表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Anniversary~アニバーサリー~  作者: chie
Act15.しゃべる……犬?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/75

64


「ね、そうなんでしょ?!」

 さらに迫ると、彼は諦めたようにため息をついた。

「何を知ってるのかは知らんが、そのとおりだよ」

「なーんだ」

 なんだなんだなーんだ。だったら納得しちゃうわ。

「オッケイ。二番目の条件、あたしは連れて行けないけど、リックと上総に頼んであげる」

「そ、そうか」

 彼は半歩あとずさった姿勢のまま言った。


 彼がマモル・シンザキ(神崎衛)なら、あたしでも知ってる超有名な歴史上の人物だ。

 たしか二十三世紀に「記憶装置」を開発した人。


「記憶装置」というのは、人間の記憶を写す装置なんだ。他にマシノロイドなんかを作るときのプログラミングも楽になるらしい装置なのね(実際に見たことはないんだけど)。

 で、マモル・シンザキっていうのは表に姿を見せない天才科学者で、実はアマカーテア軍初代総帥ダビルサルの後見人だったのでは、という説があるのね。

 でも、たしか活躍したのはアマカーテア軍が滅亡したあとで、地球の再建に多大な貢献をしたらしい。年齢不詳をはじめ、かなり謎の多い人物で、何度かドラマとかにもなってたんだ。


 この小犬が、あの伝説の科学者なのか……。

 ドラマの中ではずっと人間だったりアンドロイドだったりしたけど、まさか小犬の姿だなんて、事実は小説よりも奇なりとはまさにこのことね。


 あたしはしみじみと彼を見つめ、そっと背中をなでた。

「地球に戻ってもこの姿でいるの?」

 こんな姿だから、表に出なかったのかな?

「いや……」

 シンザキさんはそう言って、少し迷うような仕草をした。


「ねえ、記憶装置は頭に埋め込んであるの?」

 傍目にもはっきりわかるほど、シンザキさんはギクッとした。

「こんな小さな体を半永久型マシノロイドにしなきゃならなかったんだから、よっぽどのことがあったんだろうね……」

 小さな体を刻まれた痛みを思って、胸が苦しくなる。

「なぜ、そんなことをお前は知っているんだ?」


 記憶装置はまだこの時代、表にはでていない装置。

 でもあたしはそれに対して何も答えなかった。

 シンザキさんは逡巡するようにしばらくあたしを見つめたあと、ポツリと「時間がなかったんだよ」と言った。

「私があやつを――メイン・コンピュータを作ったとき、まだ二十歳そこそこの青二才でね……」


   ☆


 私が父親からそれを依頼されたのは、ちょうど十九歳の夏だった。

 アマカーテア・クラブの創立者であった父は、クラブの象徴であるものを作りたがっていた。ブロンズ像とは違う、まったく新しいものを。そこで私に目をつけたのだ。

 愛人の子であった私は父親に認められたい一心で、平和の象徴である女神をホログラフで作ることにした。


――そしてできた女神の出来栄えは、最高だった。


 虹色に輝く美しい女神。

 それはクラブの象徴になり、やがて中心を飾る、なくてはならないものになった。


 しかし、そのころの私の体は病に蝕まれていた。当時の医学では手の施しようがない病だった。そこで父親の計らいで一時「冷凍睡眠」という措置をとることにした。莫大な費用のかかることを自分のためにしてくれる。それが嬉しくて、成功率が低いことはわかっていたが、私は父親に従った。

 冷凍睡眠に入る前、私は一つの願いを託し、女神に細工を施した――意思を持つように、と。


 しかし、長い眠りから覚めたとき、世界は想像しててものとはまったく違っていた。

 想像していた平和と繁栄の世界はそこにはなく、戦火のあとのカオスだった。

 世界がばらばらだから戦いが起こるんだ!

 あまりのショックに私はそう思い、一つの決断をした。

 世界を一つにする!

 

 そして、カリスマ性を持つよう作ったマシノロイド「ダビルサル」を総帥に仕立て、「アマカーテア軍」を作り上げたのだ。


   ☆


「ダビルサルは年齢コントロールがうまくいかず、どうしても三十代にしか見えなくて苦労したよ」

 シンザキさんはため息をついた。

 この人が本当のアマカーテア軍の創設者……。

「それで世界を征服したの……」

 やっと出てきた言葉に、彼はククッと笑った。

「ああ、皮肉なことに、ほとんどがあやつのおかげさ」

 ?

「私の作った意志の力により、あやつは自分で自分を作り変えていったよ。そして最大の能力、意思制御もあやつ自身がつくりだしたものだ。――しかも、それによって人類は滅亡の道を避けられていたのさ」

「どうゆうこと?」

「あやつがもっとも制御していたのは、戦闘能力なんだよ」

「うそ……」

「その証拠に、人は小競り合い以上のことはしなかっただろう? でなかったら、私が目覚めた時にはすでに地球は消えていた可能性だってあるだろうな」

「で、でも」

 シンザキさんは深い色の瞳であたしを見た。

 優しくて哀しくて……ああ、昔話をするおじいちゃんの瞳に少しにてる。

「あやつはたくさんの能力を生み出し、地球を支配しようとした。はずかしながら、空間移動も反重力も彼女のデータを盗んでつくったんだよ」

 自嘲……。


「やがて私の体にも限界が来た。病はゆっくり進行していたんだよ。時間はなかった。そして私は、私のそばに唯一いたこの体にすべてをたくすことにしたのだ。私の命が尽きた時から作動するようにしてね。もっとも手術を終えてすぐ、作動し始めたがね」

 そんな……。

「そこまでする必要があったの?」

「あやつを止めなくてはならなかった。気付いたのはもうあの体の限界に気付いたときだった。あやつは――地球を滅亡に追いやろうとしている。……「男」の姿をみただろう。あれは賭け事をするために、「ダビルサル」を取り込んで作ったものだ」 

 !!!!!

「ダビルサルの体の一つは、月の表で今も総帥として座っている。だが、その影はメイン・コンピュータの一部となっているのさ。あやつにとって地球はもはや遊び道具でしかないんだ。しかも無邪気にね」


 無邪気さは、時に罪だ……。

 「彼女」が地球に飽きたら?――そう思ってぞっとする。

 シンザキさんは、争いを無くしたくて地球を支配しようとした……。

 「彼女」はゲームで支配した……。

 目的は一つで、でも……。


「自分のまいた種は、きっちり刈り取らなくてはならないんだよ」

 支配は間違いでしかない。

 それに気がついたから。


「でも、破壊しちゃいけないんでしょ」

「あやつは自分自身が破壊されないよう、そうしたのさ」

 月ごと爆発……ね。

 そして、アマカーテア総帥を自分の中に取り込んでるんだとすると……。

「地球もろとも、ということになるな」

「じゃあどうすればいいの?!」

 彼はぴょんと私のひざに飛びのって、ぺロッと手をなめた。

「そんな顔をするな」

「だって!!」


 レット、セーラ、ダン、リー、ケイ……ああ、みんな頑張ったのに。

 なにもできないの?

 あたしはシンザキさんを恨む気には不思議となれなかった。

 地球――母なる惑星……。

「壊させやしないわ…」

 ぎゅっと膝の上でこぶしを作る。

「壊させやしない、絶対に! まってるのは明るい未来なんだからね!!」


 そうよ。あたし達の世界では、アマカーテアは滅亡してるんだから。

 シンザキさんは復興に多大な貢献をするし、戦いは過去の産物でしかないのよ!

 だから


「教えて、どうすればいいの」

「――お前は、変わった娘だな」

「変でもなんでもいいよ。メイン・コンピュータを止めるんでしょ?! 協力するって言ってるんだからさっさとする!」

「そうだな」

「壊すのがダメなら、コンセントを抜くってのはどう?」

 我ながらグッドアイデア!

 相手は所詮機械よ。この時代だったらコンセントでしょ? 電源抜いちゃえば終わりよ。

「あやつは自己でエネルギーを作ってるから、コンセントはない」

 あら、そう。

「主電源を切ることは? 電源、あるんでしょ?」

「あるが、同時に起爆装置でもあるんだぞ。第一、あやつには近寄れんだろうが」

 それもそうね。

 じゃあどうすればいいのよ。


「プログラムを変えるんだよ」

「そんなことできるの?」

 首を傾げたら、冷たい口調で一言。

「できるから言ってるんだが?」

 はい、ごもっともで。

最近こんなのばっかり。


「でも、それならどうしてさっさとそうしなかったの?」

 よいしょと立ち上がりながら言うと

「一人でできるなら、最初から頼まん」

 頼まれたっけ?

「三つ目、最後の用件さ」」

 あ、そう。


「ところで、あのメイン・コンピュータって名前ついてないの?」

 あやつあやつってじじくさい呼びかたして……(二百三十三歳だからおじいちゃんか?)。

「名前は、あったよ……」

 その言い方が哀しそうだったから、「ふーん」とあえて気のないふりをした。

「では参りましょうか」


 ちょっと気取っていったら、うーんとうめき声がして、上総がガバッと飛び起きた。

「おはよう上総。気分はどう? 立てる?」

「あ、ああ」

 上総は軽く頭を振るとゆっくりと立ち上がった。

「おいっ、みんなは大丈夫なのか?!」

「大丈夫、気を失ってるだけだから。――それよりもやらなくちゃならないことがあるの」

 一緒に来てと頼み、シンザキさんを抱き上げて、「しばらくしゃべらないでくれる?」とすばやく囁いた。彼は答えのかっわりにキャンと一声鳴いた。


 とつぜん犬がしゃべったら、上総があたし以上に驚くのは目に見えてるもんねぇ。少し心の準備をしてもらわないとね。


   ★


「やることって一体なんなんだ? 第一何がどうなったのか、正直俺には……」

「メインコンピュータの防御システムが作動したのよ。それで避難したの」

「どうやって」

「空間移動って言う方法を使ったのよ」

「空間移動??」

「つまり、Aって場所からBって場所に移動すること。歩かず、一瞬でね」

「――なんだよ、それ」


 からかってるのかと、判断をつけかねるって表情かおで上総は言った。

 私は少し考えて、それには答えず話を先に進めた。


「メイン・コンピュータは自分の意志を持ってるの。上総も見たでしょ。「彼女」がメインコンピュータの意思なんだって。今のままじゃ近づけないし、破壊なんてムリ。だから今からプログラムを変えに行くの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ