↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第三部:PANDEMONIUM、アジア侵攻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/69

第64話: ガルーダ、立ち上がる

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。

夜がインドネシアの大地を包み込んでいた。


カリマンタンの広い地域では激しい雨が降り続き、道路は泥に覆われ、森には薄い霧が立ち込めている。


遠くでは、時折雷が空を切り裂いていた。


「ゴロロロロ……!」


雷鳴は、街の方角からかすかに響いてくる爆発音と混ざり合っていた。


戦争は、まだ終わっていない。


多くの人々が身を隠し、安全な場所を求めているその瞬間でさえ、各地では戦闘が続いていた。



---


シロガネ家の大きな屋敷。


そのリビングは、いつもとは比べものにならないほど静まり返っていた。


四人の姉たちが、部屋の中央に集まっている。


いつものような軽い会話もない。


笑い声もない。


全員の表情には緊張が浮かんでいた。


考えていることは、ただ一つ。


――遠く離れたインドネシアで、混乱の渦中にいる末っ子、ヒカルのことだった。


スズランは、テーブルの上に大きな地図を広げた。


そして指で、海上からカリマンタンへ向かう航路をなぞる。


「一部の海上戦力を送ることはできる」


「カリマンタンへ続く海路の方が、空から直接向かうよりはまだ比較的安全だ」


リンドウは腕を組んだ。


「それとも、最寄りの陸路から装甲部隊を送り込む?」


「上陸地点を一つ確保できれば、陸上部隊を素早く前進させられる」


続いて、カゲロウが口を開いた。


それまでずっと、地図を黙って見つめていた。


「騒がしすぎる」


「ヒカルを救出する必要があるなら、最も安全なのは少人数の特殊部隊を送り込むこと」


「敵に一切気づかれずにね」


三つの案は、それぞれ真っ向から対立していた。


どの案にも利点がある。


そして同時に、決して小さくない危険も存在する。


議論は長く続いた。


しかし、誰もが納得できる結論には、なかなか辿り着かなかった。


その時まで黙って話を聞いていたホタルが、静かに椅子から立ち上がった。


全員の視線が、一斉にホタルへ向けられる。


「……私は、もう決めた」


その声は落ち着いていた。


だが、そこには今まで誰も聞いたことのないほど強い決意が込められていた。


「私は航空軍の将軍職を辞任する」


部屋が、一瞬で静まり返った。


スズランは目を見開く。


「……何ですって?」


リンドウも、組んでいた腕を解いた。


カゲロウは、ただ黙って妹を見つめている。


ホタルはすでに手元のデジタル端末を起動していた。


「これが規定違反になることは分かっている」


指を素早く動かしながら、ホタルは続ける。


「でも、もう黙って座っていることなんてできない」


そして、一通のメッセージが日本政府へ直接送信された。


内容は短かった。


だが、その言葉には強い意志が込められていた。


> インドネシアとベトナムは、現在極めて危険な状況にあります。


アジア地域の隣国として、私たちが彼らを支援することはできないのでしょうか。


私に任務を離れる許可を与え、現地へ向かわせてください。





---


数分後。


日本政府の会議室。


総理大臣は、送られてきたメッセージを黙って読み続けていた。


周囲に座る閣僚や補佐官たちも、互いに視線を交わしている。


やがて、一人の補佐官が口を開いた。


「論理的に考えれば、今この時点でインドネシアとベトナムを支援することは、我々にとっても利益になります」


彼は東南アジアの地図を指差した。


「もし東南アジア全域がPANDEMONIUMの手に落ちれば、奴らは今まで以上に強力な拠点を手に入れることになる」


「そして、将来的に日本へ再び攻撃を仕掛けるための基盤にもなり得ます」


総理大臣は、ゆっくりと頷いた。


そして、長い息を吐く。


数秒後。


ついに決断が下された。


「彼女の出発を許可する」


会議室の空気が、わずかに和らいだ。


「ただし、必要な後方支援と補給体制は必ず整えろ」


その決定によって――


日本も、ついに動き始めた。



---


インドネシア


同じ頃。


カリマンタンの深い森の奥では――


数週間にわたって準備されていた作戦が、ついに始動した。


その名は――


『ガルーダ・バンキット作戦』。


それは、バガスが組織したガルーダ義勇軍の戦力と、ここ数週間、俺が密かに製造していた秘密の装甲戦闘車両を組み合わせた大規模作戦だった。


彼らは、もうただ守るだけではない。


今度は、自分たちの手で反撃を開始する。


雨は、さらに激しさを増していく。


「ザーッ……!」


激しい雨が木々の葉や、森の中に隠された施設の屋根を容赦なく叩き続ける。


その上空では、数機の高性能ドローンが雨を切り裂きながら飛行していた。


その下では、PANDEMONIUMの部隊が森を捜索し続けている。


そして、何体もの巨大ロボットが木々の間をゆっくりと進んでいた。


一歩踏み出すたびに、大地が震える。


「ドン……!」


「ドン……!」


その重い足音は、遠くまで響き渡っていた。


だが、彼らは知らなかった。


自分たちがすでに、ガルーダ義勇軍によって準備された戦場へ入り込んでいることを。



---


隠された指揮所。


俺は、戦術モニターの前に立っていた。


デジタルマップ上には、数十もの移動する敵影が表示されている。


情報はリアルタイムで更新され続けていた。


「敵部隊、東側セクターに侵入!」


オペレーターが報告する。


俺は数秒間、画面を見つめた。


やがて、木々の間を移動する一際大きな反応に目を止める。


「東側の森林に大型ロボットが一体いる」


俺は画面を指差した。


「ラジャワリを一両、向かわせろ」


「了解!」


数秒後――


地下ハンガーからエンジン音が響き渡った。


「ブォォォォン……!」


一両の小型装甲戦闘車両が勢いよく飛び出していく。


その名は――ラジャワリ。


俺が新たに開発した最新鋭の戦闘車両だ。


日本で開発したビャッコよりも小型でコンパクト。


しかし、その戦闘能力は決して劣っていない。


ラジャワリは、激しい雨に打たれる森の中を猛スピードで駆け抜けていく。


進路上の枝が次々と落ちていく。


その頃、巨大ロボットの近くにいたPANDEMONIUM兵が、突然警報を受け取った。


「正体不明の接近反応!」


巨大ロボットが振り返る。


だが、遅かった。


「ターン!」


ラジャワリの砲撃が轟く。


「ドォォォン!」


砲撃は巨大ロボットの主要部を直撃した。


その巨体が大きく揺らぐ。


やがて、バランスを失った巨大ロボットは、その場に倒れ込んだ。


「ドガァァン!」


激しい雨が、倒れた機体を再び打ち付ける。


その直後、ガルーダ義勇軍の特殊部隊が現場へ駆けつけた。


隊員の一人が、巨大ロボットの背面にある隠された機構を発見する。


「何かあるぞ!」


隊員がレバーを引く。


すると、隠されていた小さな扉が開いた。


その奥には――


これまで行方不明とされていた、インドネシア軍の高級将軍がいた。


彼は、秘密の拘束室に閉じ込められていたのだ。


特殊部隊は、すぐに将軍を外へ連れ出した。


将軍は疲れた表情で、周囲を見渡す。


「イ、インドネシアは……まだ滅んでいないのか?」


隊員の一人が、笑みを浮かべた。


「もちろんです」


隊員は将軍の身体を支えながら答える。


「インドネシアの将軍が、そう簡単に倒れるものですか」



---


別の地域では――


また違ったエンジン音が、激しい雨の中を突き抜けていた。


「ブォォォォン!」


一両の水陸両用装甲車が、森林地帯を猛スピードで駆け抜けている。


その名は――


コモド。


だが、今回のコモドは一両だけではなかった。


その後方から、数十機もの小型ドローンが追跡している。


「敵ドローンだ!」


乗員の一人が叫ぶ。


運転手はフロントガラス越しに後方を確認した。


「多すぎるだろ!」


ドローンの数は、どんどん増えていく。


「右! 今すぐ右に曲がれ!」


運転手がハンドルを切る。


「叫ぶな! 今、運転中なんだよ!」


「だから曲がれって言ってんだろ!」


コモドが急旋回する。


追跡していたドローンの群れが隊列を崩した。


そのうちの何機かが空中で衝突する。


「ドドドドドン!」


連続した小さな爆発音が、背後から響いた。


運転手はバックミラーを見る。


「よっしゃ! 当たってねぇ!」


得意げに笑った。


――しかし。


数秒後。


その表情が固まった。


「……あれ?」


前方の道が、突然そこで途切れていた。


その先に広がっていたのは――海。


「おい! ブレーキ!」


「間に合わねぇ!」


「はぁ!?」


「ドボォォォン!」


コモドは、そのまま海へ突っ込んだ。


三人の乗員が同時に叫ぶ。


「うわああああああっ!」


数秒後。


車内が静まり返った。


各種インジケーターは、何事もなかったかのように正常に点灯している。


運転手が、ゆっくりと目を開けた。


「……俺たち、生きてる?」


乗員の一人が操作パネルを確認する。


「コモドは水陸両用車だぞ」


運転手は、しばらく黙り込んだ。


「……あ」


そして、安心したように息を吐く。


すぐに、いつもの自信満々な笑みが戻った。


「……こんなの、余裕じゃん?」


だが――


その瞬間。


海面の向こうから、大きな影が現れた。


「……え?」


それは、先ほどまでのドローンとは比較にならないほど巨大な機体だった。


大型ドローンが、横方向からコモドへ向かって突進してくる。


「ドンッ!」


機体の側面に衝撃が走る。


「うわあああああっ!」


「何だよ、こいつ!?」


「逃げろ! 逃げろ!」


コモドは全速力で近くの小さな島へ向かう。


そして、なんとか島の海岸にある小さな洞窟へと逃げ込んだ。


エンジンを停止する。


三人は黙り込んだ。


荒い呼吸だけが、狭い車内に響いている。


外から聞こえるのは、激しい雨の音だけだった。


「ザーッ……」


やがて、一人の乗員が小さな声で呟く。


「……今の、危なかったな」


運転手が彼を見る。


「それ言うなよ」


「なんで?」


「そういうこと言った直後って、だいたい次の問題が起きるんだよ」


三人は互いに顔を見合わせる。


沈黙。


「……」


「……」


「……もう誰も喋るな」


しばらくの間、三人は洞窟の中でただ静かにしていた。


外では、雨が激しく降り続いている。


そして再び、カリマンタンの空に雷鳴が轟いた。


「ゴロロロロ……!」


しかし、激しい雨と戦争の轟音の向こう側では――


ガルーダ義勇軍の全戦力が、すでに動き始めていた。


もう、後戻りする場所はない。


ガルーダ・バンキット作戦は、正式に始動した。


そして――


本当の戦いは、今始まったばかりだった。

少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部の**【ブックマークに追加】や【評価(★★★★★)】**をいただけると嬉しいです!

皆様の応援が執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。