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『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第三部:PANDEMONIUM、アジア侵攻

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第59話: 撤退命令

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。

その頃――。


PANDEMONIUM軍は、インドネシアとベトナムでの作戦を終え、次の作戦地域へ向けて進軍を続けていた。


軍艦は隊列を組んで航行し、その後方では軍用車両と地上部隊が黙々と移動している。


しかし、その時だった。


PANDEMONIUM全軍の通信網に、突然緊急通信が入った。


「全ユニット、直ちに進軍を停止せよ!」


各部隊の指揮官たちは、一斉に動きを止めた。


「……もう一度言え!」


すると、通信機から再び声が響く。


「PANDEMONIUM全軍に通達する。全軍は直ちに撤退し、ホール・スラヴナ連邦へ帰還せよ!」


指揮室の空気が、一瞬にして変わった。


「何だと!? 撤退だと!?」


一人の指揮官が勢いよく立ち上がる。


「まだこの地域での作戦は終わっていないぞ! なぜ突然、全軍の撤退命令が出た!?」


数秒後、中央政府から再び通信が入った。


「これは要請ではない。中央政府からの正式な命令である」


「ホール・スラヴナ連邦国外に展開している全軍は、直ちに帰還せよ」


指揮官は通信画面を睨みつけた。


「……一体、何が起きている?」


しばらく沈黙が続いた。


そして、中央政府から重々しい声が返ってくる。


「ホール・スラヴナ連邦が、攻撃を受ける可能性がある」


室内が静まり返った。


「現在、国内の防衛システムは大部分が修復作業中だ。今、主要地域を失うわけにはいかない」


PANDEMONIUMの指揮官たちは、緊張した表情で通信画面を見つめる。


「誰が我々を攻撃する?」


しかし、政府から返ってきた答えは一つだけだった。


「現時点では、攻撃を仕掛けてくる勢力の正体は確認できていない」


「ただし――敵は確実に、我々の領域へ接近している」


その情報を聞いた瞬間、各指揮官の間に動揺が広がった。


ホール・スラヴナ連邦は、決して弱い国家ではない。


かつてロシアと中国に対して大規模な攻撃を仕掛け、その名を周辺諸国に知らしめた危険な軍事大国である。


だが今、その国は――。


自らが攻撃を受ける側に回ろうとしていた。


「全軍、直ちに撤退させろ!」


「最優先目標は、ホール・スラヴナ連邦本土の防衛だ!」


その命令は、瞬く間にPANDEMONIUM全軍へと伝達された。


一隻、また一隻と軍艦が進路を変更していく。


次の作戦地域へ向かっていた軍用車両も、次々と方向を変え始めた。


PANDEMONIUM軍は作戦地域を離れ、急ぎ自国へと引き返していく。


その頃――。


ホール・スラヴナ連邦の地下にある政府指令室では、複数の政府高官が巨大な作戦モニターを見つめていた。


画面に表示されたデジタル地図には、国境へと近づいてくる複数の赤い反応が映し出されている。


「……我々の防衛設備は、まだ修復が完了していない」


一人の高官が、険しい表情で地図を見つめる。


「このタイミングで攻撃を受ければ……我々も無傷では済まない」


別の高官が、低い声で答えた。


「我々は、かつてロシアと中国を恐れずに攻撃した」


「だが今回は……誰かが我々を攻撃しようとしている」


指令室に、再び沈黙が落ちた。


一体、何者が迫っているのか。


この時点では、誰一人としてその正体を知らなかった。


ただ一つだけ、確かなことがある。


ホール・スラヴナ連邦は、今まさに狙われている。


そしてPANDEMONIUMの全軍は、祖国へ呼び戻された。


次なる戦場は――彼らが予想もしなかった場所になるかもしれない。


――次回へ続く。

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