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maki
「これからの俺たちの行動だが、二手に分かれないで、一気にアマカーテア本部をつきたい。もうそろそろ行動を開始してもいいだろうと思う」
レットがいつもの冷静な口調で説明をする。
みんなその言葉にうなずく。そこへ、少しその場を離れていたトニーが息せき切って駆け込んできた。
「ケイが、どこにもいない!」
「武器部屋は見たのか? あいつはいつもあそこに……」
「見たよ、ちゃんと。俺、ケイはリーの後を追って、本基地のほうに行ったと思うんだ」
レットの言葉をさえぎり、トニーは不安いっぱいの声でそう言った。
トニーに限らず、みんな感じていることだった。
ケイはリーを本当に大切にしていて、本当の弟のように接していた。その事はみんなが知っていることだった。
リックが思い立ったように立ち上がり、レットに向かって言った。
「やっぱりさっきの作戦には反対だ。本基地にはリーとケイがいる。それに上総も。それだけじゃない。マリノも真幸もポチだっている。シークレットラインで彼らの無事を知るまでは、動かないほうがいい」
しかし、それにダンが反論する。
「シークレットラインはこっちからアクセスできないんだぞ! いつ来るかわからない連絡を待てというのか。そんなことをしていたら、この機会を逃しちまう!」
そして、普段めったに口を開かないトニーもダンに賛成した。
「それに、シークレットラインのリーダーがセーラだってことがもし本部のほうにばれたら、セーラの命が危ないよ。ここは早めに動いたほうがいいよ」
二人から批判を受けたリックだが、短気な性格のせいか我慢できず
「じゃあ、みんなを見捨てるのか。内部のことはわずかな情報しか流れてないのに、そんな状況で本当にうまくいくのかよ」
と、吐き捨てるように言った。
リックはこの反乱が失敗したら、もう後がないと思っていた。
だから、その分の不安がリックに押し寄せてきたようだった。
今まで黙っていたレットが突然口を開いた。
「いい加減にしろ。リック、トニーの情報網を甘く見ないほうがいい。トニーは、もう、シークレットラインの中心部の場所だってわかっているんだ。トニーもダンもこんな所で喧嘩してどうする。はっきり言ってみんなの言い分はわかる。だが、争ったところでどうにもならないだろう」
そこまで言うと、レットは少しため息をついてまた言葉を続けた。
「俺が本基地を攻めるといったのは、別に仲間を見捨てる意味で言ったんじゃない。トニーの情報によると、上総たちは現在Eブロック、リーはCブロックを抜けたらしい。次に行くのはおそらくFブロックだ。そこで上総とリーは合流すると思う。Fブロックには、セーラがいるんだ」
レットは少し顔をゆがめた。
それはセーラに逢いたい気持ちを抑えきれなかった本心が、少し表れたためだった。
だが、それも一瞬で、レットはさらに続ける。
「ケイは頭がいい。ラッキーなことに運もついてる。おそらくリーとは合流しているはずだ。目標はFブロック。そこでみんなと合流し、シークレットラインとアクセスする。そマサユキを救出し、Bブロックをたたき……さらに、アマカーテア中枢部であるAブロックをたたく!」
みんなは黙っていた。
改めて彼がリーダーだということを認識させられ、その器に声も出なかった。
レットはかすかに微笑した。
「肩の力を抜いたほうがいい。常に自分は一人じゃないことを自覚しろ。振り返れば仲間がいる。そう思って戦ったほうが楽だ」
一人廊下で一部始終を聞いていた美来はほっとしたように肩をすくめ、また例の解読に取り掛かるのだった。
side★marino
Fブロック内にある、とあるサロン風の部屋では、空気が一瞬揺らいだように感じるほど、その場にいた全員が驚いていた。
今まで見た事もないような、絶世の美女が現れたのだ。
あたしはともかく、さすがのケイも声も出せない状態で、リーや上総までも、石のように固まってしまってピクリともしない。
とにかくその人は美しい人だった。
端整な顔立ちに、いやみなく目立つ白い肌。すらりと伸びた手足には、程よい具合の筋肉がついている。さらに、その美女を引き立てるかのような、シックなブルーのドレス。
その姿は妖艶さを感じさせられた。
やっと回復したらしいケイが、さっきのようにその美女に話し掛けた。
「お嬢さん、失礼ですが、お名前をお聞かせ願えませんか」
すると美女はてれたように少し下を向いて、はにかんだ笑顔を見せた。
「ポッセリアムです。ポチと呼んで下さい」
赤い唇から出た声は、ポチだけどポチじゃない。
ポチの浅黒い肌はどこ? この白い肌っていったい……?
セーラがポチを隣に座らせて説明をしてくれた。
「綺麗でしょ、この肌。もとは特殊合成樹脂であったシリコンを何年か前に化学変化させて作ったネオ・シリコンよ。混ぜ合わせることによっていろいろな色を作れるの。ただし、二日間だけね。水にも強いし、変装には欠かせないのよ」
あれがポチだということはわかった。
でも、やっぱりポチだとは思えなかった。
はじめて会った人みたい……。
しかも、女のあたしよりずっと綺麗だなんてショックだわ。
あたしがボーっとしてると、セーラさんがあたしの顔をまじまじと見てにっこり笑った。
「やっぱり思ったとおりね。あなたにはオレンジの口紅が似合うわ。とても健康的に見えるオレンジは、あなたみたいな可愛い子にはぴったりね。とても似合うわよ」
あたしは熱くなっていく頬を両手で抑えた。
ポチに嫉妬してるのがわかっちゃったのかなぁ。
チラッと横目で上総を見ると、彼(今は彼女?)は皮肉な笑みを浮かべていた。
ふんっだ。どうせ、あたしは美人じゃないですよ。
あれ? そういえば、上総ったら女装したらよけいに誰かに似てる……。
誰かに……
「あ、上総、美来に似てるんだ。そっくりってわけじゃないけど、なんか似てる」
あたしの言葉にリーとケイは、まじまじと上総を見た。
「ホントだ……似てる」
「うん、似てる。美来ちゃん美人だからなぁ」
ケイが表情を崩す。
ケイって、ホント、美人に目がないのね……。
「美来って誰だよ」
上総があたしに向かって言った。
なんかこうしてると、美来と話してるような気も……。
「美来って言うのはあたしの親友だよ。さっき話したでしょ? ケイのいうとおり美人だよ。ちょっときついトコもあるけどね」
上総は美来に興味を持ったみたいだった。
「さて、次はリーとケイね」
凛としたセーラの声に、リーとケイは恐る恐るセーラを振り返る。
「誰が誰だかわからないぐらいに化けさせてあげるわ」




