第23話:すべてを変える知らせ
はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。
ゆっくりと目を開けると、ここ数年間ずっと過ごしてきた寮の部屋に、朝の光がカーテンの隙間から差し込んでいた。
私は上体を起こし、すっかり習慣になった動作で身体を伸ばす。右腕を真横へ九十度まで上げ、少しの間その姿勢を保つ。そして続けて、左腕も同じように伸ばした。
「ん~~……ああ」
大きく欠伸をしながら呟く。
まだ半分眠っているというのに、身体だけは長年染みついた朝のルーティンを勝手にこなしていた。
十七年。
あの暗い夜から、もう十七年が経った。
そして、私がこの軍事・科学アカデミーの正式な生徒になってからも、すでに七年になる。
かつて私の世界そのものだった、あの白銀家の屋敷から遠く離れた場所で過ごすようになってから、もうそんなに経ったのだ。
私はベッドから立ち上がると、半ば無意識のままアカデミーの制服に着替えた。
そのまま寮の部屋を出て、中央廊下へ向かう。
そして――そこで、私は異様な光景を目にした。
共有スペースの前に、大勢の生徒たちが集まっている。
男子も女子も、皆がグループになって立ち、壁に設置された大型テレビを緊張した表情で見つめていた。
「……みんな、どうしたんだ?」
まだ少し寝ぼけたまま、私は人だかりの端にいた同級生へ近づいた。
「ヒカル、これを見て」
彼は視線を画面から一度も外さず、テレビを指差した。
私もその隣まで歩き、画面を見つめる。
その瞬間、眠気が完全に吹き飛んだ。
画面には、一人の記者が映っていた。
その表情は険しく、背後には見覚えのない都市で起きている混乱の映像が次々と流れている。
立ち上る黒煙。
パニックになって逃げ惑う人々。
そして、道路を高速で走り抜けていく軍用車両。
「……2112年3月14日」
記者は、努めて冷静さを保とうとしていた。
しかし、その声にはわずかな震えが混じっている。
「2105年以降、一部の小規模国家で発生していた小さな反乱は、現在、世界各地へと拡大する大規模な戦争へ発展しています」
「そして現在、日本もまた、その直接的な影響を受けています」
私は息を呑み、画面から目を離せなくなった。
「国際軍によって拘束・保護された、ある組織構成員から得られた情報によりますと――」
「今回の一連の混乱の背後には、世界各地の犯罪組織が結集して形成された連合組織が存在していることが判明しました」
「現在、各国政府は事態の収束に向けて全力で――」
その瞬間だった。
テレビ画面が突然、完全に消えた。
真っ黒になった画面から、スピーカーを通して短いノイズだけが響く。
一瞬の静寂。
そして次の瞬間、アカデミー全域に緊急放送が鳴り響いた。
「全校生徒に告ぐ。現在、緊急事態が発生している」
「全生徒は速やかに各自の自宅へ帰宅するか、最寄りの政府指定シェルターへ避難せよ」
「繰り返す。これは訓練ではない」
その瞬間、周囲の生徒たちが一斉に動き始めた。
寮へ向かって走り出す者。
家族へ連絡するため、震える手でスマートフォンを操作する者。
廊下は瞬く間に、小さな混乱状態へと変わっていった。
私はその場に立ち尽くし、頭の中で必死に状況を整理する。
そして、すぐに一つの結論を出した。
――まずは、家に帰らなければ。
私は寮の部屋へ駆け戻った。
スマートフォンと最低限の必要な荷物を掴み、そのまま白銀家の屋敷にいるはずの兄弟の一人へ電話をかける。
数秒ほどの呼び出し音のあと、聞き慣れたホタルの気だるそうな声が返ってきた。
「もしもし? どうしたの、ヒカル?」
その声を聞いただけで、彼女が自室でのんびり寝転がりながら、もう一台のスマートフォンでも眺めている姿が簡単に想像できた。
暇になると、昔の写真や兄弟たちとの動画を眺める――それが、ホタルの昔からの習慣だった。
「姉さん、今すぐニュースを見て」
私は急いで告げた。
声から、切迫感を隠すことができない。
「俺たちも、生き残るための武器を用意しないと。状況がかなりヤバい」
電話の向こうが、一瞬静まり返った。
そして次の瞬間――何かが勢いよく動く音が聞こえた。
さっきまでの気だるげな声は、跡形もなく消えていた。
代わりに聞こえてきたのは、鋭く警戒した声だった。
「そんなの、わざわざ探す必要ある?」
「父さんが昔から緊急用の武器庫を用意してるでしょ?」
「そこから持ってくればいいじゃん」
私は一瞬、言葉を失った。
そういえば――。
アラリックが、こういう事態に備えて何年も前から用意していた設備があった。
「……そうだった」
私は小さく呟く。
「今からそっちに行く」
すでに身体は、アカデミーの駐車場へ向かって動き始めていた。
「私のことも迎えに来て」
ホタルがすぐに答える。
「こっちの車も準備しておく。いつもの交差点で合流しよう」
「分かった」
短く返事をして電話を切る。
私はそのまま全速力で、自分の車が停めてある駐車場へ向かった。
心臓が激しく鼓動している。
不安と緊張。
そして、それ以上に強くなっていく決意。
十七年間。
あの暗い夜以来、私は家族と築き上げてきた温かな日々の中で生きてきた。
けれど今――なぜか、はっきりと感じていた。
この温もりは、まもなく試される。
これまで私が想像したことさえないほど、大きな何かによって――。
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