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「お、俺も女装するのか……?」
リーが顔を引きつらせた。セーラさんはただにっこり笑った。
「や、やめろ。絶対ヤダ! だ、第一俺、背が足りねぇから、こいつらから浮いちまうだろ? そうだ、ケイならばっちりだぞ。だから頼む。やめてくれ!!」
あまりのリーの慌てぶりに、セーラさんは呆気に取られてる。
「コンプレックスやケイを持ち出してまで抵抗するってことは、相当いやなんだな」
上総がボソッと言った。
「コンプレックスやケイまでって?」
ちょっと不思議に思って聞き返すと、上総はチラッとあたしを見て、
「リーは身長にコンプレックスを持ってるんだよ。普段は口にしないけどね。ケイのことは格別慕ってるしさ」
と小声でささやいた。
そういえば、リーって百五十センチそこそこしかないみたいだけど、まだまだ成長期なのにねぇ……。ま、男の人はたいてい女装するの嫌がると思うけどね。ポチ達だって、最初は青くなってたし。
「ねぇ、上総は今女装してるのいやじゃないの?」
素朴な疑問。
上総はクスッと笑って、
「面白いよ。クセになりそうだわ♪」
ヒクッ
上総のわざとらしい女言葉とその内容に思わず硬直。
ク、クセになりそうだなんて、そ、それだけはやめて。女のあたしより綺麗になっちゃう上総なんて――じゃなくて、えーっと、つまり……
「そんな癖持ってたら、ロティが気の毒よ!」
思わずリキんで言ったら、上総に白い目で
「冗談だ、バカ」
と言われてしまった。
趣味の悪い冗談だよー。
チラッとポチを見ると、彼は視線に気がついてパチッとウインクをしてきた。
やーん、色っぽいじゃないよー、ポチのバカ!!
「そうねぇ……」
ふいにセーラの声が聞こえ、はっと我に帰る。
「別にリーは女装しなくても大丈夫かもしれないわ」
「本当か?!」
セーラは少し考え込み、近くにいた女性に何かささやいた。その女性は頷くとそのまま奥の部屋へといってしまったんだけど、なんだろう?
「で、俺はどうすればいいわけ?」
ケイが聞くと、数人の女性達が彼を連れて奥の部屋へと彼を連れて行ってしまった。結局ケイも女装なわけだ?
ケイの変装の間、セーラに耳打ちされた女性がリーに何か言って一緒にどこかへ行ってしまった。あたしは少し気になったけど、セーラの話のほうが大変だったので、すぐに忘れてしまった。
☆
「セーラ様、Bブロック、第四セクションより召集の命が下りました」
まだ小さな、十歳そこそこ位の女の子が伝えに来た。その声はいくらか震えているみたいで、それを見ていたら、こちらが不安がってる場合じゃないような気がしてきた。
「わかりました。ご苦労様、レイ・ファン。十分後に伺うと返事を送っておいてね」
「はい、セーラ様」
「クスッ。あなたの"様"付けは直らないようね」
「だって、セーラ様はセーラ様ですもの――どうかご無事で」
レイ・ファンはくるっとこちらを向くと
「皆様も、くれぐれもお気をつけて」
と言って、深くお辞儀をした。
「君もね」
上総が優しく言った。
「セーラ様、御武運をお祈りしております」
そう言ってもう一度深々と頭を下げると
「また、お会いしましょう」
といって出て行った。
セーラさんは何も言わなかった。それは、もう二度と会うことはないだろうって言ってるような気がして、また少し不安になった。
それでも、あたしは頭の中でセーラから言われたことをおさらいして、とにかく落ち着く努力をした。
えーっと、まず、幾班かに別れてて、あたし、ポチ、上総、ケイ、セーラ、ガーティの班がロムおじさんのところに行くわけで……。なんか毎週一回、違うメンバーを連れて何かしら特別な仕事をするらしいんだけど、今週はすでに一回やってるらしいのね。でも、反乱が起こることからたぶん召集されるだろうって事だった。ガルディアをつぶすチャンスだからね。それからリーの班。これは何をやるのか、教えてもらえなかった。それと、脱出ルートを抜ける人たちとかetc……。
とにかく、あたし達はメインコンピュータを前にしなきゃならないし、気づかれないよう、ひたすらさりげなく事を成し遂げなくちゃいけない。みんなの命がかかってる。
とにかく、あたしには北くんを助ける使命があるわけで……。
それにしても北くんてば、おじさんに気に入られているらしい。……うーん、大物。
「お嬢さん、落ち着いてくださいね」
ポチが耳元でささやく。
うーむ。
「あのね、ポチ。大丈夫だよ、いくらか落ち着いてきた。でも、その格好であたしのこと、お嬢さんて呼ぶの不自然だと思うよ」
「え、ああ、じゃあ……マリノ、ですか?」
一瞬胸がドキンとなるのを抑えて頷いた。女装してるポチにドキドキするのもなんだけど、その声、どうにかしたほうがいいと思うなぁ。




