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『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第三部:PANDEMONIUM、アジア侵攻

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第67話 落ちた首都、消えない炎

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。

インドネシアの新首都が、ついに陥落した。


かつてインドネシアの抵抗の象徴だった政府関連施設には、今やPANDEMONIUMの旗が掲げられている。


PANDEMONIUMの兵士たちは、勝利を確信した表情で市街地を歩いていた。


彼らにとって、勝利はもう目前だった。


しかし――


その頃、首都から遠く離れた場所では、インドネシア軍がなおも移動を続けていた。


一台、また一台と、車両が占領された地域から離れていく。


撤退ではない。


ただ、場所を変えているだけだ。


インドネシアは首都を失った。


だが――国家そのものを失ったわけではない。


そして、抵抗の炎も消えてはいなかった。



---


その頃。


前線から遠く離れたPANDEMONIUMの司令施設には、数人の高級将校が集まっていた。


広大な司令室は薄暗く、その正面には巨大なデジタル戦況図が映し出されている。


そこには東南アジア一帯の地図が表示されていた。


いくつもの地域が赤く染まっている。


その中心に、一人のPANDEMONIUM司令官が立っていた。


「インドネシアの首都は、すでに我々の手中にある。」


一人の将校が答える。


「抵抗勢力は、まだ残っています。」


「だが、彼らは統率の中心を失った。」


司令官は薄く笑った。


「ならば、次へ進むだけだ。」


彼は地図を操作した。


赤い領域がさらに広がっていく。


そして――


指が、日本列島の上で止まった。


「次は、日本だ。」


室内の空気が少し変わった。


「日本……ですか?」


「ああ。」


司令官は日本を指差す。


「一度は敗北した。」


「だが、あの戦いで受けた損害から立て直すには時間が必要だ。」


「今なら、再び攻め込める。」


別の将校が頷いた。


「そして、その次は?」


司令官の指が、ゆっくりと南へ移動する。


そして――


フィリピン諸島の上で止まった。


「フィリピンだ。」


数人の将校が顔を見合わせる。


「フィリピン……?」


「ああ。」


司令官は地図を見ながら続ける。


「多数の島々から成る国だ。」


「インドネシアと同じく、我々にとって重要な地域になる。」


「日本を再び叩き、フィリピンを制圧する。」


「そして東南アジア全域を、我々の支配下に置く。」


一人の将校が笑った。


「日本とフィリピン……。」


「面白くなりそうですね。」


司令室に小さな笑い声が広がった。


誰もが、すでに勝利を手にしたかのような顔をしていた。


だが――


彼らは知らなかった。


その頃、外では戦争そのものが変わり始めていたことを。



---


一方。


PANDEMONIUMが占領した、とある地域。


一つの建物が、臨時の尋問施設として使用されていた。


その内部には、複数のインドネシア人が拘束されている。


PANDEMONIUMの兵士たちは、いまだ抵抗を続けるインドネシア軍の位置を聞き出そうとしていた。


しかし――


誰一人として、求められた情報を口にしなかった。


「まだ言わないのか?」


一人の兵士が怒鳴る。


拘束された市民は、ただ黙って床を見つめていた。


「……」


「答えろ!」


それでも返事はない。


兵士の苛立ちが増していく。


その様子を、部屋の隅にいた別のPANDEMONIUM兵士が笑いながら見ていた。


「無駄だ。」


「こいつらは、もう何も話す気がない。」


別の兵士が前へ出る。


「なら……別の方法を――」


――ドン!


突然、外から大きな音が響いた。


窓の近くにいたPANDEMONIUM兵士が、その場に倒れ込む。


「……何だ?」


部屋が凍りついた。


誰も動かない。


数秒後――


一人の兵士が叫んだ。


「スナイパーだ!」


その瞬間、部屋中が一気に騒然となった。


「隠れろ!」


「遮蔽物へ!」


「窓から離れろ!」


兵士たちは一斉に身を隠した。


一人が外を指差す。


「向こうの建物かもしれない!」


しかし――


その言葉が終わるより先に。


――ドン!


その兵士も倒れた。


「……!」


今度こそ、誰も声を出さなかった。


どこから狙われているのか。


誰が撃っているのか。


まったく分からない。


「全員、頭を下げろ!」


指揮官が低い声で命令する。


兵士たちは壁や車両の陰へ身を隠した。


誰も不用意に立ち上がろうとはしない。


外を確認しようとしても、見えるのは霧に包まれた道路だけだった。


遠くには、破壊された建物。


そして、静まり返った街。


「……どこから撃っている?」


誰も答えられない。


ほんの数分前まで――


彼らは笑っていた。


インドネシアはもう終わった。


抵抗する力など残っていない。


そう信じていた。


だが今は違う。


自分たちがどこから狙われているのかすら、分からない。


「……インドネシア軍に、スナイパー部隊がいたのか?」


一人が小声で尋ねる。


別の兵士が答えた。


「そんな情報はありません。」


指揮官は歯を食いしばった。


「なら……誰だ?」


沈黙。


誰も答えられなかった。


その頃――


部屋の片隅にいたインドネシアの市民たちは、ゆっくりと顔を上げていた。


互いに顔を見合わせる。


そして、一人が小さな声で呟いた。


「……誰かが、助けに来てくれたのか?」


隣にいた者は答えなかった。


だが、その目には――


ほんのわずかな希望が戻っていた。



---


外から聞こえていた音が、突然止まった。


PANDEMONIUMの兵士たちは、息を潜めたまま周囲を警戒する。


もう笑う者はいなかった。


さっきまで感じていた余裕も消えている。


恐怖は、いつの間にか彼ら自身へ向けられていた。


一方、その頃も――


インドネシア各地では、兵士たちが動き続けていた。


首都は奪われた。


政府施設も占領された。


それでも、戦いをやめる者はいなかった。


首都は落ちた。


だが、インドネシアそのものは落ちていない。


そして――


その夜。


PANDEMONIUMは、初めて気づき始めていた。


自分たちが勝っているはずの戦場で――


何かが、自分たちを追い始めている。


――次回へ続く。

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