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『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第二部:崩壊の始まり

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エピソード54: —— 平和な一日

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。

その朝、海の空気はまったく違っていた。


爆発音はない。


戦闘警報もない。


敵艦の報告もない。


パンデモニウムとの長い戦いを終えた日本艦隊は、ようやく休息の時間を得た。


太陽が穏やかな海の上で明るく輝いている。


何隻かの日本艦が軽点検と修理を行い、乗員たちは思い思いに暇を楽しんでいた。


「やっと……のんびりできるな」


一人の乗員が船縁に寄りかかり、安堵のため息をついた。


「昨日は息つく暇もなかった気がする」


隣に立っていた仲間がすぐに笑った。


「生きてるだろ? なら問題なしだ」


「生きてるからこそ、今日を満喫したいんだよ!」


二人は声を揃えて笑った。


船の別の区画では、何人かの乗員が集まり、食事と飲み物を楽しんでいる。


普段は命令と報告ばかりの空気が、今は冗談で満ちていた。


普段は真面目な乗員まで、つい笑ってしまう。


「おい、最後のパン誰が取った!?」


「俺じゃない!」


「まだ持ってるだろ!」


「……あ」


「ははははは!」


笑い声が艦全体に広がった。


数日ぶりに、日本艦隊の空気は本当の意味で穏やかだった。


——


司令室では、スズランが椅子に座り、ほとんど緑色の表示で埋め尽くされた画面を見つめていた。


脅威なし。


敵との接触なし。


ただ静かな海だけがある。


スズランは長く息を吐いた。


「静かな一日……やっとだな」


少し離れたところに立っていた部下が微笑んだ。


「司令も少し休んだ方がいいんじゃないですか」


「私? 大丈夫だ」


「昨日ほとんど眠っていませんでしたよ」


スズランは黙った。


「……その話はしなくていい」


「承知しました、司令」


部下は笑いを堪えている。


スズランは少し不機嫌そうに彼を見た。


「何を笑ってる」


「いえ、何でもありません」


「明らかに何かある」


「何もありません」


「……」


「……」


数秒後、二人は小さく笑い合った。


——


一方、艦の別の場所では、乗員たちが時間つぶしにカード遊びを始めていた。


「ほら! 今度こそ俺が勝つ!」


「三ラウンド前から同じこと言ってるぞ」


「黙れ! これは戦略だ!」


「戦略? そもそもルールも分かってないだろ」


「大事なのは自信だ!」


「ははははは!」


その日は本当に休日のようだった。


誰も戦争のことを考えたくなかった。


少なくとも、今日だけは。


彼らはようやく手に入れた平和を、ただ味わいたかった。


——


夕方近く、スズランは司令室を出て甲板に立った。


海風がゆっくりと吹いている。


髪がその風に揺れた。


彼女は水平線を見つめた。


「……きれいだ」


たまたま近くにいた乗員も同じ方向を見た。


「あれだけのことがあった後だと、こんな景色が余計に貴重に感じますね」


スズランは小さく微笑んだ。


「そうだな」


しばらく、二人は黙って立っていた。


銃声はない。


敵艦もない。


ただ波が船体を打つ音だけが聞こえる。


しかし——


「司令!」


オペレーターが突然甲板へ駆け寄ってきた。


スズランが振り返る。


「どうした?」


オペレーターは一通の報告を抱えていた。


「中央から通信を受信しました」


スズランの表情がわずかに変わる。


「中央から?」


「はい。インドネシアの状況に関するものです」


スズランは報告書を受け取った。


ゆっくりと目を通す。


微笑みが徐々に消えていく。


「……インドネシア、か」


海風が再び吹いた。


平和な一日は、まだ完全には終わっていなかった。


だが、新たな何かがすでに彼らを待っている。


——次のエピソードへ続く。

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