第62話: 時は来た
はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。
夜の帳がカリマンタンのある秘密の場所を包んでいた。
薄暗い照明だけが照らす地下室では、独立青年団の数人のメンバーが黙ったまま、何かを待っていた。
その時――
「……信号を受信しました」
警戒に当たっていた一人のメンバーが、すぐに立ち上がった。
目の前の小型モニターに、ある特殊なシンボルが表示される。
それは、彼らがずっと待ち続けていたものだった。
バガスからのメッセージ。
「時は近い。準備を整えろ。作戦を開始する」
長い説明など必要なかった。
その言葉だけで十分だった。
独立青年団の全員が、そのメッセージの意味を理解している。
「ついに……」
「本当に、俺たちは動くのか?」
「そうだ。だが、まだだ。次の指示を待て」
彼らはすぐに、基地のさらに奥へと向かった。
地下深くに隠されていた区画が、ゆっくりと開かれていく。
重厚な鋼鉄製の扉が横へと移動すると、その先には作戦に必要な装備が並べられた長い部屋が姿を現した。
何人かのメンバーは通信機器や車両、その他の装備を確認していく。
別の者たちは、戦略上重要な地点の近くに設けられた複数の隠れ場所の準備を始めた。
すべてが静かに進められていた。
歓声もない。
勝利を叫ぶ者もいない。
なぜなら、たった一つのミスが、これまで積み上げてきた計画をすべて台無しにする可能性があるからだ。
バガスは大きなインドネシアの地図の前に立っていた。
その視線は、いくつかの場所に付けられた印へと向けられている。
「……もうすぐだ」
彼は拳を強く握った。
「俺たちは、ただその時を待てばいい」
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ベトナム
一方、アジアの別の場所では、まったく異なる状況が起きていた。
PANDEMONIUMの部隊が、ベトナムの防衛線へ向けてゆっくりと進軍していた。
その規模は非常に大きい。
装甲車両が後方を進み、その前方には大量の歩兵部隊が展開していた。
指揮車両の中では、ドレイヴン・ソーン将軍がデジタルマップを見つめていた。
「そのまま進め。敵に追加の防衛準備をする時間を与えるな」
しかし――
その直後、遠方から爆発音が響いた。
先頭を進んでいた部隊が、一斉に足を止める。
「何が起きた!?」
返答を待つ間もなく、進軍ルートの一部が次々と危険な状態へと変わっていく。
ベトナムは、PANDEMONIUMが到着する遥か前から防衛の準備を整えていたのだ。
ドレイヴンは眉をひそめた。
「……最初から、俺たちを待ち構えていたというわけか」
将軍はすぐに判断を下す。
「偵察ドローンを飛ばせ。安全な進軍ルートを探せ」
複数の最新型ドローンが、次々と空へと放たれた。
だが、数秒後――
指揮車両内のモニターが突然、激しいノイズに覆われた。
「将軍! ドローンとの通信が途絶しました!」
「何だと!?」
画面上に表示されていた反応が、一つ、また一つと消えていく。
さらに、一部のドローンは情報を送信することすらできないまま、機能を失って落下していった。
ドレイヴンはしばらく無言で画面を見つめる。
「……そこまで対策していたか」
彼は短く息を吐いた。
「ならば、地上部隊で道を切り開け」
PANDEMONIUMの部隊は、再び前進を開始した。
だが、ベトナム側はすでに幾重もの防衛線を構築していた。
複数の方向から防衛部隊による攻撃が始まり、PANDEMONIUMの進軍速度は次第に落ちていく。
いくつかの車両は、その場で進行を止めざるを得なくなった。
前方の部隊も、これ以上の進軍が難しい状況へと追い込まれていく。
「進め! 止まるな!」
PANDEMONIUMの指揮官の怒号が、戦場に響き渡る。
しかし今回は――
PANDEMONIUMの側が、明らかに苦戦していた。
アジアへの侵攻が始まって以来、彼らが一つの国の防衛線をこれほど容易に突破できないのは初めてだった。
ドレイヴンは険しい表情でモニターを見つめる。
「……ベトナムは、通常の攻撃だけで制圧できる相手ではないな」
その頃、戦場の反対側では、ベトナム軍が必死に防衛線を維持していた。
彼らも、まだ勝利したとは思っていない。
それでも――
初めて、PANDEMONIUMのほうが後退を余儀なくされていた。
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日本
一方、日本でも緊張した空気が漂っていた。
政府は、すでに必要な準備をすべて整えている。
インドネシアの情勢に関する情報も、次々と届いていた。
大型のデジタルマップには、PANDEMONIUMによって制圧された地域が表示されている。
一人の政府高官が、大型スクリーンの前に立っていた。
「インドネシアの情勢は、さらに悪化しています」
部屋の中が静まり返る。
日本側では、東南アジアへの派遣を想定して、複数の将軍たちもすでに準備を整えていた。
しかし、最終的な決定はまだ下されていない。
一人の高官が、重い口調で言った。
「我々は、つい最近まで長い戦争を戦っていた。今、将軍たちを派遣するということは、それだけ大きなリスクを背負うことになる」
別の将軍が、インドネシアの地図を見つめる。
「だが、このまま待ち続ければ……手遅れになるかもしれない」
誰も、すぐには答えなかった。
全員が理解していた。
インドネシアには支援が必要だ。
しかし、日本自身もまた、長い戦争からようやく立ち直り始めたばかりだった。
あまりにも早く動けば、日本国内に新たな問題を生む可能性もある。
だが、動かなければ――
PANDEMONIUMは、さらに強大になってしまう。
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インドネシア
その頃、インドネシアの中心部から遠く離れた場所に、ほとんどの政府関係者でさえ存在を知らない場所があった。
アラリック・シロガネが残した秘密基地。
その場所は、意図的に隠されていた。
存在を知っている者は、ごく一部しかいない。
独立青年団の中でさえ、本当の所在地を知る者はほとんどいなかった。
別の部屋では、インドネシアの重要人物たちが集まっていた。
彼らは、インドネシアの地図が置かれたテーブルを囲んでいる。
「では……アラリックの基地は、まだ稼働しているのか?」
一人の男が、ゆっくりとうなずいた。
「可能性は高い。だが、正確な場所までは分かっていない」
「誰が知っている?」
部屋に再び沈黙が訪れる。
誰も、すぐには答えなかった。
なぜなら、彼ら全員がその情報の重要性を理解していたからだ。
もしPANDEMONIUMに基地の場所を知られてしまえば、すべてが変わる可能性がある。
やがて、別の人物が口を開いた。
「もし本当にアラリックの息子がそこにいるのなら……我々には、まだ可能性が残されている」
全員の視線が、地図へと向けられる。
その外では、PANDEMONIUMが支配領域をさらに広げ続けていた。
ベトナムは、ついに本格的な抵抗を見せ始めた。
日本は、いまだ次の一手を決められずにいる。
そしてカリマンタンでは――
小さな炎が、今まさに灯されようとしていた。
これまで、意図的に隠されていた炎。
そして、その炎がついに燃え上がった時――
インドネシア全土が知ることになる。
抵抗は、まだ終わっていないということを。
――大規模な作戦が、まもなく始まる。
――次回へ続く。
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