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Anniversary~アニバーサリー~  作者: chie
Act14.月基地の中

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 気を失っていたのは一分か一時間か、よくわからない。多分そんなに時間はたってないと思うんだけど……。

 まだ頭に血が戻ってきてないらしくて、気持ちが悪い。


 肩で何度も荒く息をついて目をつむり、意識して大きく深呼吸しながら落ち着くのを待った。

 頭の中がぐるぐる回ってる……。


「大丈夫か?」

 ふいに声をかけられ、頑張ってゆっくり目を開けた。


 誰?


 声の主は心配そうに私の背中を支えてくれる。

 その人を見て、ハンサムなお兄さんだなぁ……とぼんやり思う。


「大丈夫か? かなり頭打ったみたいだな。ごめん」

「頭? ……ああ、大丈夫。こぶになってるだけ」

「そっか。突然だったから加減できなくて悪かったな」

 とつぜん?

 そのお兄さんをぼーっと見ると、彼はいぶかしげな顔をした。

「マリノ? どうした?」

「えっと……リオン、どこ?」

 どうしてそばにいないの?

「リオン? ああ、たしか上総がポチのことをそう呼んでたっけ。ポチは途中ではぐれただろ? まだ見つからないよ」

「ポチ……? 上総……?」

 誰の事?

頭の中にかすみがかかってる……。


「一人で行かないって……一人にしないって約束したのに……」

 ポロッと言葉だけがこぼれおちる。


「マリノ? ――マリノ?!」

 ペチペチとほっぺをたたかれてハッとする。

「あれ? 北くん?」

 あたし、今何してたんだろう???

 夢でも見ていたような気分で北くんを見ると、彼はほーっと息をついた。

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫。ごめん。なんか夢見てたみたい」

「そう? ならいいんだけど」

「一体何が起こったの? わな?」

「いや、多分誰かが撃った銃撃が何かの作用で跳ね返っておこったものみたいだ」

「なにか危ない目にあったってことだよね」

「ああ……」

 そこで北くんは顔をしかめた。

「足、ひねったみたいだな」

 あわててリュックを探し、冷却スプレーを出した。

「応急処置しかできないけど……」

「十分だよ」

 北くんは笑ったけど、その顔色は悪い。思ったよりひどくひねったらしくて、足首がかなり腫れてる。

 あたしをかばったから……。

 また泣きたくなった。


 そんなあたしを見て、そっと遠慮がちに北くんがあたしの頭をこぶを避けつつゆっくりなでた。

「守れてよかった」

「……」

「マリノにアルテミスで言われたこと、よく考えたんだ」

「あ、あの時はごめん……」

「あやまらないで。その通りだからさ。今は上総が言ったことがよくわかる」

「上総が?」

「お前見てると前を見ていけそうだってやつ。――いつもそうだったんだよな。リーダーぶってても、いつもどこかで守られてたんだ。情けねぇよな……」

「北くん…」

 弱さを見せてくれるなんて珍しいね?

 私、全然守ったことなんかないよ?

 助けてもらってばかりだもん。


「……上総のこと、好きなの?」

「はぁ?」


 優しい空気だったのが一転。場違いなほど抜けた声を出してしまう。

なにそれ???


「上総には恋人がいるよ。ほら、リックの妹のロティ。北くんが天使みたいっていってたコだよ、残念だったね? 上総はね、彼女のこというとすぐに赤くなっちゃうんだよ」

 それでついからかっちゃったりするんだけど……。

 手を左右に振りながらそう言うと、北くんはなんだとか言って笑い出した。

「北くん? どうしたの、ねえ」

 天使のようなロティと上総が恋人って聞いて、笑っちゃうほどショックだったとか……。

 心配になって顔を覗き込むと、北くんが笑いをすっと消して真面目な顔をした。


 か、感情の変化が激しいわね。


 思わずどぎまぎしてうつむいてしまう。

 いつもはほとんど気にならないけど、北くんてすごくかっこいいから、あらためてまじまじと見られると緊張しちゃうじゃない。


「マリノ……」

 少し上ずったような声で呼ばれる。

 ほっぺに北くんの手が触れ、顔を上げたら一瞬唇が重なった。

 え? と思う間もなく、ふわっと抱きしめられる。


「好きだ……」


 ドキン……と心臓が跳ね上がる。


「ずっと好きだった。でもお前、おそろしいほど鈍いんだもんな……」

 え? でも……だって……。


 思わず逃げようとしたら、北くんの腕に力がこめられる。

 自分のドキドキと北くんのドキドキがはっきり伝わってくる。

 ど、どうしよう。

 北くんがあたしのこと好き? 嘘。想像もしてなかったよぉぉぉぉ。

 とにかく何か言わなきゃ……。

「あの、あたし……」


 カチャ


「え?」

 何かの音にドキッとしてはなれる。

 何の音?


 全部の神経を耳に集中する。

 北くんがさりげなくあたしを後ろにして、ゆっくりと立ち上がった。

 あたしは少しあせって首を振り、北くんにじっとしてるように抑える。

「でも」と北くんは目で訴えるけど、あたしは譲らない。その足で無茶させたくない。


 北くんは苦笑して耳元でささやいた。

「たまにはかっこつけさせなさい」

 そして軽くウインクすると、足の痛みなんか感じさせないで歩き出す。


――十分かっこいいわよ! 意地っ張り!

頭を打ったショックで、一瞬頭の中が11才に戻ってしまったマリノ。北くんが年上のお兄さんに見えてました。

すぐに16才に戻りましたが、現実は目まぐるしいです。

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