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Anniversary~アニバーサリー~  作者: chie
Act10.情報源はナンパ?

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yuko

「あー、いっしょに行動すると何かマズイことでも?」

「それなんだけどさー」

 ダンが顔をポリポリやりながら言った。

「俺たち二人とも前線に配置されることになっちゃって……」

「あ……? な、な……なん……で、そうなっちゃうわけ~?!」

 真幸が金魚のような口パクパクの発作がひと段楽すると、それだけ言って、額に手を当てた。


レットもダンもこの反応には一瞬めんくらったが、レットが口を開いた。

「そもそも、リックが俺たちに隠してお前達三人を上総とマリノの救出に行かせたのが悪い! 大体隠してたんなら隠しとおすべきだろーがっっ!! それを……」

「おいおいレット、そうゆう問題じゃないだろうが。今話してるのはオレ達が戦場に行くことのなっちゃったーっつう話であ……」

 ダンの言葉は、そこで真幸に遮られてしまった。


「戦場?! じゃ、ついにアマカーテアはガルディアと戦争をはじめたってわけ? …あ、いや、そんなはずは……。たしか母星史ではゴールディの反乱が……。はっ、まっまさかっっっ! 俺たちが過去に介在してしまったために歴史の流れに大きなズレが……。そうなったら……」

「おいッマサユキっっ、大丈夫かよー? 何ブツブツ言ってんだ。二人して! ほら、しっかりしろって。まいったなー。レットはともかく……」

「そーだぞ。マサユキ、とにかく俺の話を聞けって。過去のなんたらはどうでもいいから」

「えっ? かっ過去? なーにを言ってらっしゃるのん、もーお」

 真幸はにこやかに立ち直った。


「で、話って?」

 レットが二、三度うんうんっとうなづいてるすきにダンが口を開く。

「あ、ちょっと言わせてもらうぞ。“前線”って言ったが、戦争がはじまったわけではないんだ。ガルディアとの境界線のことだよ。あの辺りはしょっちゅうこぜりあいなんかやって憂さ晴らししてるんでな」

 ダンが、レットを軽く制していた手をおろしとレットが話し始める。

「とりあえず、現状だな。まずお前ら三人が、と言うより、リーが、かな。ここに向かったのを知って、ケイが単身飛び出したんだ。それで…」


   side★Marino


 いつまでこんなことやってるのかなあ?

 あたしは相変わらず、わけのわからないグラフとにらめっこをしていた。

 う……数字は苦手なんだよぉ。

 そんな心の声が聞こえたのか(んなわけないって!)、画面が変わって力学の公式みたいなのがだーっと出てくる。

 あらら、何よこれ。突然キーもロックされたみたいに動かなくなってしまった。

 再び画面に目を戻すと――え? これって…


「おい、お前なにしてるんだ?」

 頭の上から男の声が降ってきた。うわっ、マズイッ!!

「あっらーん、コンピューターが壊れちゃったみたい。どぉしましょー?」

 あはは、我ながらすごい演技力――って、そんなわけないじゃないの。あたしまだ何も言ってなーい。んじゃ、今のは……ポ、ポチーッッッ! いつの間にそんなトコにいたのよー?


 ポチがにっこり微笑みかけてる視線の先にはブロンドのお兄さんが立っていた。

「どうしようねー。俺も知らないよーん。それにしても君かわいいね。どう? ちょっとひとやすみして、お茶でも飲まない?」

 オイオイおにーさん、男が男ひっかけてどーすんのよってば。

「ええ、喜んで」

 ちょ、ちょっとポチ、男が男に引っかかってどーすんのよってばっ。


「あのー、失礼ですけど、コレどうするんですかー?」

「あー? あ、これね。お前、何したんだよ」

 ずいぶん口のきき方が違うんじゃないのー? ちょっとムカッ!

「別に」

「おっ、かわいくねーガキ。……コレってやっぱ変なトコおしたんじゃねーか?」

と、一応って感じでガチャガチャいじり始める。

 かわいくなくて悪かったわね。――でも、この数式って…。

「オイオイ、そんなにむくれてっと本当にかわいくなくなっちゃうぞー」

 あ……? なんなのこの軽さは。

アマカーテアの兵士って一体…。


「コレって何なのかな?」

「んー、多分昔のプログラムかなんかだろーな。ほら、ここのナンバーが五ケタだし」

 昔のねぇ。じゃ、ちがうのかな? うーん、でもやっぱりコレって……

「何ボケてんの? あ、お前さ、彼女がやってたトコ使えば? これほっといて。あとでなおさせればイイんだからさ。じゃ、いこうか?」

 最後はもちろんポチに向かって。そして二人でさっさと行ってしまう。

 あらら、本当に行っちゃったよ。ポチ、大丈夫かなー?

 うわー、肩に手なんか回しちゃってるよーっ。

 ポチが肩越しに振り返ってウインクした。

 あはは、今、思ってたこと通じちゃったのかな。

 さてと。ポチの席に行ってお仕事お仕事。


 そして、それから数分後……。

 部屋のすぐ外で派手な爆発音が起こった。


   side★masayuki


「いてっ」

 ゴン、という鈍い音とともにダンは低く声をあげた。真幸はそれを振り返り

「やっぱりダンにはムリみたいだね」

と言った。

 ここは通気孔の中。とりあえず“前線派遣”から逃げ出そう、ということになったのだが、ダンには少々狭すぎたようだった。

「よし、ダン。お前は出ろ」

 レットがサラッと言うとダンは顔をしかめた。

「単独行動かよ。ま、しょうがないか。わが軍は少々人手不足だもんな。わかったよ」

 次に出口を見つけたら別行動ということで、やおら作戦会議が始まった。

「ひとつデカイ問題は、セーラとどうやって連絡をとるか、だよな」

 ダンからセーラの話が出たので、レットはちょっとほっとした顔を見せた。

「ああ、やっぱりこっちから騒ぎを起こして……」

 その時真幸が口を開いた。

「さっき思い出したんだけど、それってアルテミスのことじゃないかな?」

「アルテミスー? なんだそりゃ?」

とダン。レットもぽかんとしている。

「よくはわからないけど、ロムのところにいるとき、ちょっと聞いたんだよね。ココってさ、女性がほとんどいないじゃない? それなのに一ヶ所だけ、かなりの数の女性がいるらしい場所があるんだよ」

「ホントかよぉ!? あっは! やったなマサユキ! えらいぞ、お前」

 ダンに大きな手で頭をくしゃくしゃにされ、真幸は顔がほころんでしまった。

 まるっきり子ども扱いだなぁ……。ま、しょうがないか、ダンから見ればね。

「もっと早く言えって」

 レットはクールに言ったが、真幸はそのアクアマリンの目が輝いてるのを見逃さなかった。ダンが言った。

「でもなんだってそんなに女がいるんだ?」

「えーと、偶然耳にしたんだけだよ。ホント、運がよかったんだ」

 あっ、アブナイッ…

 まさかナンパ専用女性探知機付きの時計持ち歩いてる、なんて言えないよなー。

 マリノと美来に知られたら殴られそー。

「ま、運はいいほうがイイゼ。遊びじゃないんだ。死ぬ気がないなら、これ以上ついてくるな」

 突然のレットの言葉に、真幸は瞬間目を見開いた。

「な! レット、いまさら何言い出すんだよ」

「俺は本気だ」

 レットは冷静な口調で続けた。

「リックは夢のお告げだのなんだのって信じきっている。俺だって、お前らの協力には心底感謝しているよ。でも、お前だって人間だろうが。俺は兵士でもない人間まで死なせたくないんだ」

 真剣だった。

 真幸はダンを振り返った。ダンの瞳も真剣だった。

「今ならまだ間に合う。真幸一人なら抜け出せる。シェルターまで行けば、美来がまっているはずだ。トニーもロティーもいる。マリノもポチも助けるよ、必ず」

 二対一かよ……。狭い通路に沈黙が流れた。


   side★Marino


 派手な爆発音。

 あたしは、一瞬何が起こったのか理解できなかった。すさまじい音、セーラの悲鳴。誰かの怒鳴り声。煙――あたしは突然咳き込んだ。涙が出てくる。

 外に出なくちゃ。


 慌てて、突然、空中に放り出された。ヘアピースが落ちるのがわかる。

 痛いよー。もろに転んじゃった。あーもう情けない!

 腹ばいのまま後ろを振り向くと、段差があった。うう、立てない。たったの三段で!?

 足がしびれたように動かない。大丈夫、しばらくすれば――くすん、誰か。ポチッ。

 あ、でもポチはさっき変なお兄さんとお茶のみに行っちゃって……。

 その時、誰かの気配を感じたけど、顔を上げた瞬間、さっとかけていてしまった。

 あたしはちょっとの間信じられなかった。 今、手を伸ばしかけて、やめた……? あの、白にモスグリーンのスカート。――ガーティ?

 また爆発音が響く。

「いや! 北くん!」

 それが声になったのかわからない。もう頭の中は恐怖でいっぱいだった。

 部屋にはもう誰もいないみたいだった。

 その時、誰かが部屋の中に入ってきた。煙でもう目が開けてられない。その人があたしを抱える。

 誰? …北くん? ああ、そうか――見捨ててなんかいなかったんだ。北くんをつれてきてくれたんだね、ガーティ。


 そしてあたしは、それきり意識を、失った。


   side★masayuki


 そのころ当の真幸は――

「俺は行くよ、レットと一緒に行く」

 レットが真幸を見た。真幸もレットを見返す。

「レット、あんたは1つ大きな誤解をしている。俺たちはな」

 真幸は大きく息を吸ってから続けた。

「俺たちは魔法使いなんだぞ!」

 レットがきょとんとしている。ダンが目をくりッとまわした。

「ちょっと待って」

 真幸はシャツの中から、糸のように細い金鎖を引っ張り上げる。三日月型の小さなロケット。俺の自信作。カチッとかすかな音が反響する。それを手のひらにのせ、二人の前につきだした。

「これ、なーんだ」

「時計、だろ?」

 さすがに反応が早いレット。ダンも軽く頷いた。真幸はすっと手を引っ込めると、すぐに手を差し出した。

「これなーんだっ?」

「えっ、コレなんだよ」

「発信機の受信機みたいに見えるぞ?」

「そ。でもちょっとちがーう。探知機。ほら、この光ってる点は人間。コレが俺たちね。もちょっと範囲を広くしてー。……お、赤い光。レット、おめでとう。わりと近くに女性がいるよ」

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