第47話: P.1000最後の爆発
はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。
荒れ果てた戦場の中央で、二体の鋼鉄の怪物はなおも互いを照準に捉えていた。
P.1000とTG-5の距離は、わずか数百メートル。
両戦車のエンジンが、戦場全体に響き渡るほど激しく唸っている。
GRRRRRRRR――!!
どちらも退かない。
どちらも逃げようとはしない。
両方の乗員は理解していた。
次の一撃が、この戦いの勝敗を決めるかもしれない。
「TG-5、ターゲットロック!」
「待つな! 撃て!」
KRAAAAAAM!!
TG-5が先に砲撃を放った。
巨大な砲弾がP.1000へ向かって飛翔する。
しかし、その瞬間――。
「P.1000――撃て!!」
BOOOOOOOOOOM!!
P.1000もまた、巨大な主砲から砲弾を放った。
二発の砲弾が戦場の中央で交差する。
DUUUMMMMM!!
巨大な爆発が発生し、周囲一帯を激しく揺さぶった。
煙と土煙が一瞬にして視界を覆い尽くす。
数秒間、二両の戦車の姿は完全に見えなくなった。
そして――。
「目標、まだ動いています!」
煙の向こうから、P.1000が姿を現した。
だが、その巨大な車体にはすでに大きな損傷が刻まれていた。
複数のシステムが次々と異常を起こしている。
操縦区画では警告灯が赤く点滅していた。
「主要システムに異常発生!」
「あとどれくらい動ける!?」
「分かりません! ですが、まだ撃てます!」
P.1000の指揮官は、強く拳を握り締めた。
「ならば……最後の一撃だ」
一方、TG-5もまた損傷していた。
それでもロシア側の指揮官は、冷静に操艦を続けている。
「残存エネルギーをすべて兵装システムへ回せ!」
「司令官、それではホログラム防護システムの出力が大幅に低下します!」
TG-5の指揮官は、一瞬だけ沈黙した。
そして――。
「構わない。我々に必要なのは、たった一発だ」
TG-5が主砲をP.1000へ向ける。
P.1000もまた、巨大な主砲をTG-5へ向けた。
二体の鋼鉄の怪物が、再び向かい合う。
「撃て――!!」
KRAAAAAAAAAAAM!!
二門の巨大な主砲が、ほぼ同時に火を噴いた。
WHOOSH!!
TG-5から放たれた砲弾が、P.1000の正面へ命中する。
BOOOOOOOOOOM!!
その瞬間――。
P.1000の巨大な車体が、初めて完全に停止した。
エンジンが激しく唸りを上げる。
GRRRR――!!
そして――。
KRRRKKK!!
内部から異音が響いた。
主要システムの一つが停止する。
P.1000の出力が、急速に低下していく。
「そんな……」
PANDEMONIUM側の指揮官が、信じられないものを見るようにモニターを見つめた。
「P.1000が……止まっただと!?」
その数秒後――。
P.1000の巨大な車体が、大きく震え始めた。
「異常なエネルギー反応を確認!」
「何だと!?」
メインモニターが、一斉に赤く染まる。
「内部システムで連鎖的な障害が発生しています!」
PANDEMONIUMの指揮官が、勢いよく立ち上がった。
「全ユニット、P.1000から離れろ!!」
だが――遅かった。
BOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!
P.1000の内部から、凄まじい爆発が発生した。
巨大な衝撃波が戦場全体へと広がっていく。
WHOAAAAA――!!
土煙と煙が、周囲へ一気に吹き飛ばされる。
その凄まじい衝撃波が、すぐ近くにいたTG-5を直撃した。
「ホログラム防護! 起動!!」
VVVVVVMMMM――!!
TG-5の周囲に、半透明の防護フィールドが展開される。
しかし――。
P.1000の爆発は、あまりにも巨大だった。
KRRRZZZT!!
ホログラム防護が激しく震える。
「防護出力、三十パーセントまで低下!」
「早すぎる!?」
BOOOOM!!
二度目の衝撃波がTG-5を襲った。
車体全体が激しく揺さぶられる。
「冷却システム損傷!」
「エンジン出力が限界です!」
「動力炉の出力をこれ以上上げるな!」
警告音が鳴り続ける。
BEEP! BEEP! BEEP!
「このままではTG-5まで持ちません!」
ロシア側の指揮官は歯を食いしばった。
「耐えろ……あと少しだ!」
やがて――。
P.1000の爆発が、少しずつ収まっていく。
戦場は濃い煙に包まれていた。
そこには、もうP.1000のエンジン音は存在しなかった。
鋼鉄の巨獣は、完全に動きを止めていた。
TG-5の指揮官は、ノイズだらけになったモニターを見つめる。
「……終わったのか?」
オペレーターがセンサーを確認する。
数秒後――。
「P.1000からの反応、ありません」
TG-5の指揮官は、ゆっくりと息を吐いた。
「……我々の勝ちだ」
しかし、彼らが勝利を喜ぶ暇はなかった。
遠方から無線通信が飛び込んでくる。
「ロシア軍全ユニットへ! PANDEMONIUMが後退を開始しました!」
「何だと?」
オペレーターが、すぐに戦術マップを拡大する。
赤い表示が次々と、最後の防衛線から離れていく。
P.1000を失ったPANDEMONIUM部隊が、戦場から離脱し始めていた。
一部は、いまだに占領している地域へと後退していく。
また別の部隊は、日本から脱出するためのルートを探し始めていた。
その一方で、日本軍とロシア軍は前進を開始する。
「敵が後退しています!」
「再集結させるな!」
「全ユニット、慎重に前進! 各地域を確保しろ!」
長く続いた戦いの中で――。
初めて、日本最後の防衛線が崩壊の危機から解放された。
最後の政府中枢も、まだ健在だった。
ほとんど動けなくなっていたTG-5が、再びエンジンを始動させる。
GRRRR……
ロシア軍の指揮官は、モニター越しに戦場を見つめた。
かつてP.1000が立っていた場所には、ゆっくりと消えていく煙だけが残されていた。
「この戦いは……ようやく終わったか」
しかし――。
戦争そのものが終わったわけではない。
まだ降伏していないPANDEMONIUMの部隊が残っている。
そして彼らは、日本各地へ散らばるように逃走を始めていた。
日本軍とロシア軍には、新たな任務が待っている。
逃げ残ったPANDEMONIUM部隊を追撃し、残存勢力を掃討すること。
――戦いは、まだ本当の意味では終わっていない。
――次回へ続く。
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