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chie
side★Lee
爆発が起こる少し前――
大任を双肩に乗せ、そして重大なデータを手に入れたリーは、アマカーテア副総帥、セディ・ロムステルと謁見するため、案内嬢のあとにつづいてその部屋に入った。
ばれはしないかという恐怖がなかったわけではないが、それよりも興奮のほうが勝っていた。ブラック・サーチに目をつけられてはいるが、上層部の人間がいちいち自分の顔まで知ってはいるまいとは思ったし、着慣れぬ服で多少の違和感があるものの、いつもの自分とはかなり印象が違っているはず。
しかし、部屋に入ったとたん、そこは小さな空間になっていて、ちいさな光の筋がリーの体の上をはって行く。
『オ名前ヲドウゾ』
機械的な声が聞いてくる。
冷たいものがリーの背中を流れた。万事休すか。
それでも、一か八か、先刻教えられた本来の使者の名前を告げる。
『骨格、網膜、声紋、トモニOKデス。ドウゾオ通リ下サイ』
リーは大きく息を吐き、バクバクと激しい心臓を抑えながら、開かれた通路を歩き出した。
そ、それにしても、よくばれなかったな。検問の細工までやるなんてたいしたもんだけど、最初に言っておいて欲しかったぞ。心臓に悪い!!
心の中でブツブツ言いつつ、頭の中にレットを描く。にこやかなポーカーフェイス。あんな風にはできないけど、とりあえず表情は押し隠す。そして、使者の笑顔を思い出し、やってみた。できてるか? ひきつってないか? 不自然だろうか?
いつのまにか扉の前で待っていた案内状がリーに少し頷いて見せ、扉を大きく開けた。
部屋の中はとても広く、ずっと奥にロムステルが座っていた。その周辺にはエリート中のエリートである近衛兵たちがずらっと整列し、その光景にリーはごくりとのどを鳴らし立ちすくんだ。
大丈夫。そう自分に言い聞かせる。
失敗するわけにはいかないんだ。
すうっと大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。大丈夫。
リーは胸を張り、まっすぐに前を見てゆっくりと歩き出した。その顔には微笑さえ浮かべて。
ロムステルの前に行くと、片ひざをつき、優雅に一礼し、心持ち声を高めにして口上を述べた。それにロムステルが答えると、リーは立ち上がって月からの命令文を伝える。ロムステルは少し顔をしかめたが、明朝必ずといって立ち上がった。そして退出しかけ、ふと思い出したように言った。
「検問には驚いただろう。最近ねずみが多くてね、念のため先刻取り付けたんだ。気を悪くしないでくれよ」
そしてリーも立ち上がって部屋の外に出ると、外で待っていた女性に小声で早口に言った。
「あいつが言ってたこと、どうゆうことだ?」
「検問ね。こちらも予想外だったの。本当に突然のことだったのよ。でも、あなた一体どんな仕掛けをしたの?」
「――なにも」
呆然とする。どうゆうことだ? 検問はアルテミスの予想外のことだったにもかかわらず、自分のデータが使者として入っていた。あの使者とすべてが同じだった? そんなわけあるか。絶対ありえるわけがない。
それじゃ…
「女神?」
思わずつぶやき、笑ってしまう。
まさかね。あれはリックが見た幻影だ。
あーもー面倒だ。とにかくまだ気は抜けないんだ。とにかくうまく行ったことに変わりはないんだし、考えるのは後!
謁見の間を抜け、廊下を歩き、その間案内嬢が次々と入れ替わっていく。駅伝か何かのように。そしてそれぞれがバラバラに散り、三十分も経てばあちこちで爆発が起こり混乱が起こるだろう。だが、それも長くもつものではない。それでも、あのデータがあればアマカーテアをぶっ潰せる。ああ、絶対に。だけど、とにかく誰かこれを有効に使ってくれる人に頼まなきゃ。誰か……
「リー」
えっ?
「リック! 美来まで。一体どうしてココに」
「色々とあってね」
おどけたようにリックが言うと、リーは肩をすくめた。




