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『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第二部:崩壊の始まり

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第36話 北方からの同盟者

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。


Boden-Noyan(ボーデン=ノヤン)バルドル・クライシュは、指揮官席に深々と身体を預けていた。


戦況モニターには、次々と後退していく日本艦隊の姿が映し出されている。


その光景を眺めながら、バルドルは満足げな笑みを浮かべていた。


しかし――その余裕は、長くは続かなかった。


「Boden-Noyan閣下!」


通信士の一人が、青ざめた顔で駆け寄ってくる。


「緊急報告です! 敵の背後から攻撃を仕掛けていた部隊を追撃していた我が軍の二十隻が、レーダーから消失しました!」


「内訳はフリゲート、駆逐艦、コルベット、そして空母一隻です! 現在、通信も完全に途絶しています!」


「……何だと?」


バルドルは指揮官席から勢いよく立ち上がった。


「消えただと? どういう意味だ!?」


「最後の通信が途絶える直前、未確認の敵艦五隻を探知していました!」


「それ以降、艦艇の位置情報も通信も一切ありません!」


「クソッ!」


バルドルの拳が、指揮卓を激しく叩きつけた。


「すぐにRagnar Voss(ラグナル・ヴォス)大将へ繋げ!」


通信回線がただちに接続され、ホログラフィック・スクリーンに一人の男の姿が映し出された。


Pandemonium(パンデモニウム)陸軍の総司令官、Ragnar Voss(ラグナル・ヴォス)。


彼は前線へ向かう途中だったらしく、移動中の車両から通信に応じていた。


「どうした、Boden-Noyan バルドル・クライシュ?」


ヴォスは、まるで緊張感のない口調で尋ねる。


「今すぐ、持てる戦力をすべて動かせ」


バルドルは、有無を言わせぬ口調で命じた。


その声には、隠しきれない切迫感が滲んでいる。


「分かったよ」


ヴォスは軽く答えた。


「しかし、聞いたところじゃ、お前の戦況はかなり有利なんだろ? なあ、バルドル?」


「……うるさい」


バルドルは吐き捨てるように言うと、それ以上何も言わず通信を切った。


それから間もなく、次々と新たな戦況報告が届き始めた。


敵による陸上攻撃は、現在では同時に四つの地域へと広がっている。


そのうち二つの地域では、すでに大規模な攻撃が開始されていた。


新たに開かれた二つの戦線では、Pandemonium(パンデモニウム)の戦車部隊が途切れることなく投入されている。


ただでさえ限界に近づいていた日本軍の防衛線は、複数方向から同時に圧力を受け、さらに後退を余儀なくされていた。


***


その頃、日本政府の会議室では――。


一人の高級軍人が、緊張した面持ちで総理大臣へ報告していた。


「敵軍の戦力は、あまりにも強大です、総理」


「我々だけでは、この戦況を覆すのは困難です」


「一刻も早く、外国勢力からの軍事支援を受ける必要があります」


会議室は、たちまち騒然となった。


閣僚たちは次々と意見を出し合い、迅速かつ大規模な支援を期待できる国がないか、必死に議論を続ける。


「ロシアはどうだ?」


一人の閣僚が提案した。


「ロシア自身も、同じ敵勢力から攻撃を受けている」


別の閣僚が即座に反論する。


「それに、我が国とロシアの外交関係も、決して良好とは言えない」


別の案が出される。


しかし、それにもすぐ反論が飛ぶ。


どの選択肢にも、それぞれ無視できない問題があった。


議論は次第に行き詰まり、会議室には重苦しい沈黙が漂い始める。


――その時だった。


会議室の中央に、突然ホログラム通信が展開された。


光の粒子が集まり、一人の男の姿を形作っていく。


厳格な大統領礼装に身を包んだ、威厳ある男だった。


その場にいた全員が、一瞬で言葉を失う。


「大統領閣下……!」


日本側の政府高官の一人が、驚きを隠せないまま頭を下げた。


「我々日本政府は、貴国へ軍事支援を要請したいと考えております」


ホログラムに映る男――ロシア大統領Dmitri Sokolov(ドミトリー・ソコロフ)は、僅かに口元を緩めた。


鋭い眼差しには、冷静な計算が宿っている。


「……それは、まさに私がやろうとしていたことではないかね?」


その言葉に、会議室がざわめく。


「もちろん、理由がないわけではない」


ソコロフ大統領は、淡々と続けた。


「もし日本が陥落すれば、次に奴らが狙うのは我々の北方領域――シベリアだ」


「ならば、日本をここで失うわけにはいかない」


「我々は可能な限り迅速に、兵力、戦車、そして弾薬を日本へ送り込もう」


会議室が静まり返った。


それは、絶望が頂点へ達しようとしていた日本にとって、あまりにも大きな希望だった。


やがて、誰かが小さく息を吐く。


そして――。


「……助かった」


どこからともなく、安堵の声が漏れた。


それをきっかけに、会議室のあちこちから小さな歓声が上がり始める。


まさに絶望の淵へ追い込まれた、その瞬間。


北方から、新たな同盟者が現れたのだった。

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