第六話: 山影に抱かれた湖
はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。
何時間もの移動の末、窓の外の景色は徐々に、しかし劇的に変わっていった。
高層ビルや賑やかな高速道路は影をひそめ、両側を深い緑の木々に挟まれた曲がりくねった道へと姿を変える。
少し開けた窓から流れ込んでくる空気は、明らかに違う——より清々しく、ひんやりとして、湿った土と葉の匂いを運んでくる。
今まで嗅いだことのない匂いだった。
そして、ある曲がり角で、僕はそれを見た。
広大な湖が静かに広がっている。
水面は鏡のように青空を映し、まるで巨大な鏡そのものだ。
その向こうには、暖かな季節にもかかわらず頂に雪を残した、あまりにも巨大な山がそびえ立っていた。
現実のものとは思えないほど、堂々と。
僕は無意識に顔を窓ガラスに押しつけ、口を半開きにしていた。
「あれが富士山よ」
フロントシートから、鈴蘭が少し振り返って柔らかく微笑む。
「この湖は河口湖。うちの家族のお気に入りの場所のひとつ」
「……すごく大きい」
僕が呟いた言葉は、今の気持ちを表現するには到底足りなかった。
隣で竜胆が小さく笑う。
「近くで見るともっとすごいよ。夜、天気がよければ、頂がオレンジ色に染まるんだ」
やがて車は、伝統的な木造建築の前に停まった。
曲線を描く屋根、手入れの行き届いた庭、小さな池と木の橋。
入口には着物姿の従業員がすでに並び、車が到着するなり一斉に頭を下げた。
「白銀様、ご家族様、おかえりなさいませ」
僕は慎重に車を降り、目で宿の細部を追った。
長年の手入れで艶を帯びた古い木材、石の灯籠が並ぶ小道、小さな池から聞こえる穏やかな水の音。
チェックインを済ませ、荷物を部屋に置いた後——柔らかな畳と、すでに丁寧に敷かれた布団のある、日本の伝統的な客室——アラリックは、湖を真正面に望む縁側に全員を集めた。
「よし」
腕を組んで、彼は気軽に微笑む。
「午後は自由に過ごしていい。父さんは少し休んで、細かい用事を済ませておく」
「かくれんぼする!」
突然、蛍が叫んだ。
普段よりずっと大きな声で。
全員が驚いて振り返り——当の本人も、自分の熱意に気づいて真っ赤になった。
「かくれんぼ?」
鈴蘭が小さく笑う。
「いいわね。影狼も来るでしょ?」
影狼は鼻を鳴らしながらも、拒否はしなかった。
「……勝手にしろ」
「それって『はい』ってことだよ」
竜胆が僕に囁き、悪戯っぽくにやりと笑う。
三人は宿の広い裏庭へと歩き出した。
木々や低い茂みが、隠れるのにちょうどいい。
僕もついていこうとした瞬間、竜胆が肩を掴んだ。
「お前は俺と一緒だ」
目が計画で輝いている。
「かくれんぼより、もっと面白いこと教えてやる」
「……何?」
僕はためらいがちに聞いた。
竜胆は大きくにやりとし、湖畔の小さな桟橋を指差した。
そこには何本かの釣り竿が、木の壁にきちんと立てかけられていた。
「釣りだ」
自信満々に言う。
「やったことないだろ?」
僕が首を横に振ると、竜胆は僕の手を掴み、半ば引きずりながら桟橋へと向かった。
勢いが良すぎるくらいだった。
着くなり彼は二本の竿を取り、一本を僕に渡す。
まるで何百回もやってきたかのような、慣れた動き——実際、そうなのかもしれない。
「こうやって持て」
正しい持ち方を見せる。
「で、投げたら慌てるな。向こうで引きがあったら、ゆっくり巻き上げるんだ」
僕は真似しようとしたが、動きはぎこちなく硬かった。
遠くへ飛ぶはずの針は、自分の足のすぐ前に「ポチャ」と落ちた。
竜胆が爆笑した。
嘲笑ではなく、純粋に面白がっている笑いだ。
「うわ、それ……新記録だ。初挑戦でここまで下手な奴、見たことない」
顔が熱くなったが、なぜか僕も一緒に笑ってしまった。
貶められたというより、ただ一緒に馬鹿らしい時間を共有しているような、温かい感じがした。
「もう一回」
彼はまだくすくす笑いながら、後ろに回って僕の腕を導く。
「今度はもっとゆっくり。腕全体じゃなくて、手首の動きに集中しろ」
今度は針がずっとうまく飛び、「ポチャ」という小さな音を立てて、静かな湖の真ん中に落ちた。
「ほらな!」
竜胆が誇らしげに手を叩く。
まるで僕が偉業を成し遂げたかのように。
僕たちは桟橋の端に並んで座り、足を水面にぶら下げた。
快適な沈黙の中、時折竜胆が昔の釣り経験——古い長靴を魚だと勘違いして引き上げた、といったバカな話——を軽く語る。
遠くから、楽しげな笑い声と駆け回る足音が聞こえる。
蛍が新しい隠れ場所を見つけて大喜びで叫び、影狼がなぜか追いかけられているような小さな抗議の声を上げ、鈴蘭が笑いながら仲裁している。
僕はその声の方を振り返り、それから再び静かな湖面、遠くに優雅に立つ大きな山、そして金色に変わり始めている夕方の空を見つめた。
「……すごくいいな」
僕はほとんど自分に向けて、小さく呟いた。
竜胆がこちらを向き、いつもの悪戯っぽい笑みより少し柔らかい微笑みを浮かべる。
「ああ」
彼は言った。
「まだ一日目だぞ」
それから間もなく、僕の手の中の竿の先が小さく震え、やがて強くなった。
「引きだ!」
竜胆が目を輝かせて叫ぶ。
「引け、ヒカル! ゆっくりだ、慌てるな!」
心臓が激しく跳ね、見知らぬ、しかし胸を高鳴らせる振動を竿の先に感じながら、僕の手が震えた——それは、なぜか、ただの魚一匹よりずっと大きな何かの始まりのように思えた。
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