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「んもう、タイミング悪いなぁ!」
くるっときびすを返し、美来は居間へとかけていった。
う、美来ってば怖い。
間違い電話だったりしたら、一時間は八つ当たりされるわよ~。
そう思って北くんと顔を見合わせると、美来があたしを呼んだ。
「あんたによ♪」
すっかりごきげんになってる。
はて……この変化はいったい? まさか……。
「お嬢さん!」
「やっぱりー!」
ボンッと画面に映ってのは案の定『ポチ』だった。
ポチといっても別に犬ではない。日に焼けた浅黒い肌の二十歳の男性。
パパの知人の息子なんだけど、彼の両親が亡くなって以来、五年間一緒に住んでいる"家族"なの。本名はポッセリアム・シスタル……んーと、後は忘れてしまうくらい長くて変わった名前の持ち主……。
昔パパに恩があったとかで、なぜかあたしのことを"お嬢さん"て呼ぶのよね。
「なにがやっぱりです?! 私に黙ってお出かけになって!!」
「ごめーん。でもポチってば出かけてたでしょ? それで…… 」
「けっこうです」
あたしの言い訳をさえぎって、ポチはにっこりと笑った。
この笑顔! これに逆らえる人なんていないわよね、きっと。
美来がいい例だもん。
「私もいまからそちらに行きます」
げっ
「なんでぇ?」
「雪乃さま(つまりあたしのママ)から、そうするように言われたんですよ」
「どうして」
「何かいやな予感がするらしいですよ」
ママってば心配性……。
「で、ママはいまどこ?」
「これからお友達とパーティーだそうですよ」
「あっそ」
ママってば、言ってることとやってることが矛盾してるわよ!
「では今からそちらへ行きますから」
そう言うと、極上の笑みを残してポチは消えた。
あーあ。
「マリノ、どうしたの?」
美来が不思議そうに聞いた。
「ポチが今から来るんだって」
怒るかなぁと思いつつ言って、思わず座り込んじゃう。保護者つきの探検なんてさえないなぁ。
「あら、あたしはいいと思うわよ。ねぇ、真幸」
へっ?
「そうだな。ポチなら俺も賛成」
北くんまで……。
――まぁ、いいか。荷物半分持ってもらおっと。
ピンポーン
ポチが来た。
あーあ、美来ってばニコニコしちゃって。ポチといる時に美来が怒ったところ見たことないもんなぁ。地下のこともすっかり説明しちゃって。
ま、そんなこんなで地下へ向かうことにしたのだ。
★
ピ・ポ・パ・ポ……
美来の指がキーを押していく。
そして扉が開いた。
――このときは夢にも思わなかったんだよねぇ。
これがあの冒険の始まりだったなんて……。
そして、これが……
本当は計画されていたことであることも……




