いた。


「俺は独立青年団の一員です。」


「今は、俺たちの仲間と……」


男は一瞬だけ言葉を止めた。


「ヒカル将軍と一緒に行動しています。」


ホタルの表情が固まった。


「……何?」


男はもう一度答える。


「ヒカル将軍です。」


ホタルの部下たちも、互いに顔を見合わせる。


ホタルは信じられないものを見るような顔をした。


「待って。」


「ヒカルが……将軍?」


男は頷いた。


「正式な将軍なのか?」


「……いえ。」


ホタルは小さく息を吐いた。


「なら、正式なものではないんだな。」


男は苦笑する。


「まあ……そうですね。」


ホタルは額に手を当てた。


「私の末っ子が……将軍……?」


数秒後。


ホタルの表情が少しだけ変わった。


「……まあ、格好いいじゃないか。」


「将軍?」


部下が不思議そうに声をかける。


ホタルはすぐに立ち上がった。


「案内してくれ。」


「今からですか?」


「今すぐだ。」



---


数キロ先。


一台の車両が、暗い森林の中をゆっくりと進んでいた。


車内には、ヒカルとバガス、そして数人の独立青年団のメンバーが乗っている。


バガスは手元のデジタルマップを確認していた。


「PANDEMONIUMの地下施設は、この先のはずだ。」


ヒカルは頷く。


「なら、侵入してデータを確保する。」


「それから脱出だ。」


バガスが笑う。


「簡単そうだな。」


ヒカルが彼を見る。


「お前が言ったんだろ。」


「……冗談だよ。」


ヒカルが小さく笑った。


しかし、その数秒後――。


ピッ、ピッ!


車内に警告音が響いた。


バガスが画面を見る。


「敵影だ。」


ヒカルが立ち上がる。


「数は?」


「まだ分からない。」


その瞬間、前方から銃声が響いた。


ドンッ! ドンッ! ドンッ!


「接敵!」


インドネシア側の兵士たちも、すぐに応戦する。


森林の中で銃撃戦が始まった。


ヒカルは、別方向から近づいてくるPANDEMONIUM兵を見つける。


そして腰から二本のカランビットを抜いた。


バガスが振り返る。


「ヒカル、待て――」


遅かった。


ヒカルは遮蔽物を飛び越え、敵兵の背後へと一気に飛び込んだ。


一人のPANDEMONIUM兵が振り返る。


その目が大きく見開かれた。


「……何だ?」


暗闇の中。


ヒカルは二本のカランビットを手に立っていた。


その姿は、森の闇から突然現れた異形の戦士のように見えた。


「モンスター……!」


「人間なのか、あれ!?」


ヒカルが素早く動く。


PANDEMONIUM兵たちは驚き、次々と後退していく。


その騒ぎを聞きつけ、さらに多くの兵士が建物から出てきた。


バガスが眉をひそめる。


「なんで逆に増えてるんだ……?」


「怖がってるからだろ。」


ヒカルは淡々と答えた。


「人間は怖くなると、仲間を呼ぶからな。」


「それは今、必要ないだろ!」


再び銃声が響く。


ヒカルは敵の攻撃をかわしながら前進していく。


そして、そのまま施設の入口へと道を切り開いていった。


バガスはその姿を見つめる。


「……本当に普通じゃないな、あいつ。」



---


PANDEMONIUM地下施設


巨大な鋼鉄製の扉が開く。


その先には、白い照明に照らされた長い通路が続いていた。


ヒカルとバガスが先頭を歩き、その後ろを独立青年団のメンバーが続く。


「静かすぎるな。」


バガスが周囲を見回す。


「ここ、本当にPANDEMONIUMの施設なのか?」


ヒカルは頷いた。


「だからこそ、妙なんだ。」


彼らはさらに奥へ進む。


やがて、通路の先に巨大な扉が現れた。


ヒカルが横の操作パネルに触れる。


ピッ。


反応はない。


もう一度触れる。


ピッ――。


次の瞬間、巨大な扉がゆっくりと開いた。


その向こうには、広大な制御室が広がっていた。


壁一面に、数十枚ものモニターが並んでいる。


そのうちのいくつかは、まだ稼働していた。


バガスが立ち止まる。


「……何だ、ここ?」


ヒカルは答えず、一つの端末へ近づいた。


画面には、無数の数字が表示されている。


73921


48163


27594


81642


59371


42816


95173


36428


71592


28461


数字は、さらに下へと続いていた。


ゼロは一つもない。


説明もない。


ヒカルは画面をスクロールする。


「……何だ、これ?」


さらに数字を追っていく。


そして――指が止まった。


無数の数字の中に、一つだけ異なる表記があった。


-99


ヒカルは黙った。


「……-99?」


バガスが近づく。


「何か見つけたのか?」


「分からない。」


ヒカルは画面を拡大する。


「ただ……この数字は妙だ。」


もう一度確認する。


名前もない。


説明もない。


そこにあるのは、ただ一つの数字だけ。


-99


ヒカルは小さく息を吐いた。


「……ただのコードかもしれない。」


別の画面へ移ろうとした、そのときだった。


画面の下部に何かが表示されていることに気づく。


数字ではない。


一つの数式だった。


\[

\sqrt{\pi+x^2}\times\frac{a+b}{a-b}

\]


ヒカルは無言で画面を見つめる。


その下には、さらに別の式が表示されていた。


\[

\frac{\sqrt{3}\times(7^2+11^2)}{\pi+x}\div|x-99|

\]


さらに、その下。


\[

\left(\frac{a^2+b^2}{a-b}\right)\times\sqrt{\pi}\approx ?

\]


バガスは困惑した表情で画面を見る。


「……これ、数学なのか?」


ヒカルはすぐには答えなかった。


ただ画面を見続ける。


スクロールするたびに、さらに多くの記号が現れた。


π √ × ÷ | ~ { } % [ ]


しかし、何を計算しているのかを示す説明はどこにもない。


ヒカルがもう一度画面に触れる。


新しいページが開いた。


そこには、一列の数字だけが表示されていた。


73921 → 48163 → 27594 → -99 → 81642


ヒカルは眉をひそめる。


「……なぜ-99だけ、ここに入ってる?」


バガスが画面を覗き込む。


「コードの一部じゃないのか?」


「かもしれない。」


ヒカルは数字を拡大する。


だが、見れば見るほど、そのデータは奇妙だった。


名前もない。


日付もない。


場所もない。


説明すら存在しない。


あるのは数字と数式だけだった。


ヒカルはゆっくりと手を離す。


「このデータ、全部保存しておいてくれ。」


バガスが頷く。


「分かった。」


ヒカルはもう一度だけ画面を見る。


-99


なぜか、その数字だけが妙に目に残った。


だが、それ以上考えることはなかった。


「……先へ進もう。」


ヒカルが背を向ける。


その瞬間。


誰も見ていない画面の一つが、静かに切り替わった。


ほんの一瞬だけ、新しい文字列が表示される。


[DATA CONTINUES...]


ヒカルは、それに気づかなかった。


画面はすぐに暗くなる。


そして、何事もなかったかのように静寂が戻った。


ヒカルたちは、そのまま制御室の奥へ進んでいった。


残された画面には、もう何も表示されていない。


ただ――。


先ほどの数字だけが、誰にも知られることなく記録され続けていた。


-99


――つづく.

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