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『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第二部:崩壊の始まり

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第52話: 勝利の夜明け

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。

太陽が、水平線の向こうからゆっくりと姿を現し始めた。


黄金色の光が、昨夜から嵐に覆われていた日本海を少しずつ照らしていく。


朝霧の中から、次々と日本艦艇が姿を現した。


数隻どころではない。


そこに現れたのは、一つの巨大な艦隊だった。


スズランは、目を見開きながら戦術モニターを見つめていた。


「……本当に来たのね」


オペレーターは安堵したように笑った。


「日本艦隊本隊、合流しました!」


遠くでは、PANDEMONIUM側も状況の変化を察知していた。


二十八隻の艦隊が、圧倒的に数で上回る日本艦隊と向かい合う。


しばらくの間、両軍は朝霧の中で互いを睨み合っていた。


そして――。


「全日本艦、戦闘準備!」


通信回線を通して、命令が響き渡る。


「この戦いを終わらせるぞ!」


日本艦隊が一斉に動き始めた。


PANDEMONIUMは退かなかった。


むしろ、彼らの艦艇も前進を開始する。


「敵はまだ前進しています!」


スズランはモニターを見つめた。


「だったら……迎え撃つわ」


数秒後――。


日本海は、再び轟音に包まれた。


「BOOOOM!」


海の各所で閃光が走る。


日本艦隊は一斉に進み、これまで以上に整った隊形を形成していく。


PANDEMONIUMも必死に戦列を維持しようとする。


しかし、日本艦隊からの圧力は徐々に強まっていった。


「敵左翼の隊形が崩れ始めています!」


「再編成する隙を与えないで!」


スズランが次の命令を下す。


「そのまま前進!」


日本艦隊は、さらに距離を詰めていく。


薄れていく朝霧の向こうには、無数の艦影が広がっていた。


PANDEMONIUMは、次第に勢いを失っていく。


「アキラ将軍!」


オペレーターが叫ぶ。


「前衛部隊では、これ以上の戦線維持は困難です!」


アキラは何も言わず、モニターを見つめていた。


戦闘が始まって以来、初めてその表情から余裕が消える。


「……これが、日本艦隊本隊の力か」


一方、スズランは指揮室に立っていた。


数時間前とは、まるで別の場所のようだった。


そこに、もう混乱はない。


誰もが落ち着いて動いている。


そして、全員が自分の役割を理解していた。


「敵に距離を取らせないで!」


「了解!」


日本艦隊は、さらに圧力をかけ続ける。


PANDEMONIUMは、ついに進路を変更し始めた。


一隻。


そして、また一隻。


やがて、艦隊全体がゆっくりと後退を始める。


「敵艦隊、後退しています!」


オペレーターが叫んだ。


指揮室が一瞬、静まり返った。


スズランはモニターを見つめる。


「……本当に撤退するの?」


「はい!」


スズランは笑った。


「それなら……私たちの勝ちね」


しかし、追撃はまだ終わっていなかった。


日本艦隊は前進を続け、PANDEMONIUMが戦闘海域から完全に離脱するまでその動きを追った。


やがて、残存するPANDEMONIUM艦艇の姿が水平線の向こうへ消えていく。


海が、再び静けさを取り戻す。


朝霧も、ゆっくりと晴れていった。


朝日が、日本艦隊の艦艇を照らしている。


オペレーターが最後に戦術モニターを確認する。


「敵艦、戦闘海域に存在しません」


スズランは長い息を吐いた。


「……やっとね」


そして、窓の外へ目を向ける。


一晩中戦場となっていた日本海は、今や朝日に照らされていた。


「私たちの勝利?」


オペレーターは頷いた。


「完全勝利です」


スズランは微笑んだ。


「それなら、全艦隊に知らせて」


通信回線が、全艦へと接続される。


『全艦、聞いてください』


オペレーターの声が、各艦の通信システムから響く。


『PANDEMONIUM艦隊は戦闘海域から撤退しました』


一瞬、通信回線が静まり返った。


そして――。


『戦闘終了』


『我々の勝利です』


各日本艦艇から、歓声が上がった。


拳を突き上げる者。


安堵したように笑う者。


そして、ただ疲れ果てたように座り込む者。


終わることなどないと思えた長い夜の果てに――。


彼らは、ついに生き残った。


スズランは朝の空を見上げた。


「……本当に、勝ったんだ」


艦隊の通信システムから、勝利を祝う音楽が流れ始める。


そのメロディーは、静かになった海の上へと広がっていった。


しばらくの間、命令はなかった。


警報もない。


爆発音も聞こえない。


そこにあるのは、朝の光と穏やかな波の音だけだった。


スズランは、そっと目を閉じる。


そして――。


「私たちの勝ちよ」


日本海は、再び日本艦隊の手に戻った。


そして、長い戦いの末――。


初めてPANDEMONIUMが、日本軍によって撤退へと追い込まれた。


日本側の勝利:100%。


しかし、遥か水平線の彼方では――。


一隻のPANDEMONIUM艦が、静かに戦場から離れていた。


その指揮室で、アキラは険しい表情のままモニターを見つめている。


「……まだ終わっていない」


彼は拳を強く握りしめた。


「次の戦いでは……絶対に負けない」


――次回へ続く。

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