第40話: 北からの援軍
はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。
日本各地では、いまだに戦闘が続いていた。
ロシア軍の援軍が到着すると、日本政府はすぐに、苦戦を強いられている各防衛線への支援を要請した。
その中でも特に重要だったのが、かつてパンデモニウムの装甲車両や戦車部隊が大量に出現した海岸だった。
ロシア軍は、その地域へ部隊を展開する。
数十両の戦車や装甲車両が前線へ向かい、その後方を歩兵部隊が続いていく。
しかし――。
パンデモニウムは、すでにロシア軍の動きを把握していた。
ロシア軍が通過すると予想された進路には、パンデモニウムの歩兵部隊によって大量の地雷が仕掛けられていた。
先頭を進んでいたロシア軍の車両が、突然爆発に巻き込まれる。
ドォンッ!
隊列が一気に乱れた。
「地雷攻撃だ! 全隊、停止!」
だが、ロシア軍が態勢を立て直すよりも早く、森の中から銃声が響き渡った。
パンデモニウムの歩兵部隊が姿を現し、複数の方向から一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「敵は右側からも来ている!」
「包囲させるな!」
混乱の中でも、一部のロシア軍部隊は地雷原を抜け、そのまま前進を続けていた。
一方、足止めされた部隊は、パンデモニウムの歩兵部隊と正面から戦うことになる。
激しい地上戦が始まった。
パンデモニウムは陣地を維持しようと必死に抵抗する。
しかし、ロシア軍の圧力は徐々に強まっていった。
しばらくして――。
パンデモニウムの部隊が、ついに後退を始める。
「敵が後退しています!」
「深追いするな! まずは防衛線を維持しろ!」
パンデモニウムの歩兵部隊は森の奥へと撤退していった。
ロシア軍は再び前進を開始する。
彼らは一つの戦場に留まらなかった。
各地へ部隊を送り込み、パンデモニウムの攻撃によって苦戦している日本軍を次々と支援していく。
そのおかげで、日本軍のいくつかの防衛線では、態勢を立て直す時間が生まれた。
しかし――。
日本側の指揮官たちの中には、ロシア軍の戦い方を快く思わない者もいた。
ある指揮所では、数人の日本軍将校がロシア軍の進撃について話し合っていた。
「ロシア軍の進撃が速すぎる。」
「パンデモニウムが放棄したように見える地域にも、敵が潜んでいる可能性がある。」
「もし奇襲を受ければ、こちらが対応する前に被害が広がるぞ。」
その場にいたロシア軍の将校が、冷静に答える。
「敵の奇襲を恐れて立ち止まっていれば、その間に敵は次の攻撃を準備する。」
「我々は、可能な限り速く占領地域を奪い返す。それが最も早い方法だ。」
日本側の将校たちは黙り込んだ。
完全に納得したわけではない。
それでも、ロシア軍の考えも理解できなくはなかった。
一方、ロシア軍はパンデモニウムが占領している都市の一つを、一時的な軍事拠点として利用しようとしていた。
しかし、その都市へ近づいた部隊が確認したのは、予想外の光景だった。
その都市は――まだパンデモニウムの支配下にあった。
「ここを臨時司令部にするのは不可能だ。」
「ならば、敵の位置を探せ。」
ロシア軍は、パンデモニウムの部隊が潜んでいると予測された地点へ攻撃を行った。
いくつかの攻撃は、実際に敵の陣地を捉えた。
しかし――。
大部分の地点には、何もなかった。
兵士もいない。
車両もない。
そこに広がっていたのは、ただの森林だけだった。
「ここも空だ。」
「もう一度確認しろ。」
「確認済みです。敵部隊の痕跡はありません。」
ロシア軍の指揮官は、画面に映る森林を見つめた。
何かがおかしい。
「……奴らは、何かを待っている。」
---
カゲロウ視点
別の地域では、カゲロウがその都市の状況について報告を受けていた。
彼女はデジタルマップの前に立ち、パンデモニウムの部隊の動きを確認している。
「将軍。」
「何だ?」
「私も、あの都市へ行っていいですか?」
日本軍の将軍は、しばらくカゲロウを見つめた。
「向こうの防衛線は十分に強化されている。」
「それに、パンデモニウムの部隊も後退している。」
「……分かった。特殊部隊を連れて行け。」
カゲロウは頷いた。
「了解しました。」
しばらくして、カゲロウは特殊部隊を率いて、その都市へ向かった。
到着しても、彼女たちはすぐには攻撃を仕掛けなかった。
まずはパンデモニウムの動きを監視できる場所を探す。
そしてしばらくして――。
建物内部を監視できる換気ダクトを発見した。
カゲロウと数名の隊員は、その中へ入り込み、身を潜める。
そこからは、パンデモニウム兵たちの会話が聞こえてきた。
最初は、特に変わった内容ではなかった。
しかし――。
ある言葉を聞いた瞬間、カゲロウの表情が変わった。
「ICBMの発射は予定通りに行う。」
「……何?」
カゲロウが小さく呟く。
隣にいた隊員も、驚いた表情を浮かべた。
「隊長……今、ICBMって言いましたよね?」
カゲロウは答えなかった。
ただ、再びパンデモニウムの兵士たちへ視線を戻す。
そのうちの一人が、デジタルマップを確認していた。
画面には、複数の目標地点が表示されている。
「目標地点はすでに決定している。」
「発射準備も、ほぼ完了した。」
カゲロウは拳を握った。
「……だから、この都市に残っていたのね。」
隊員たちも、ようやく理解した。
パンデモニウムがこの都市で戦い続けていた理由は、都市そのものを守るためではない。
何か、もっと大きな計画を進めているのだ。
しかし――。
カゲロウがさらに情報を得ようとした、その時だった。
日本軍の司令部で、突然レーダー警報が鳴り響いた。
「司令官!」
「何だ!」
「東北東の方向から、巨大な反応を確認しました!」
「航空機か?」
「違います。」
「艦艇か?」
「それも違います。」
レーダー担当の兵士は、困惑した表情で画面を見つめていた。
「……大きすぎます。」
日本軍の指揮官が立ち上がる。
「どれくらいだ?」
担当兵士は数秒間、画面を確認した。
「まだ正確な大きさは算出できません。」
「ですが、初期推定では――」
兵士は息を呑んだ。
「……巨大な建造物に近い大きさです。」
司令室が静まり返った。
同じ頃、ロシア軍の司令部にも同様の報告が入っていた。
日本軍とロシア軍――。
両軍のレーダーが、同じ異常を捉えている。
東北東から接近してくる、巨大な何か。
その大きさは――。
通常の軍用車両とは、到底比較できない。
一方、カゲロウはまだ換気ダクトの中に潜み、パンデモニウムの画面を見つめていた。
彼女は、ゆっくりと一つの可能性に気づく。
ICBMの発射準備。
それは、パンデモニウムの計画のほんの一部にすぎないのではないか。
「……一体、何を準備しているの?」
――つづく。
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