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chie
もしかして、もしかすると、レットって言う人は、セーラの大切な人なのかもしれないって思った次の瞬間、そんな切ない空気なんて吹っ飛ぶようなことが起こった。
ウィンと奥の扉が開いて、背の高い涼やかな印象の美女が出てきたの。日本風……っていうのかな? 着物のような、でも少し違うような不思議なデザインのドレス。
凛とした、とてもきれいな人。
「すげえ美人」
リーが呆然としてつぶやく。
「お嬢さん、よろしければお名前をお聞かせ願えませんか?」
いきなりケイがナンパをする。
これさえなけりゃなぁ……とリーがつぶやくのが聞こえた。
その美女は一瞬目を見開き、次にムッとしたように口を開いた。
「何の冗談だ、ケイ?」
こっ、こっ、この声! え~? 上総? うそぉ!?
「上総?!」
リーとケイも素っ頓狂な声をあげる。
「そうだよ」
ぶすっとして上総が言った。
あーん、せっかくの美女が声と態度でめちゃくちゃ。
「上総ってば、せっかくうまく女装してるんだから、もっと気をつけてよ!」
思わず叫んじゃうわよ。
「え? マリノ?」
上総がこっちを向いてきょとんとした。
「そうよ」
「―――全然別人」
「変装だもん」
すると彼はニヤッと笑って、
「いつも変装してれば」
だって。ふーんっだ。よけいなお世話よ!!
むくれたあたしをクスクス笑って、上総はリーとケイを紹介してくれた。
「ところでポチは?」
「―――それが、ちょっと手間取ってるみたいで」
ふーむ。
見掛けがほっそりしてる上総と違って、ポチはあれで結構体格いいからなぁ。力も強いし……。結果がちょっと怖いなぁ……。
そう思いながらチラッとケイを見ると、この人もかなり綺麗な人よね。華奢だけど、軍服がピシッと決まってて、かっこいいなぁ。
と、ふいにケイと目があってしまった。彼は軽くウインクして手を振ってくる。お茶目な人だなぁ。
リーのほうはあたしより少し年下ね。十センチぐらいあたしより背が低くて、滅茶苦茶身が軽そうな男の子。
あたしは再びテーブルについてお茶を飲むことにした。
sode★masayuki
「チェックメイト」
少年―――真幸が言った。
去年のアマカーテアのチェス大会チャンピョンであるセディ・ロムステルをあっさり負かしてしまったのだ。
勝負は二勝五敗。
勝手調子付いたと思うと負け、負けて気分が腐ると勝つ。
どうも少年は計算づくで、意図的に勝敗を分けているらしいのだが、ロムステルはこれに気づいていないようで、ただ少年の頭のよさ、技術力などをすっかり気に入ってしまったのだ。
これは使える―――と。
少年の左手には、妙な考えを起こさないよう起爆装置付のブレスがはめてある。少年の利き手は「左」のようなので、自分で細工はできない。
少年はもう一度やるかと聞いてくる。
もちろんと答え、腹の中で計画を立てていく。
アマカーテア軍副総帥、ロムステルの考えが甘かったことに気づくのはもう少し後のことになる。
out★side
美来は黙って救急箱を持ってくるとリックの手を取る。リックはえっ? と言う感じで美来を見た。
「血が出てるの!」
ぶっきらぼうに言って、彼が壁を殴りつけてできた傷の消毒をする。
「ああ、本当だ。気がつかなかった」
「―――バカね。利き手をむやみに傷つけて」
ササッと包帯を巻き、最後に軽くその手をたたく。
「オレのこと、心配してるわけ?」
笑いつつリックが言うと、美来は少し黙ってから
「ばか」
と一言言って救急箱を片付ける。その顔は心持ち赤くなっていた。
「さーてと、解読の続きやらなくちゃ」
大きな声で言って、再びボードに向かう。
程なくダン達が美来に頼まれていた資料を持って戻ってきた。
「ほら、これだ、お嬢ちゃん」
カタッと小さなディスクを置く。
「ありがとう、ダン。ごめんなさい、わがまま言って」
ダンは軽く笑って気にするなと言った。彼は美来の冷静そうでいて、実はかなり無鉄砲なところが気に入ってしまったのだ。
「A・・・アルカディア(Arkadia)、理想郷? ああ、なるほど。で、Nがナロード(Narod)民衆か……」
「どうだ、わかるか?」
「ん。起源は二十一世紀末までさかのぼったアマカーテア・プロジェクトみたい。この資料で行くと言語統一される前だから、言葉はばらばらだけど、これってキー・ワードになってるみたいよ。―――Sは・・・ソフィア(Sophia)英知。Iは同じ言語ね。えっとイカロス(Ikaros)。これは……」
「月基地の名前だな」
「―――つまり、これらを入力するための何かがあるはずなのよ。地球内だといいんだけど」
そこでいったん言葉を気って、美来はため息をついた。
「アナサニイ……ってなんだろう……? これがメインキーのようなんだけど、どの言語にも当てはまらないのよね……」




