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yuko
「こっちもいろいろあったんだぜぇ? もうありすぎて……と。時間がないんだったっけ」
「時間て、何の時間のことだ?」
リーはちょっと考え込んでいた。
ええと、一番初めにやらなくちゃならないことは何だ?
「リー? どうしたのよ」
「ん。おーっしっっ、とりあえず。安全なところにいこう」
左ポケットを上から触れると、うん、ちゃんとある。コレを……なんか嬉しくなってきた。
「ホント、どうしたんだ? オマエ、ちょっと変だぞ」
「うん」
リーがますますニコニコしはじめると、リックが変なふうに顔をしかめる。
美来が噴出した。
「やーね。二人ともなにしてるのよ? そんなことより、三人でこんなとこぞろぞろ歩いてることこそ変に思われるんじゃない?」
「あ、それ大丈夫。俺今使者だし。もしみつかったらその辺見物してるんだとでも言えば。あれ? そういえば、よくココまで見つかんなかったね」
「見つかったぞ」
「えっ!?」
「あっは。リックってばそんな言い方したら。ほら、びっくりしてるじゃない。大丈夫。変な裏道があってね、自然にココまでこれちゃったのよ」
「こんなに早くリーとあえると思わなかったもんな」
「運がいいわよね」
こいつら、なんか変だぞ。
「なぁ、二人ともちょっと会わない間にずいぶん仲良くなったんじゃねーの?」
「えっ……」
「リ、リーってば何言ってんのー」
あれっ けっこう意外。いい年こいて二人して赤くなってやんの。オイオイまじかよぉ。
リーは悪いとは思いつつ笑い出してしまった。
ま、俺が口出すようなことじゃないしなぁ。
それから約十分後、三人はとある部屋に業務用のコンピュータを見つけた。
「大丈夫か。使えそう?」
美来がざっと調べてみる。この部屋自体かなりほこりっぽく、しばらく使われていない感じだった。実はココ、アルテミスが結成されるまで使われていた部屋なのだが、三人に知る由もなかった。
「そうね、大丈夫みたい。電気はどこかの配線からもらっちゃえばいいと思うわ。多分気付かれずにいけると思うわ」
「すごいなぁ、美来って天才!」
リーの言葉に美来はちょっと微笑んでみせた。
「で、その『すっごいデータ』っていうのは?」
歩きながら聞いたデータの事を聞くと、リーはしまっておいたヴォイスメモリを美来に渡した。
「リー、爆発騒ぎってのは後どのくらいで始まるんだ?」
「そうだな。あと二十分。派手なトコからいくってアルテミスが言ってた」
「アルテミス? 誰だ、それ?」
「あれ? 言ってなかったっけ? セーラ達のことだよ」
リックの表情が一瞬停止してから、ゆっくりと笑顔になった。
「そういや、セーラらしいネーミングだな。あ、それじゃ、内部反乱軍の呼び名なわけ?」
「そうゆうわけではないみたい。ココでそう呼ばれてるんだ」
「なあ、知ってることだけでいいから、ちゃんと教えてくれよ?」
リックの前置きにリーはきょとんとしている。
「その、アルテミスか。たくさん女性がいるって言ったよな?」
「うん」
「彼女たちはここで何をやらされてるんだ? あ、つまり、その……何か危ないことでも……」
「なーんだ、そんなこと。大丈夫だよ。兵士にさせられちゃうとかそんなんじゃないよ。よくわかんないけど、頭脳労働させられてるみたいなこと言ってたもん」
リーがにこやかに答えると、リックは一瞬ひっぱたかれたような感覚に陥った。
「あ、そうかー。そうだよな。女兵士軍団なんてないよなっ」
リックはほっとした笑顔になった。
「そっかー。……そうだよな。あっは、そっかー」
そんな言葉を言いながら、リーの頭をくしゃくしゃやってる。
やっぱりセーラの事、というかレットのことになると、リックてば色々心配してんだなー。
ちょっと憧れの思いを抱きつつ、こうやって頭抱えられてくしゃくしゃやられてると……。
ケイ、大丈夫かな? 大丈夫だよね?
「ちょっと、話しててもいいけど、もうちょっと静かにしてよね。集中力が鈍るじゃないの」
振り向きもせず美来が言った。
リーとリックは思わず顔を見合わせる。
「あ、ごめん」
「静かにする」
二人は静かな声で話し始める。
「それにしてもミキ、前より優しい顔するようになったね」
知り合って間もないが、この前は触ると切れそうなぐらい神経とがらせてたよな。それが一皮向けたみたいなやわらかい印象になってる。
「あ、お前もそう思う?」
「うん。さっきニコッてした時ね。リック、俺のおかげだとか言うなよ」
「バカ。言うかよ、んなこと…」
「二十一にもなって照れるなよー。顔赤いぞ」
「いい加減にしろってば」
「うん。あ、ねえ、武器のほうどれくらいある?」
「俺のとトニーの。あ、トニーは負傷してシェルターに向かったよ。俺の……」
「うん、さっき聞いたよ。シェルターに行ったんだ? それじゃ安心。ダニエル先生に診てもらえるしね。やロティーもいるし」
「そ…だな」
リックが再びちょっと笑う。
リーは、美来とリックのことをアルテミスに知らせておかなくてはと無線機を取り出して、ちょっと考え込んでしまった。
使ってることがばれるとまずいからあんまり使うなって言われたんだよな。だったら、最初からもたせるなよ…。うーん、リック達のことわかってるかなぁ。ケイと俺がいたこともわかってたし。でも、もし知らなかったらマズイよな。いいや、使っちゃえ!
しばらくして、はじめにBブロック第4セクションで騒ぎがおこった。
side★Masayuki
すぐ近くに女性がいるのは確かなんだけど……。探知機の性能には自信がある!
真幸の頭で、少しの疑問がちらついていた。
まず、ロムステルとゲームをやっていたときは、一定の場所に集中していた赤い光のかたまりが、今はないということ。かなり範囲を広げてみても、それらしいものはない。割と近くにいるのも一人、せいぜい二人である。なぜ今は分散しているんだ? 何が起こっているのだろうか?
三人は今、女性=味方という短絡思考をあてにして、孔の中を出口を求めて前進していた。ダンが小さく声をあげた。
「おい、本当に女がいるぞ」
え? 目的の女性はもうちょっと遠くにいるはずなんだけど…。
真幸は格子越しにのぞきこんだ。どこかの部屋ではなく、静かな通路である。
なるほど、女性が一人通り過ぎていくところだった。ずいぶんいらいらした感じの歩調だ。もう早足というより、ズカズカって感じ。
すっと角を曲がっていってしまうと、ダンがすばやく辺りを見回してさっさと下に下りてしまった。
「俺、声かけてくるからな」
心なしか嬉しそうな一言を残して行ってしまった。レットも真幸も下に下りることにする。
「ね、今の気がついた?」
「今の女のこと? 美人だな。背が高い。ま、ダンならちょうどいいか」
「レット! そうじゃなくてさ」
「高価そうなドレスが汚れていたってことか?」
「それもそうだけど……。本当に気がつかなかった?」
「なんだよ? ……そういや、誰かに似ているような気が……」
二人はダンたちが曲がった角をそっと覗き込む。
ダンがちょうど女に近づき、女のほうはダンに気がつくと驚いて声も出ない様子だ。ダンが女ににこやかに声をかける。
「男だよ、あれ」
真幸が低い声で言う。探知機にははっきりと緑の光。
「え?! ――まさかあれって」
レットがやっと気がついたとき、彼女がやっと口を開いた。
「ダン、俺だよ俺! 上総だっ!」
side★Miki&Rick
「外が騒がしくなってきたな」
リックがやや低い声でそう言った。
「始まったみたいだな」
リーはそう言うと、ちょっと様子を見てくる、と部屋を出て行った。
アマカーテア・プロジェクト、か…。
美来は、このデータに、どこか、それも重要な部分が欠けていることに気づき始めていた。何かをつかむときの手がかりのようなのが。もしかして……。それとも……。
「リー?」
思わず言ってから、ついさっき出て行ったことを思い出した。変わりにリックが答える。
「今様子を見てくるって。すぐ戻るよ」
「うん。ねぇ、コレどこで手に入れたっていってた? もしかして……」
ちょっと言葉が途切れた。今持っているもう一つのデータが鍵なのだろうか? それにしては少し簡単すぎやしないだろうか?
そのときリーが息を切らして戻ってきた。彼が何か言いかけるのをさえぎる。
「それより、リー、このデータどこで手に入れたの? それからこれだけだったの? 他に何もなかった? すごく大事なことなのよ」
「ええと、Cブロックだよ。昔の書類なんかがたくさんあって。あ、本だったんだよ、それ。前半は『予言書』ってゆうやつだったんだけど、ぼろぼろでもう読めなかったんだ。だから後半だけ」
「そう……」
この何かを踏まえた上で言っているような文章はそのせいなのかもしれない。
「でも昔のって言ったわよね? それは確かなんでしょう?」
「もちろん」
となると、イチかバチかやってみるか。
美来はもう一つのデータを取り出した。
……うーん、理系の頭がほしいわ。こんなに方向性に富んでいると、一度に全部考えるのはちょっと苦しい。
「真幸がいてくれたらなぁ……」
つい口に出して、ちょっとため息。ま、やるしかないっと。
リーが美来の邪魔をしないようにリックに話し始めた。相変わらず使者のふりをして、少し先の正規兵に何があったのか尋ねてみたのだ」
「…それがさ、第4セクションだって言うんだぜぇ? 今セーラとかケイとか、皆がいるはずなんだよ。何でそんな危険な真似するんだ? さっき、そんなコト言ってなかったのに……。俺、アルテミスが何を考えてんのかわかんねーよ」




