第22話:思いがけない客人
はじめまして、または再びこんにちは。今回もお付き合いいただきありがとうございます。
茂みの暗闇から、一人の男が姿を現した。
がっしりとした体格に野戦用の軍服を身にまとい、その顔には厳格さと規律を感じさせる表情が浮かんでいる――かつて初めてワシオを見た時に抱いた印象と、よく似ていた。
その後ろからは、四人の少年たちがぞろぞろとついてくる。
彼らの表情はいたって気楽で、どこか気だるそうですらあった。
ついさっきまで私たちを包んでいた緊張感とは、あまりにも対照的だ。
スズランは依然として警戒を解かず、手を銃へ伸ばしかけていた。
しかし、男が焚き火の明かりの中へ一歩踏み込んだ、その瞬間――二人の大人が互いの顔を見つめた。
「……クロイワ!?」
ワシオが目を大きく見開いて叫ぶ。
「ワシオ!?」
男――クロイワも、同じように驚きの声を上げた。
そして次の瞬間、二人は予想もしなかったほどの大笑いを始めた。
「いやぁ、世間って狭いな!」
クロイワは呆れたように首を振りながら歩み寄り、ワシオの手を力強く握った。
「最後に会ったのは……三年前だったか?」
「俺の記憶が正しければ、四年前だな」
ワシオも笑いながら、旧友の肩を軽く叩く。
「お前は相変わらず厳ついな。昔と全然変わってない」
私たちは皆、困惑した顔で互いを見合わせた。
さっきまで張り詰めていた空気が、突然、笑い声の響く同窓会のような雰囲気へ変わってしまったのだ。
「二人とも知り合いなの?」
ついにリンドウが、私たち全員の疑問を代表するように尋ねた。
「ああ。昔の同僚だ」
ワシオはまだ笑みを浮かべたまま答える。
「こいつは、現役時代に俺が知り合った中でも最高クラスの教官の一人だったんだ」
クロイワは小さく頷いた。
そして、経験豊富な教官らしい鋭い視線で、私たちを一人ずつ短く観察する。
その視線が最後に向かったのは、彼の後ろに立つ四人の少年たちだった。
「自己紹介しろ」
短い命令だった。
四人の少年たちは気だるそうに前へ出ると、一人ずつ名前を名乗り始めた。
ただし、その声にはほとんどやる気がない。
まるで、何度も繰り返してきた退屈な日課をこなしているだけのようだった。
ワシオは笑顔を浮かべたまま、クロイワへ尋ねる。
「それで、こんなところで何してるんだ、クロイワ? こうして鉢合わせするなんて、妙な偶然だな」
クロイワは大きく息を吐いた。
その表情が、わずかに真剣なものへ変わる。
「こいつらを鍛えてるんだ。何をやらせても、こいつらは緊張感がなさすぎる」
「少しくらい精神を鍛えたほうがいいと思ってな。この森なら、ちょうどいいだろう」
「それに、テントを張るのに良さそうな場所も探していたんだが――」
そこでクロイワは言葉を止めた。
鼻をひくつかせ、空気中に漂う何かを感じ取ったようだった。
「――遠くから黒い煙が見えたんだ。それに、なんというか……妙な臭いもする」
「少し焦げたような……いや、なんとも言えない嫌な臭いだ」
「事故でも起きたのかと思って――」
「コゲくさ――」
「……っ!」
次の瞬間。
ワシオが目にも止まらぬ速さでクロイワの口を手で塞いだ。
その動きに、私たち全員が驚いて目を見開く。
ワシオは引きつった笑顔を浮かべ、額には冷や汗が滲んでいた。
「はははっ、なんでもない、なんでもないぞ!」
そう言いながら、ワシオの視線がちらりと後ろへ向かう。
そこには、いつもより明らかに重い雰囲気を纏ったカゲロウがいた。
「ちょっとした料理実験だ。大したことじゃない」
クロイワは口を塞がれたまま、困惑したように眉をひそめている。
どうやら、突然変化したこの妙な空気を完全には理解できていないらしい。
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
ワシオがあれほど素早く動いてくれたことに、心の底から感謝する。
もしあの言葉が最後まで口にされていたら――カゲロウがどんな反応をしていたのか、想像するだけでも怖かった。
「もう夜も遅い」
ワシオは慌てて話題を変え、ようやくクロイワの口から手を離した。
「お前たちも、そろそろ休んだほうがいい」
「お前たちは今夜、インスタントラーメンでも作れ。簡単でいい、すぐできるからな」
何人かが、ほっと息を吐いた。
特に私にとっては、それが何よりありがたかった。
なにしろ、カゲロウが先ほど作り上げた恐ろしい料理の入った鍋を、実際に食べずに片付けられるのだから。
「それなら――」
ようやく解放されたクロイワが口を開く。
「俺たちも食料はかなり持ってきている。よかったら一緒に食べないか?」
「別々に作るより、まとめて作ったほうが効率もいいだろう」
すると、後ろにいた少年の一人が大きなバッグを持ち上げた。
中には、新鮮な食材がいくつも詰め込まれている。
彼は何も言わず、そのバッグをこちらへ差し出した。
「これは助かるな」
ワシオは明らかにホッとした様子で頷いた。
「よし。みんなで一緒に作ろう」
「ついでに、もう少し親睦を深めるとするか」
こうしてその夜――。
それまで互いに面識のなかった二つのグループは、同じ焚き火を囲むことになった。
今回は、さっきの恐ろしい料理実験とは比べものにならないほど、まともな食材を使って料理を作る。
最初こそ会話はどこかぎこちなかった。
しかし、時間が経つにつれて少しずつ空気が和らいでいった。
出身地や訓練のこと。
これまでの経験や、森での出来事。
そんな他愛のない話が、私や兄たちと四人の少年たちの間で少しずつ交わされていった。
やがて、ずっと続いていた夕食も終わった。
クロイワと四人の少年たちは、私たちのいる場所から少し離れたところに、自分たちのテントを設営した。
近すぎず、遠すぎない。
まるで一つの大きなグループでありながら、それぞれのプライバシーも確保できる、ちょうどいい距離だった。
その夜、私はテントの中で横になりながら、今日一日の出来事を思い返していた。
かくれんぼに始まり、カゲロウの恐ろしい料理。
そして、同じ森で偶然出会った、もう一つのグループ。
一日だけで、あまりにも多くのことが起きた。
それでもなぜか、胸の奥には妙な予感が残っていた。
これは、ただのサバイバル訓練なんかじゃない。
そんな気がしてならなかった。
――きっとこれは、これから始まるもっと大きな何かの、ほんの序章なのだ。
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