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maki
「やっぱさ、まちがってたよね」
あたしが靴紐を結びなおし終わった時、美来が突然ぼやいた。
「何よ、急に」
「禁断の扉なんてあけるべきじゃなかったのよ。……こんなことになるなんて、さ」
真剣な美来の顔に、あたしは悪いと思いながらもふきだしてしまった。美来がふくれっつらをする。
「ごめんごめん。……何を言い出すかと思えば。あのね!靴ひもがほどけただけでどうして『こんなこと』なのよ」
「だって三回目よ! まだ一時間もたってないのにっっ絶対不吉よ! それに変よココ。どうして下へ降りてるのに終わりがないの? もう五キロは歩いたよ」
「五キロは大げさだと思うけど……」
確かにゆっくりとはいえ一時間近くも下りつづける地下室って、そうないよなぁ。
うん、変だ。
扉を開けたあたしたちが、恐る恐る中に入ってみると、そこには何もなくて……がっかりしてたあたしと美来に、北くんが『これなんだろう』って言って、貯蔵庫のようなところをあけて見せたの。
そしたらそれがなんと階段! そう、いまあたしたちが下りてる階段がそう。だけど、もういいかげん疲れてきたよーっ!!
「お嬢さん、これなんでしょう?」
暗い階段の壁、ポチが言った"これ"をペンライトで照らしてみる。
「ん、なんだろ。紋章……みたいね」
でも、どこかで見たような気が……?
考え込むあたしに北くんが、
「母星史学で習ったよな、たしか。母星暦二二五六年に滅んだアマカーテア軍の紋章だった……と思うよ……」
と言った。
「それがどうしてここに?」
美来の考えるポーズ。腕を組んで真剣な顔をする。
さすがいとこ。やることそっくり。
考え込んでる二人を残し、あたしはほかにも何かないか壁をさわってみる。するとポチも同じことをやりだした。
ポチー! 犬じゃないんだから冗談は名前だけにしてよ!(と言ってもあたしがつけたあだ名なのよね)。
あたしのおなかが空腹を訴えたとき、ポチが偶然触った壁の一平方メートル程度が突然崩れだした。
ポチは持ち前の身軽さですばやくそれをよけて怪我はなかった。あたしはため息をひとつ。
次の瞬間、あたしたちは言葉を失うほど驚いた。
だって、壁のむこうには母星史学で習った"NEO TOKYO"のような都市があったのよ!! でも"NEO TOKYO"は今から二百五十年ぐらい前に存在したものであって……つまり、今はないのよ。ううん、それより、こんなところに都市があるのが変なの! 壁の左側には天井があって、右側には低くどんよりとした空。あたしは一生分の驚きを、今感じたように思えた。
「地下都市……か……? 」
北くんがつぶやくように言った。
「変だと思わないか? こんなに大都市なのに静かだ。まるで生物が存在していないようだよ」




