第七話 世界の異常性
さて、裏口まで回ってきたはいいがどうやって中に入ろうか。
俺が今持ってる装備は最低限しかない。四発式リボルバー【エターナル】、分署を出る前にくすねてきたグレネード二発、腰に掛かっているライトと短剣。
幸いカギは開いているようだから、中に侵入するのは楽だがその後の行動をどうするか決めて起きたい。
俺は魔法使いとの戦闘経験がほかの分署メンバーに比べてない。
だから自分の経験からの行動をすることは必然的にできず、マニュアル的なものも特にない。ならどうするか、俺なら――
俺は体を一度伸ばし、右手に銃を構える。
そして、建物内に突入する。先ほど表の方から攻撃してきた高さ的に三階あたりに敵はいるだろう。
俺は全力で階段を上り、三の文字が書かれている扉を開け鉛弾を一発、扉のすぐそこにいたやつに向けて打ち込む。
ドンッ!
「うわぁぁぁ!」
「攻撃をしようとしたところで悪いが、世界魔法執行機関日本支部東京分署所属の宮成怜だ。おとなしく投降しろ、そうすればお前のことは殺さない」
当たった場所は左肩だったようで、敵は絶叫する。俺が打った左肩は大半が抉れており、ギリギリ腕はつながっているもののいつ取れてもおかしくない状態になっている。
この状態で投降さえしてくれれば殺さずにすむが、相手はあきらめきれないようで俺に向かって攻撃をしようとその意志を見せる。
俺はもう一発鉛弾を打ち込もうとした瞬間、物陰からもう一人の敵が現れた。
「貴様ぁぁ!」
相手は猛烈に突進してきて、殴りかかってくる。俺は相手の攻撃をガードしようとしたが、本能的にこの攻撃は受けてはいけないと思いバックステップをし、後方にへと下がった。
ドォォォン!
先ほどまで俺がいた場所の地面が木っ端みじんだ。この攻撃を受けてたら危なかった。だが俺はこの状況を楽しんでおり、俺は口角をだんだんと開けていた。
相手が態勢を治す前にまずは一発打ち込む。
ドンッ!
当たった場所は右わき腹、当たったと言っても弾が掠っただけだが、この銃は掠っただけでも致命傷になる。
「あぁぁぁあ!」
俺は脇腹を抑えて暴れる相手の頭に銃を突きつけ、弾丸を撃ち込む。
ドンッ!
相手の頭は吹っ飛び、周囲の壁や床、そして俺自身は血まみれになる。
先程左肩を打ち抜いた相手はどうやら血が流れすぎて失血死したようだった。
「こんなに早く死ぬっけ」
俺は顔に着いた血を服で拭いながら、弾を装填する。今日持ってきた弾丸の残数は8発。
情報が正しければ残りの敵の数はあと一人。「ふぅ。集中」俺は息を整え直し、残りの一人を探す。
だがどこを探しても敵の姿はない。一階と二階も確認したがどこにも敵の姿が見えなかった。逃げたか? いや、その可能性は低い。俺が入ってきた扉と正面入り口、どちらも鍵がかかった状態になっていた。
俺が入ってきた扉もいつの間にか鍵が占められており、その扉は内側からも開けるには鍵が必要なようで、俺自身もこの建物から出ることは出来なくなった。
さて、そうなるとこの建物は4階建て、最後の敵がいると思われる場所は最上階の4階。
俺は先ほどとは違い建物の中央部分に設置された階段を一歩ずつ上る。
四階の階段は薄暗く、外から入ってくる月明りを目安にゆっくりと上ってゆく。
階段を二十段ほど上った先にあったのは一枚の大きな扉。俺は右手に銃を構え、扉を蹴り飛ばす。
ドォォォン!
激しい音とともに粉々になった扉をよそに、俺は室内の中央にいる男に声をかける。
「世界魔法執行機関日本支部東京分署所属、宮成怜だ。市の破壊並びに魔法使用の行為で逮捕する、おとなしく投降すれば殺しはしない」
その男は俺の方に振り返ろうともせず、ただただ大きなガラス張りの窓から外の景色を眺めている。
男の身長は大体180くらいだろうか。俺よりも身長は高く、服はスーツを着ている。
窓から入ってくる月の光がその男を照らす。
そこには真っ白なはずのスーツを着ている男が真っ赤に染まっている様子が俺の目の中に写しこまれた。男の目は腐った者の目をしていなかった、その目は自分の正義を貫こうとする者の目をしていた。
「……君は、この世界をどう思う」
だいぶ渋い声だ、容姿と声から年齢は五十後半だろうか。
この世界をどう思うか。
魔女が人々に魔法を与え、それを良しとしなかった科学派との戦争。科学派の勝利によってこの世界に起こったのは、これまでの平穏と科学の進歩、そして魔法を使う者達への異常なほどの対応だ。
この世界の人間のほとんどは、魔女や魔法使いを悪だと認識している。それは世間の意見と自分自身に刷り込まれた認識。俺自身も魔女や魔法使いたちを悪だと思っていた。
だが俺は魔法を与えた魔女の一人フリームと出会い、自分自身が魔法使いであることを認識した。そして、その視点から気付かされるこの世界の異常性。
この男はこのこと言いたいのではないだろうか。
俺は油断をしないよう、銃を相手に向けた状態で答える。
「この世界は、はっきり言って異常だ。魔女や魔法使いを排除したがる、排除せずに受け入れ共存し協力関係を築けばいいのに」
「私もそう思う。この世界は以上すぎるのだ、魔法使いに対しての対応。一つ行動を変えれば、我々はこんなことをしなくても済んだ。だが―――」
「こちらはそれをする気がなく、排除をしようとしたがるか」
男の考えはもっともだ。だが、世界の考え方とはそうそう変わるものではない。年月をかけてゆっくりと人々の生活の当たり前に組み込まれてしまっているから。
《《魔女と魔法使いは悪》》だと教え込み排除させる、そして今の世界を安定させる。
小さいころからどの家でも刷り込まれる、ある意味洗脳と似ているだろうか。
その考えは分かっていても、今の俺の立場は世界魔法執行機関。魔女と魔法使いを排除しなければならない。
「お前の考えに賛同は俺もしたい。だが、俺は今のこの生活を自分自身から崩す気はない。改めて通告するお前のことを逮捕する、おとなしく投降しろ」
男は窓ガラスから俺の方に顔を向け、悲しそうな顔をする。
「残念だよ。でも私にも自分の考えを押し通したいという願望がある。最後まで抵抗させてもらうよ、世界魔法執行機関。いや、怜君!」
男は手を横に払い、俺は同時に銃を撃った。




