第3話 凛都の覚悟
両親の行方が分からない。と言ってから動かなくなった兄さんを、支えてソファに座らせる。
すぐに祖母に連絡を取り、両親が行方不明になったことを伝え、詳しい事情はわかないが二人の仕事が関係していると言うと、既に日を跨ごうとしているにもかかわらず、祖母はすぐに向かうと言って電話を切った。
祖父が亡くなってからは移動手段が徒歩や自転車、バスとなった祖母がこれから来るとなると、自転車で来るのだろうが、真夜中なこともあり明日で大丈夫だと伝えるためにもう一度電話をかけたが出ない。数回かけなおすも出ないことから、止められるのが分かっていて出ないのだろうと思い、諦めて祖母が来てくれるのを待つことにした。
祖母が来てくれることを兄さんに伝えて隣に腰かける。どう声を掛けたらいいかわからず、ただ時間だけが過ぎていった。
インターホンが鳴って画面を確認すると祖母の姿が映っており、玄関へ迎えに行く。
相当急いで来てくれたようで息が上がっていた。
「兄さん、お祖母ちゃん来てくれたよ。」
「…奨真くん、誰からの電話だったかだけ教えてくれる?」
ずっと動かない兄さんの前に膝を着き、顔を覗き込みながら小さな子供に話すように声をかける。
兄さんはわずかに顔をあげて祖母の顔を見ながら小さく答えた。
「彩仁って人からで、母さんたちと同業だって言ってた…。」
正直、両親が行方不明だと聞いた時からもしかしてと思っていた。
だから、彩仁という名前をきいて祖母と私は顔を見合わせて、やっぱりといった感じで険しい表情になる。
お母さんたちが言っていた、もしものことが起きてしまったんだと。
「その人なら、お祖母ちゃん知ってる人だわ。他には、何か言っていた?」
その問いに思い出そうとしているようで、兄さんの視線が少し迷い、ゆっくりと祖母の方に戻される。
「明日の昼前に家に来るって…。」
私にはそれが何を目的として来るのかすぐにわかった。
詳しい話をしに来るのもあるだろうが、一番は地下室にある物の回収だろう。
「そう。じゃあ、今日はお祖母ちゃん泊まらせてもらうね。明日はお祖母ちゃんも一緒に話聞くからね。二人とも、もう遅いから寝ちゃいなさい。」
言われた通り、大人しく寝ることにしようと部屋へ戻る。
ドアノブに手をかけたところで兄さんに声をかけた。
「兄さん、明日起きたら彩仁さんが来る前に少し話がある。」
「…わかった…おやすみ。」
「おやすみ。」
今まで見たことのない兄さんの表情に、話してしまって大丈夫だろうかと不安を抱くが、話さないわけにはいかない。
兄さんは眠れるだろうか。
私は寝られる気がしなかった。
両親が生きていてくれればという願いと、兄さんに何を思われても言われても、兄さんを守らなきゃという覚悟を抱きながら、これからどうしようかと頭の中で考えがめぐるのを止められなかった。




