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Anniversary~アニバーサリー~  作者: chie
Act13.船を乗っ取り月に行こう!

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「外部アクセス完了」

 ふーっと息を吐き出し、頭を軽く振ると美来はにっと笑った。

「月基地内外部、記憶完了」

 あたしはこめかみからコードをはずしながら言った。

 そして次々に準備完了の声が通信機から入る。

 美来はノート型コンピュータをポチに預け、あたしは記憶圧縮機をリュックにしまった。

 このリュックにはいろいろお世話になってるなぁ。

 上総が途中で拾ってきてくれたマウスをリュックに放り込んで、好意に甘えて北くんに持ってもらう。


 今、アマカーテアの内部はアルテミスの流す偽の情報に走り回ってる。――けど、用心にこしたことはない。


「第3ゲートから搭乗してください」

 通信機から指示が入る。


 アマカーテアの連絡シップはフルオートのはずだから、今は誰ものっていない。――というか、アルテミスの手によってそうなるようにしてある。

 そこにいるアマカーテアの兵は思ったよりもずっと少なかった。

 気をつければいい、でも一番の難関。

 あたしは大きく深呼吸をした。チラッと皆を見ると、心なしか皆顔がこわばってるみたい。

 きゅっと唇をかみ締めて、一生懸命落ち着く努力をしたとき、通信機から誰かが息を飲む音が聞こえた。

 視線を走らせるとロムステルがいた。そして、何か大きなカプセルがあり……

「セーラ!」

 セーラが入ってる!!

 どうしてあんなものに?!


 上総が時計に目を走らせ、今だと鋭く言った。

 あたし達は一気に走り出す。

 半分も行かないうちに衛兵の一人に見つかる。間髪をいれずに上総とリックが銃の引き金を引いた。

 あたしは頭が真っ白の状態で、ただシップにたどり着くことだけを考えて無我夢中で走り抜けた。

 ロックのかかってない扉を北くんが開け放ち、転がるように乗り込む。

「トニー、トニー、聞こえる?!」

 美来がノート型コンピュータとシップのそれを接続して言った。

 その間に北くんとポチがシップの作動準備に入る。

「OK、美来。感度良好」

 かすかなノイズとともに、画面にサビ色の髪をした、優しい面持ちの少年が映る。怪我をしたためにシェルターに行った人だそうだ。

 美来がアルテミスから直接アクセスし、外部からのサポートを頼んだんだって。

 美来にはかなわないなぁとしみじみ思う。

 このシップは、月基地まで自動操縦で行くように設定されている。でも、あたしたちは月の裏側に行かなければならない。で、途中でオートから手動に変えたりするんだけど、その負担を少し軽くするため、外部アクセスが必要になるんだそうだそうだけど――あたしにはよくわからない。

 工学関係ってほとんど寝てるし……。

 あ、あたしたちの学校では、日常使うメカの構造も勉強するの。構造もわからず使うのは、メカに対して失礼なんだと先生が主張してできた学科なんだ。興味のある人は年代を追った昔の構造も勉強できる。わざわざ特別講習にまで参加しなくても生活には困らないわと思ってたけど、美来達みたいにまじめに行っておけばよかったと、今痛切に思う。


「船体固定解除!」

 北くんの声とともにかすかな振動。

 宇宙へ出る助走のためのレール(みたいなもの)に移動していく。この時代、軽い反動で宇宙へ! ってわけにはいかなくて、これまた負担を少なくするため(エネルギー不足だしね……)、助走が入るんだって。飛び立ったらたったで、けっこうGがかかるらしく、重力を人工的にシップが作り出すまで多少時間がかかるそうだ。

 一体どんな状態になるのか想像もつかない。


「シートに体を固定して」

 美来が言って、あたしは慌てて手近なシートへ行く。

 ポチが上総とリックを手伝ってあげてる。

 あたしは食い入るように窓の外を見た。


 夢か、そうでなければ映画のワンシーンを見ているようだった。

 無数の銃撃。ケイがリーをかばって横に飛ぶのが見える。その腕からあざやかな赤いものが飛び散り、同時に反撃。ケイの影からリーが飛び出し、二人の衛兵を倒す。あの小さな体のどこにそんなパワーがあるんだろう?! って思えるほど、すばやくパワフルにたち回っていく。


ケイは腕を抑えながら、ばかでかい男の間をすり抜け、奥の男にけりを入れ、振り返った男たちをなかばもつれ合うように倒していく。そして何か取り出し、瞬間どんっと爆発。奥からかけよろうとした兵士が風圧で壁まで吹き飛ばされた。


 ダンがハンディキャノンを撃ってレットを援護し、レットはセーラの入ってるカプセルへ駆け寄り、銃でロックを解除した。開いた扉からぐったりとしたセーラをレットは抱きとめた。セーラが一瞬びくんとして身を引き、レットをまじまじと見ると、その首に腕をまわして抱きついた。


 シップがレールに入る。

 衛兵が意識を失ってバタバタと倒れてる中、ダンたちがシップを仰ぎ見た。

 リー、ケイ、ダン、レット、そして振り返って目を見開くセーラ。

 あたしは皆にありったけの思いを込めて手を振った。見えてないのはわかってるけど、そうせずにはいられなかった。リーがにっと笑うのが見えたような気がした。皆が敬礼の姿勢をとる。レットの腕の中でセーラが祈るような仕草をした。


 がくんとゆれて、シップが止まる。ここから加速して飛び立つのだ。 

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