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『拾われた孤児、拾い主はまさかの退役軍人にして天才科学者』  作者: ティラピア池
第二部:崩壊の始まり

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第35話 紅茶一杯と新たなアイデア

はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。


俺は相変わらず、目の前のホログラフィック・ディスプレイを睨みつけていた。


何度設計をやり直しても納得できず、いい加減うんざりしてきた、その時だった。


コンコン。


執務室の扉が、小さくノックされた。


「失礼いたします」


若い侍女が入ってくる。


その手には、湯気の立つ紅茶と小さな茶菓子を乗せたトレイがあった。


「ヒカル様、お茶をお持ちしました」


そう言って、彼女は書類の山が途切れている机の隅へ、そっとティーカップを置いた。


「……ああ、ありがとう」


俺は疲れ切った声で返事をすると、カップを手に取った。


そして、ゆっくりと紅茶を口に含む。


温かな紅茶が喉を通り、張り詰めていた身体にじんわりと染み渡っていく。


そして――二口目を飲んだ、その瞬間だった。


「……ん?」


ふと、頭の中に一つの考えが浮かんだ。


最新鋭の軍艦か、それとも昔ながらの戦艦か。


――なぜ、どちらか一つを選ばなければならない?


「……待てよ」


俺はカップを見つめた。


「だったら……両方、載せればいいんじゃないか?」


その瞬間、目の前が開けたような感覚がした。


「……それだ!」


俺は勢いよくカップを机へ置いた。


そして、さっき腹立ちまぎれに放り投げたデジタルペンを拾い上げる。


先ほどまでの疲労が嘘のように、俺の手が猛烈な勢いで動き始めた。


「ふふ……これならいける!」


部屋の隅に立っていた侍女は、そんな俺の変わりようを呆然と見つめていた。


驚きと、ほんの少しの呆れが混じった表情だ。


だが、今の俺に話しかけようとする者はいなかった。


何かに取り憑かれたように設計へ没頭する俺の姿を見て、彼女も黙って見守ることにしたらしい。


一時間。


二時間。


さらに時間が過ぎていく。


俺の手は止まらなかった。


古典的な戦艦を思わせる分厚い装甲を持ちながら、内部には最新鋭の推進機関と兵装システムを搭載する。


巨大な主砲を備えた甲板には、さらに長距離巡航ミサイルの発射装置まで組み込んでいく。


伝統的な戦艦の重厚さと、現代軍艦の火力・機動力。


その二つを、一隻の艦に詰め込む。


「……これだ」


何度も細部を修正し、設計を練り直した末――。


ようやく、俺は椅子の背もたれへ身体を預けた。


「……完成だ」


自然と口元に笑みが浮かぶ。


「これを……現実にする」


俺は完成した設計図を見つめながら、満足げに頷いた。


「政府にも、この設計図を送っておいてくれ」


***


その頃、政府庁舎の会議室では――。


巨大なスクリーンに、一隻の新型軍艦の設計図が映し出されていた。


そこに集められた政府高官や軍の上級将校たちは、誰一人として口を開かなかった。


ただ、その設計図を食い入るように見つめている。


「……凄まじい設計だ」


一人の上級将校が、思わず呟いた。


「この火力と防御力なら、複数の敵艦を同時に相手取ることすら可能かもしれん」


だが、財務大臣は険しい表情を浮かべていた。


「しかし、問題は費用です」


「この艦を建造するだけで、残っている非常予算の大部分が吹き飛びますぞ」


会議室に緊張が走る。


軍部は性能を優先すべきだと主張し、政府側は限られた資源と予算を考慮すべきだと反論する。


議論は長時間にわたって続いた。


優れた性能を持つ新型艦を必要とする軍部。


それを実現するための莫大なコストを懸念する政府。


両者の意見は、なかなか交わらなかった。


しかし――。


数時間にも及ぶ議論の末、ついに結論が下された。


「……建造を承認する」


総理大臣が重々しく口を開く。


「我々には、もう他に選択肢がほとんど残されていない」


***


一方、再び生産施設。


俺は自分の作業机に突っ伏したまま、ぐっすりと眠り込んでいた。


さすがに、あれだけ無茶をすれば限界も来る。


「ヒカル様……」


先ほどの侍女が、俺の肩を優しく揺する。


「ヒカル様、起きてください」


「……ん……?」


眠気で重い目を開く。


「設計図が、政府によって承認されました」


「……え?」


次の瞬間。


「マジで!?」


俺は一瞬で目を覚ました。


眠気など、どこかへ吹き飛んでいた。


「だったら――」


俺は椅子から勢いよく立ち上がる。


「今すぐ本格的な建造に入ろう!」


そして、待機していた技術者たちを呼び集めた。


「全員、準備してくれ! 今日からこの艦の建造を始めるぞ!」


***


その頃、海上では――。


先の戦闘で敵の油断を突き、大きな戦果を挙げた日本艦隊が、再び徐々に押し込まれ始めていた。


何日にも及ぶ連戦によって、艦艇も乗員も限界に近づいている。


疲労は確実に、日本艦隊の戦闘能力を蝕んでいた。


そして陸上でも、Rindou将軍の戦況は決して楽観できるものではなかった。


敵軍の大規模な攻勢によって、彼の部隊は後退を余儀なくされている。


それでも――。


俺が製造したByakko戦車部隊が、敵の進撃を長時間にわたって食い止めていた。


そのおかげで、日本軍は辛うじて全面崩壊を免れていた。


その報告は、生産施設にいた俺のもとにも届いた。


「……へぇ」


俺は報告書を眺めながら、思わず口元を吊り上げる。


「ふふん」


胸を張り、腕を組んだ。


「やっぱり、俺の戦車って凄いな」


……しかし、その得意げな気分は長く続かなかった。


海上では、再び通信回線が開かれる。


そして――。


バルドル・クライシュの怒号が、海域全体へと響き渡った。


「貴様らの大地は、三日後に総攻撃を受けることになるぞォォ!!」


「ハハハハハハッ!!」


その通信を聞いた日本艦隊は、一瞬にして静まり返った。


先ほどまで僅かに戻りつつあった士気が、一気に落ち込んでいく。


各艦では動揺が広がり、兵士たちの間にも不安が走った。


そして、その隙を逃すはずもなかった。


Pandemonium(パンデモニウム)艦隊は、揺らいだ日本艦隊の隙を突くように、再び海戦の主導権を握っていく。


戦場は再び、彼らの支配下へと傾き始めていた。

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