↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第1章:平穏な日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/69

第六話: 山影に抱かれた湖

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。

何時間もの移動の末、窓の外の景色は徐々に、しかし劇的に変わっていった。


高層ビルや賑やかな高速道路は影をひそめ、両側を深い緑の木々に挟まれた曲がりくねった道へと姿を変える。


少し開けた窓から流れ込んでくる空気は、明らかに違う——より清々しく、ひんやりとして、湿った土と葉の匂いを運んでくる。


今まで嗅いだことのない匂いだった。


そして、ある曲がり角で、僕はそれを見た。


広大な湖が静かに広がっている。


水面は鏡のように青空を映し、まるで巨大な鏡そのものだ。


その向こうには、暖かな季節にもかかわらず頂に雪を残した、あまりにも巨大な山がそびえ立っていた。


現実のものとは思えないほど、堂々と。


僕は無意識に顔を窓ガラスに押しつけ、口を半開きにしていた。


「あれが富士山よ」


フロントシートから、鈴蘭が少し振り返って柔らかく微笑む。


「この湖は河口湖。うちの家族のお気に入りの場所のひとつ」


「……すごく大きい」


僕が呟いた言葉は、今の気持ちを表現するには到底足りなかった。


隣で竜胆が小さく笑う。


「近くで見るともっとすごいよ。夜、天気がよければ、頂がオレンジ色に染まるんだ」


やがて車は、伝統的な木造建築の前に停まった。


曲線を描く屋根、手入れの行き届いた庭、小さな池と木の橋。


入口には着物姿の従業員がすでに並び、車が到着するなり一斉に頭を下げた。


「白銀様、ご家族様、おかえりなさいませ」


僕は慎重に車を降り、目で宿の細部を追った。


長年の手入れで艶を帯びた古い木材、石の灯籠が並ぶ小道、小さな池から聞こえる穏やかな水の音。


チェックインを済ませ、荷物を部屋に置いた後——柔らかな畳と、すでに丁寧に敷かれた布団のある、日本の伝統的な客室——アラリックは、湖を真正面に望む縁側に全員を集めた。


「よし」


腕を組んで、彼は気軽に微笑む。


「午後は自由に過ごしていい。父さんは少し休んで、細かい用事を済ませておく」


「かくれんぼする!」


突然、蛍が叫んだ。


普段よりずっと大きな声で。


全員が驚いて振り返り——当の本人も、自分の熱意に気づいて真っ赤になった。


「かくれんぼ?」


鈴蘭が小さく笑う。


「いいわね。影狼も来るでしょ?」


影狼は鼻を鳴らしながらも、拒否はしなかった。


「……勝手にしろ」


「それって『はい』ってことだよ」


竜胆が僕に囁き、悪戯っぽくにやりと笑う。


三人は宿の広い裏庭へと歩き出した。


木々や低い茂みが、隠れるのにちょうどいい。


僕もついていこうとした瞬間、竜胆が肩を掴んだ。


「お前は俺と一緒だ」


目が計画で輝いている。


「かくれんぼより、もっと面白いこと教えてやる」


「……何?」


僕はためらいがちに聞いた。


竜胆は大きくにやりとし、湖畔の小さな桟橋を指差した。


そこには何本かの釣り竿が、木の壁にきちんと立てかけられていた。


「釣りだ」


自信満々に言う。


「やったことないだろ?」


僕が首を横に振ると、竜胆は僕の手を掴み、半ば引きずりながら桟橋へと向かった。


勢いが良すぎるくらいだった。


着くなり彼は二本の竿を取り、一本を僕に渡す。


まるで何百回もやってきたかのような、慣れた動き——実際、そうなのかもしれない。


「こうやって持て」


正しい持ち方を見せる。


「で、投げたら慌てるな。向こうで引きがあったら、ゆっくり巻き上げるんだ」


僕は真似しようとしたが、動きはぎこちなく硬かった。


遠くへ飛ぶはずの針は、自分の足のすぐ前に「ポチャ」と落ちた。


竜胆が爆笑した。


嘲笑ではなく、純粋に面白がっている笑いだ。


「うわ、それ……新記録だ。初挑戦でここまで下手な奴、見たことない」


顔が熱くなったが、なぜか僕も一緒に笑ってしまった。


貶められたというより、ただ一緒に馬鹿らしい時間を共有しているような、温かい感じがした。


「もう一回」


彼はまだくすくす笑いながら、後ろに回って僕の腕を導く。


「今度はもっとゆっくり。腕全体じゃなくて、手首の動きに集中しろ」


今度は針がずっとうまく飛び、「ポチャ」という小さな音を立てて、静かな湖の真ん中に落ちた。


「ほらな!」


竜胆が誇らしげに手を叩く。


まるで僕が偉業を成し遂げたかのように。


僕たちは桟橋の端に並んで座り、足を水面にぶら下げた。


快適な沈黙の中、時折竜胆が昔の釣り経験——古い長靴を魚だと勘違いして引き上げた、といったバカな話——を軽く語る。


遠くから、楽しげな笑い声と駆け回る足音が聞こえる。


蛍が新しい隠れ場所を見つけて大喜びで叫び、影狼がなぜか追いかけられているような小さな抗議の声を上げ、鈴蘭が笑いながら仲裁している。


僕はその声の方を振り返り、それから再び静かな湖面、遠くに優雅に立つ大きな山、そして金色に変わり始めている夕方の空を見つめた。


「……すごくいいな」


僕はほとんど自分に向けて、小さく呟いた。


竜胆がこちらを向き、いつもの悪戯っぽい笑みより少し柔らかい微笑みを浮かべる。


「ああ」


彼は言った。


「まだ一日目だぞ」


それから間もなく、僕の手の中の竿の先が小さく震え、やがて強くなった。


「引きだ!」


竜胆が目を輝かせて叫ぶ。


「引け、ヒカル! ゆっくりだ、慌てるな!」


心臓が激しく跳ね、見知らぬ、しかし胸を高鳴らせる振動を竿の先に感じながら、僕の手が震えた——それは、なぜか、ただの魚一匹よりずっと大きな何かの始まりのように思えた。

少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部の**【ブックマークに追加】や【評価(★★★★★)】**をいただけると嬉しいです!

皆様の応援が執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。