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Anniversary~アニバーサリー~  作者: chie
Act10.情報源はナンパ?

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chie

「はぁ、アラン・ドロン……ね」

 一転、お茶らけた態度に戸惑ってしまう。


 あ、なんだ。雰囲気が違ってて気がつかなかったけど、この人ってさっきポチをナンパした人じゃない?!


「あの、ポチ……さっきお茶に誘って連れて行った人は? 大丈夫なの?」

「……その前にお前の名前は?」

「マリノ! ねぇ、ポチは無事だよね!?」

「ああ、もちろん、ぴんぴんしてる。……彼女、ポチって言うのか」

 うっ……

「聞いても教えてくれなかったんだよね。ま、そこも魅力なんだけど。ふーん、ポチか」

「えっと、それは……」

「ポチ……かわいい……か。うん、なかなか。名は体をあらわすってか」

 は?

「あ、知らない? ポチってかわいいって意味なんだぜ」

 えー、そうだったのー? 知らなかった!

「彼女は無事だよ。俺がついてるんだぜ。俺がついてて女に怪我をさせるなんざ、モットーに反するからな」

 こ、この人ってもしかして、というかもしかしなくても古い言葉でプレイボーイとかってやつ?

「まぁ、彼女の場合は、あまり心配はいらなかったみたいだが」

 アラン・ドロンはブツブツ言いながら、空になったコップをサイドテーブルにおいた。

 そしてあたしの顔を覗き込むように見た。その目がなんだかすごく冷たくて、えーん、この人怖い。

「お前、化粧してたんだな」

「えっ?!」

 アラン・ドロンはニッと笑って

「素顔のほうがかわいいぞ、うん」

 あたしはあせってテーブルに置いてあった鏡に飛びついた。


 うわー、きれいさっぱり素顔だ! ど、どうしよう。

「素顔でいろよ。そのほうがかわいいぞ」

 メイクしなおすにも、あんな変装自分一人じゃできないし、可愛いと言われた手前、

「そ、そうかな」

と、へらへら笑っててしまう。――ま、いいか。


「ところでさっきは一体何が起こったの?」

 かなり気分がよくなったので身を起こしながら聞くと、

「さあ、誰かがミスでもしたんじゃないか?」

――い、いいかげんだなぁ。

「顔色もよくなったし、もう大丈夫だろう。帰れるか?」

「え? あ、うん」

 立ち上がって深呼吸。別にクラクラしないし、大丈夫みたい。

「送ってやりたいところだが、仕事があるんでね」

「大丈夫、ちゃんと帰れます。――ありがとう」

 あたしはぺこっと頭を下げて、その部屋を出た。


   ☆


「出てきていいぞ」

 マリノが出て行った後、アラン・ドロンが声をかけると、奥のドアから一つの影が出てきた。

「例のものはとってきたんだろ」

 影はコクリと頷く。そしてポケットから小さなメモリーチップを取り出した。ドロンはそれを受け取り、明かりに透かしてみてから、カフスの中にしまいこんだ。

「帰っていいぜ。あんまりココにいるとまずいだろ。――ん? 何か言いたそうだな。心配してるのか? 大丈夫だって。そんなへまはしねえよ」

「でも……」

「なんだよ。ああ、さっきの女の子とか? あれも心配ないって。何で助けたかって? 別に俺が……いやいや、そんなことはどうでもいい。とにかく大丈夫。――そんな顔するなよ。可愛い顔が台無しだ」

 アラン・ドロンはその女の頬に唇を軽く押し当てると、彼女を外に追い出した。そしてドカッとイスに腰をおろすと深く息をつく。


「――悪いな。時間がないんだよ」


 それから、思い出したようにククッと笑いを漏らす。

 爆発が起こったとき、彼女――ポチがさっと青ざめて、どこで起こったのかと聞いてきた。多分、第4辺りだろうといったら、あっという間に爆走してって、あの女……マリノって言ったっけ……を抱きかかえてきた。女のくせにえらいバカ力だとは思ったが。

 そこまでして守る価値のある子だとも思えんがね。

 よろしく頼まれてしまったから、ついつれてきてしまったけど、あの後、ポチはどこにいったんでしょうかね。変わった女。


「さて、データを解読しなくちゃな」

 ぴんと指先でカフスをはじいた。

「偶然とはいえ、あんなデータをはじき出してくれたんだ。感謝してしまうね」

 ククッと笑うと、デスクのボタンを押し、一見業務用のコンピュータを出す。そして彼がイスに座ったとたん、目の色がすっと変わる。そこには冷たい人形のような男がいるだけ。


 部屋中をロックし、部屋を暗くすると、コンピュータの上に光があふれ、徐々に形を作り出していく。それにカフス内のデータを加え、完全な形を作る。

 画面中央にスウッと文字が浮かび上がり、男は満足そうに、しかし皮肉な笑みをもらす。

 画面の一番下に出たそれは、「アナサニイ」と記されていた。



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