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『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第二部:崩壊の始まり

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第50話: 日本海を覆う嵐

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。

日本海。


夕方から黒く染まり始めていた空は、ついに一面の暗雲へと変わっていた。


雨はますます激しさを増している。


高波が、新たな配置へとゆっくり移動する日本艦隊の艦艇を激しく打ちつけていた。


遠くで雷鳴が轟く。


「ゴロロロロ……!」


重低音のような轟音が、海の上に響き渡った。


日本艦隊は現在、再編成を行っていた。


長時間に及ぶ戦闘によって戦力と物資を消耗したため、なお航行可能な艦艇には一時後退し、隊形を再構築するよう命令が下されている。


その中には、スズランが指揮を執る空母も含まれていた。


空母の艦橋では、複数の戦術モニターに艦隊の状況が表示されている。


「各艦、現在位置を確認!」


「了解!」


「補給班、燃料と弾薬の確認を急いで!」


乗組員たちは慌ただしく動き回っていた。


燃料、弾薬、食料、その他の物資が次々と再確認されていく。


しかし、暴風雨のせいで作業はいつも以上に困難を極めていた。


大波が艦側面を激しく叩く。


「ドォン!」


艦全体が大きく揺れた。


スズランは指揮卓に手をついて、なんとか体勢を保つ。


「……この嵐、ますます酷くなってるわね」


気象モニターを確認していたオペレーターが報告する。


「風速は上昇し続けています。視界も急激に悪化しています」


スズランは小さく頷いた。


「だったら、状況がさらに悪化する前に艦隊の再編を終わらせるわ」


その頃――。


暗闇に包まれた、遥か沖合。


一隻のPANDEMONIUM艦が、荒波の中をゆっくりと進んでいた。


艦体のほとんどは、夜の闇に紛れている。


その艦の指揮室では、キール・アキラという名の将校が戦術モニターの前に立っていた。


「我々の地上部隊は、全員無事に撤退できたか?」


オペレーターがすぐに答える。


「はい、アキラ将軍。残存部隊はすべて日本領域から脱出しました」


アキラは安堵の息を吐いた。


「よし」


そして、日本艦隊の位置を表示するモニターへ視線を移す。


日本艦隊の大部分は、現在も再編成を行っている最中だった。


「こちらの艦隊の状況は?」


「この海域周辺には、まだ数隻のフリゲート艦が展開しています」


アキラは数秒間、黙り込んだ。


そして――。


その口元に、薄い笑みが浮かんだ。


「それなら……今、攻撃する」


オペレーターが驚いたように目を見開く。


「今ですか、将軍? この嵐の中で?」


「だからこそだ」


アキラはモニターを指差した。


「奴らは視界を完全に奪われている。それに、艦隊の再編成で手一杯だ」


そして、ゆっくりと手を上げる。


「遠距離から攻撃しろ。こちらの位置を悟らせるな」


「了解!」


アキラが声を張り上げる。


「この海域に残っている全フリゲート艦を呼び戻せ!」


「了解しました!」


それから数分後――。


激しい雨のカーテンの向こうから、複数のPANDEMONIUMフリゲート艦が姿を現した。


艦艇は必要最低限の灯火だけを点け、静かに航行している。


巨大な波が、そのシルエットを巧妙に隠していた。


PANDEMONIUM側のオペレーターが射撃諸元を確認する。


「目標、射程圏内です」


アキラはモニターを見つめた。


「撃て」


「Fire!」


次の瞬間――。


暗闇の中から、複数の砲弾が一斉に放たれた。


発射音は、暴風雨の轟音にほとんどかき消される。


しかし数秒後――。


「――BOOOM!」


巨大な爆発が海面を揺るがした。


再編成中だった日本艦艇が激しく揺さぶられる。


海水が高々と吹き上がった。


各艦で警報が一斉に鳴り響く。


「奇襲攻撃です!」


「どこからだ!?」


「不明です! 視界が悪すぎます!」


スズランは即座に立ち上がった。


「全艦、警戒レベルを上げて! 攻撃元を捜索!」


「了解!」


二度目の爆発が響き渡る。


「BOOOM!」


衝撃波が海面を駆け抜けた。


雨はさらに激しくなる。


その直後、稲妻が日本艦隊のすぐ背後を走った。


「KRAAAK!」


一瞬だけ、海全体が真っ白な光に包まれる。


そして、再び闇が戻ってきた。


「奴らを見つけて!」


「捜索中です! ですが、悪天候の影響でレーダーが正常に機能していません!」


スズランは歯を食いしばった。


「くっ……!」


その瞬間――。


「BOOOOM!」


別の日本艦艇が爆発に見舞われ、大きく揺れた。


乗組員たちは転倒しないよう、机や壁に必死につかまる。


「空母、巨大な波を受けます!」


スズランはすぐに外へ目を向けた。


目の前には、巨大な波が壁のようにそびえ立っている。


「全員、何かにつかまって!」


「――BRAAAASH!」


巨大な波が空母を直撃した。


艦体全体が激しく揺さぶられる。


スズランも一瞬、バランスを崩しかけた。


「うっ……!」


大量の海水が甲板を激しく流れていく。


それでも、空母は航行を続けていた。


「艦の状態は!?」


「外部に軽微な損傷が複数あります! 主要システムは正常に稼働中です!」


スズランは安堵の息を吐く。


「よし」


そして、再び戦術モニターへ目を向ける。


そこには、いくつもの赤い反応が表示され始めていた。


「反撃するわ」


オペレーターが一瞬、言葉を失う。


「ですが、敵の位置はまだ――」


「追う必要はないわ」


スズランは目の前の嵐を見つめる。


「奴らは、この嵐に紛れて暗闇から攻撃してくるつもりなんでしょう?」


そして、口元に薄い笑みを浮かべた。


「だったら……こっちも、この嵐を味方につけるだけよ」


「了解!」


日本艦隊が一斉に反撃を開始する。


激しい砲撃音が、雨の中で次々と響き渡った。


「BOOM!」


「BOOOM!」


「――DOOOM!」


幾筋もの閃光が、暗い海を照らしていく。


日本海は、嵐の真っただ中で再び戦場と化した。


稲妻が走る。


雨は一瞬たりとも止まらない。


高波が軍艦を激しく打ちつける。


そして、至る所で轟音が鳴り響いていた。


その混乱の中――。


スズランの空母を、再び巨大な波が襲う。


「――BRAAAASH!」


スズランは必死に体勢を保える。


「全員、自分の持ち場を離れないで! 慌てないで!」


しかし、激しい雨の向こう側では――。


PANDEMONIUMの艦影が、なおも静かに動き続けていた。


そして、本来ならば終わりを迎えるはずだった海戦は――。


その最終局面へと、今まさに突入しようとしていた。


――次回へ続く。

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