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『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第二部:崩壊の始まり

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第44話: 嵐を駆ける翼――空の狩人

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。


本日の更新は少し短めとなってしまいますが、申し訳ありません。これから少し忙しくなるため、しばらく更新できる量が少なくなるかもしれません。


それでも、できる限り更新を続けていきたいと思いますので、今回も最後まで楽しんでいただければ嬉しいです。


それでは、第44話をどうぞ!

横須賀での激戦から三日後――。


ロシア軍はついに、横須賀市の大部分を制圧することに成功した。


その報告は、日本政府にも届けられた。


当初、日本政府の関係者たちは激怒していた。


ロシア軍が日本側との事前の調整も、協議も、許可もないまま独断で攻撃を開始したからだ。


しかし――。


横須賀がパンデモニウムから奪還されたという報告を受けた瞬間、政府内の空気は少しずつ変わっていった。


「……ともかく、ロシア軍は横須賀を奪還した」


「そうだ。今回ばかりは、その結果を否定することはできない」


日本政府は、ロシア軍の行動に問題があったことを認識しながらも、その攻撃が防衛線に大きな利益をもたらしたことを認めざるを得なかった。


しかし――。


横須賀の奪還は、決して戦争の終わりを意味してはいない。


日本各地では、パンデモニウムの圧倒的な攻勢によって、いくつもの都市が次々と陥落し始めていた。


それでも、日本軍とロシア軍は各地の防衛線を死守し、押し寄せる敵の攻撃を食い止め続けていた。


――そして、場面は空へと移る。


――日本軍・航空作戦司令室――


大量のレーダー画面が並ぶ航空作戦司令室。


その先では、数百機にも及ぶ日本軍の戦闘機が戦闘空域へ向かっていた。


その中心に立っていたのは、ホタルだった。


彼女の隣にはスズラン、そして海軍・航空部隊の各指揮官たちが並んでいる。


そのうちの一人が、すぐにホタルへ注意を促した。


「ホタル、前に出すぎるな」


「君の仕事はここで戦術を指揮することだ。自ら戦場へ出る必要はない」


ホタルは小さく笑った。


「分かってるよ」


そして、レーダー画面へ視線を戻す。


そこには無数の赤い反応が広がっていた。


「でも……ここでただ座ってるだけのほうが、危険な気がするんだよね」


――航空戦闘開始――


ホタルは通信機を手に取り、次々と指示を飛ばしていく。


「Fox One、左翼の敵編隊を攻撃!」


「Fox Two、右側面から回り込んで!」


「第三部隊、敵戦闘機を追うな! 敵駆逐艦を優先して攻撃!」


「爆撃隊、高度を取って進入! 敵水上艦隊を狙え!」


「全部隊、単独で戦うな! 敵の行動範囲を奪っていけ!」


次の瞬間――。


空は一気に戦場へと変わった。


「――WHOOSH!」


無数のミサイルが空を切り裂く。


「――BRRRTTTTT!」


戦闘機の機関砲が激しい音を響かせる。


パンデモニウムの戦闘機が次々と編隊から離脱していく。


対する日本軍機は、複数方向から敵を包囲するように攻撃を続けていた。


さらに――。


パンデモニウムの海上艦隊までもが追い詰められ始める。


日本軍航空隊による激しい攻撃を前に、パンデモニウム艦隊は次々と進路を変更し、ついには後退を開始した。


空からの攻撃が、あまりにも厄介だったのだ。


――しかし、ホタルは一歩踏み込みすぎた。


激しい戦闘の最中。


ホタルの戦闘機は、いつの間にか敵陣深くまで入り込んでいた。


そして――。


複数のパンデモニウム戦闘機が、彼女の機体を追跡し始める。


「くそっ……追ってきた!?」


「――WHOOSH!」


一本のミサイルが、ホタルの機体のすぐ横を通過した。


「っ!」


ホタルは操縦桿を大きく倒した。


機体が鋭く旋回する。


だが――。


今度は反対側から、別のミサイルが迫ってきた。


「――WHOOSH!」


ホタルは再び急旋回して、それを紙一重で回避する。


呼吸が次第に荒くなっていく。


心臓が激しく鼓動していた。


その瞬間――。


司令室で聞いた言葉が、ホタルの脳裏によみがえった。


――「無茶をするな」


――「状況が本当に切迫していない限り、将軍が前線へ出るべきではない」


ホタルは歯を食いしばった。


「……分かってる」


「でも――今はもう、十分に切迫してるでしょ?」

――嵐の中へ――


ホタルの前方には、巨大な黒い雲が広がっていた。


その先にあるのは――。


激しい雷雨を伴った巨大な嵐。


しかし、背後からは依然としてパンデモニウムの戦闘機が迫ってくる。


「ホタル! その嵐に入るな!」


スズランの声が通信機から響いた。


ホタルは目の前の黒い雲を見つめる。


そして――。


小さく笑った。


「ごめん、スズラン」


「でも……一つ思いついた」


次の瞬間――。


ホタルの戦闘機は急降下し、そのまま巨大な嵐の中へ突入していった。


「――WHOOSH――!」


数機のパンデモニウム戦闘機も、彼女を追って嵐の中へ入っていく。


そして――。


「――KRAAAAAK!!!」


巨大な雷鳴が夜空を引き裂いた。


一機の敵戦闘機が雷雨の影響で姿勢を崩し、編隊から大きく離れていく。


「――BLAM!」


さらに別の敵機にも落雷が発生し、その機体は制御を失って戦闘空域から遠ざかっていった。


次第に、パンデモニウム側はホタルの機体を見失い始める。


「目標をロスト!」


「探せ! まだ近くにいるはずだ!」


「レーダーに反応なし!」


やがて、パンデモニウムの戦闘機部隊は追撃を断念した。


そして――。


嵐の中から後退していった。


――パンデモニウム艦隊・指揮艦――


パンデモニウムの指揮艦。


その艦橋で、バルドル・クライシュは戦術モニターを見つめていた。


その表情には、明らかな疲労が浮かんでいる。


レーダー上に表示された自軍機の反応が、一つ、また一つと消えていく。


「……こちらの航空戦力が、次々と減っている」


「それなのに……あの日本軍の将軍一人すら捕捉できないだと?」


バルドルは深いため息をついた。


しかし――。


その直後。


一人のオペレーターが、突然新たな報告を受け取った。


「クライシュ将軍! 前線から報告です!」


バルドルが振り返る。


「何だ?」


オペレーターは、数秒間ためらった。


そして――。


「日本が……」


その瞬間。


バルドルの表情が変わった。


「…………」


次の瞬間――。


「……ハハハハハハハハハ!」


バルドルは突然、大声で笑い始めた。


――CUT。


――次回へ続く。

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