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chie
「でもすごいのね、セーラ。セーラが何を言っても相手を納得させちゃうんだもん」
セーラはクスッと笑いながら
「今まで苦労したのよ。ぎりぎりに見える線から、確実に成功させる作戦をずっと作ってきたの。はじめは半信半疑だった見たいだけど、百パーセントの確立で成功させてきたから、今では誰も疑ってないはずよ。成功すれば確実に手柄を手にできるんですもの」
周囲には聞こえない、でも私には届くような微妙なトーンでセーラは、さもなんでもないように話す。
「てがら?」
唇だけ動かすとセーラは少し目を細めた。
「つまりね、私たちは高官部のブレインなのよ」
うーん。わかったようなわからないような……。
えっと、つまり、ここで立てた作戦はトップの人たちが使って、成功したら自分の手柄にしてしまうってこと? えー、それってすっごくズルイ!
思わず大きな声をあげそうになったあたしをセーラが制する。
だって……と不満を目にいっぱいこめて見ると彼女は少し笑って私を席につかせると、自分の位置に戻っていった。
ここで不用意なことはなしちゃいけないんだよね。
テレパシーでも使えたらいいのに。
あたしは少しやけくそな気分でキーボードを打ち始めた。
side★Lee
「ミスター・リー。この本はなんですか?」
十二、三歳の少年が一冊の古い本を手に取り首をかしげた。
「ああ、それ。途中で拾ったんだ」
窮屈なのど元を気にしつつ、少年をチラッと見てリーは答えた。
本番でぼろを出さないよう、さっき失礼なことを言ったねえちゃんの作ったレポート暗記に忙しく、“本物の使者”をかまってる暇はなかった。
頭脳集団――通称アルテミス(月の女神)たちの手により二人は一緒にいいるのだった。
すでにロムステルには到着の知らせは入っていたが、スケジュールの操作により、謁見は二時間後ということになっていた。
「ねえ、ミスター・リー。これ見てもいいですか?」
「はいはいどうぞ」
使者の話などろくに聞かず、リーは適当にあしらった。
くっそー。なぁんでこんなガキの代わりなんて俺がしなくちゃならないんだよ。
実はリー、年下の使者が自分より背が高いことが、とても気に食わないのである。
もっとも当の使者のほうはといえば、そんなリーの心中を知ってか知らずか、リーの許可を得て、その本を読み始めているのだが……。
リーはマニュアルにかかれるあいさつ文の暗記に取り掛かる。
えっと、まず部屋に入ったら礼をして、挨拶だろ。んで……
ざっと目を通し、思わずレポートの上に突っ伏してしまう。
こんなの簡単にいえば、月の総帥からロムのおっさんへの命令じゃないか。まったく。
こんなこと直接「月にこい」っていえばいいのになぁ、めんどくせえ。
頭をぽりぽりと掻いて、それでも暗記にいそしむ。一応重要な立場だし、女装するよりましだからな。
スカートをひるがえす自分を想像して寒くなる。
ケイも女装したのかな? ケイの場合武器がなくても何とかなるだろうけど、セーラ達が心配だよなぁ。ガーティなんて、いかにもかよわそうだし。まぁ、トニーの妹なんだから、土壇場には強いのかもしれないけど。やっぱ、一番心配なのはマリノってコだよな。あいつのせいで、結構ややこしくなってる気がするし。能天気そうだしなぁ。大丈夫だといいけど……。
そこまで考えてはっとする。やっと使者のやってることが目に入ったのだ。
「お前、何してるの?」
リーが声をかけると、使者は顔を上げて首をかしげた。
「この本を読んでるんですけど?」
「なに?!」
思わず大声になったリーに使者は慌てた。
「え、だって、ミスター・リー。あなたがいいって言ったから…」
「そうじゃなくて、お前、それ読めるのか?」
「はい、読めますけど?」
それが何か? と言いたげな使者にリーは呆然とする。
「あ、あのさ、それ、訳せる?」
おずおずとリーが聞くと、使者はにっこり笑って肯定した。
「はい。前半の予言書のほうはぼろぼろで難しいですが、後半は大丈夫です。訳しますか?」
使者の申し出に、リーは一も二もなく頼み込んだ。
「頼む!」
「はい。僕も使者より、こんな文学関係に携わってるほうが性にあってるんですよ。――えっと、後半部はアマーテアプロジェクト……ですね。へぇ、アマカーテア軍と同じ名前ですね」
かくして使者はスラスラとその文を、その重要性などまったく気がつかずに訳し始めたのである。
約一時間後――。
「そろそろいいかしら?」
アルテミスの女性が入ってくる。
「準備OKだよ、いつでもいいぜ」
リーは心なしか、頬を紅潮させて言った。
すごいぞすごいぞ。
大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出す。
左のポケットには使者が約してくれた音声対応メモリが入ってる。さぁ、落ち着かなくちゃ。せっかくのラッキーが逃げちまうからな。
「さようなら、ミスター・リー。お気をつけて」
使者がふわっと笑いながら言った。
これから起きることの重要性がわかっているのかいないのか。つくづく緊張感というものがない。
そんな使者の様子に、リーは少し不安になって、迎えにきた女性にこっそり聞いてみる。
「ねえ、これからあいつどうなるんだ?」
すると女性はニコッと笑った。
「心配ないわ、すぐセーフゾーンにつれていくから」
「そうか」
少しほっとして笑い、やっと使者に答える。
「色々ありがとな。お前も気をつけて」
そして別れの言葉を告げる。
アルテミスの女性は少年達をほほえましさと切なさを溶かした瞳でみつめた。
「さあ、いこうぜ、ねえちゃん。戦闘開始だ」
章が変わるため次も書き手は同じですがページが変わります。
ノート1ページ分なので短いです。




