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maki
side★kei&Lee
「結構ざわついてきたな。そろそろリーもその軍服に着替えろよ」
C区のある倉庫で、声を潜めて会話を交わすリーとケイ。
先ほど倉庫の前をたまたま通りかかった正規兵を一人捕らえて、軍服を失敬した。
リーはそれにのそのそと着替える。その横には正規兵が伸びている。
ケイはその間、リーが持っていた本に目を通していた。
リーには読めない古い文字でかかれたタイトルは―――
「予言書だってさ」
リーはかすかに顔をしかめる。
その時には、もうリーは軍服姿で、正規兵の両腕を、その辺から拾ってきた縄で縛る余裕さえあった。
「予言書? 中にはなんて書いてある?」
「……ダメだ。二二五六年だけしか読めない。タイトルは何十年か前ぐらいの、学校で習った程度の文字で書いてあるところからみて、おそらく表紙だけ後から新しくしたものらしいが、中は読めたもんじゃないよ。オールド・イングリッシュかな……」
ケイはパラパラと予言書と思われる本をめくって、リーに渡した。リーも同じように本をめくった。
「中どころかタイトルも読めないよ。やっぱり四つの年の差は大きいなぁ。ケイに勝てるものなんて何一つないかも……」
リーはそういってがっくりと肩を落とした。
リーは常にケイを尊敬していて、そしてその一方ではいつか追い抜きたいと思っているようだ。
そんなリーを察してか、ケイはリーを優しく慰めた。
「リーが俺の年になれば、今の俺と代わらないさ。それに、今、リーが俺よりもなんでも知ってて、何でもできるやつだったら、俺の立場がないだろ」
リーはそれを聞いて自信がついたのか、よしっと気合を入れて、倉庫のドアをそっと開けた。
少しずつ顔を外へ出す。近くには誰もいないようだ。カメラも設置されていない。
リーはケイに合図して、二人ともども身軽に通路へ出ると、ケイが慎重にドアを閉めた。
out★side
カチャカッチャ…カチャ………ピー
「やだ、またエラー?」
部屋に一人残された美来は、超人的な速さでキーを打ち込んでいた。他のメンバーは美来の出したデータをもとに作戦会議を繰り広げているはず。
「おかしいわね。古いせいかしら? 使い方は間違っていないと思うんだけど……」
厳重ロックしてあるアマカーテアの情報を引き出した張本人のセリフとも思えないことを口にする。
「また……」
ため息をついて手を休める。
おかしいなー。このラインて妨害されてるのかしら。だとしたらかなり特殊な感じだけど……。
そう思った瞬間、画面が急に切り替わった。
こわれた?―――ちがう、外部からのアクセスだ!!
「ちょっと、誰か来て!」
大きな声をあげると、真っ先にリック、そしてレットが駆け込んできた。
「どうした、美来。何かあったのか」
「これを見て!」
美来がさした画面には
『反乱軍に告ぐ。ゴールディにて反乱あり』
「シークレットライン……」
リックがつぶやく。
そして次々に詳細な情報が入ってくる。
「すごい。どうしてこんな……」
こんな情報が……
この情報伝達網が最悪な時代、次々に出てくるデータは美来の記憶とほぼ符合する。
ほぼ間違いのない、正確なデータだ。
そしてさらに驚いたことに、アマカーテア内部の情報まで!
「上総たちを保護?!」
『D区コンピューター占領中。―――FROM.SARA』
「セーラ!?」
リックは驚いたように叫んでレットを振り返った。レットはリック以上に驚き、そして動揺しているようだった。
「セーラって? 知り合いなの?」
何もわからない美来にリックが説明する。
「セーラはだいぶ前に行方不明になった、レットの恋人だよ。まさか、こんな……」
リックの言葉の途中でレットがかすかに笑い出した。
「やってくれるよ、セーラは……。でも、無事でよかった……」
そこまで言うと、いつもの冷静な表情はどこかへ消え去り、レットは崩れるように床に座り込んだ。
「頼む。一人にしてくれ」
美来とリックはレットを一人にするため部屋を出た。
「冷静じゃないレットなんて初めて見た」
「あいつはもっと頼ればいいんだ。リーダーってこと気にして一人で頑張ろうとするから……。俺だって副リーダーなんだぞ。少しくらい俺に頼れよ」
よほど悔しいのか、リックは壁に右手を乱暴にぶつけた。
side★Marino
セーラさんの話を聞き終えたあたしは、とりあえずホッとした。
何日か前までのほほんと平和な学生でいて、いっつも母星史学では課題が出されるほど成績が悪くて。あたしって、何も知らなかった。
こんなに苦労して、みんなアマカーテアを倒そうと団結している。
それはあたしにとって、ほんとは一つの歴史に過ぎないんだけれど……。
なんだかひどく胸が苦しくなってしまって、思わずセーラさんを抱きしめてしまった。
「やだ、どうしたの? 私何か変なこと言ったかしら?」
セーラさんはそう言って、あたしの頭をぽんぽんと軽くたたいた。
「セーラさん、侵入者です」
ガーティがセーラさんに耳打ちしたる。
彼女は顔色一つ変えず、コンピュータ・ルームに行った。
あたしも気になってついていこうとしたけど、ガーティにとめられてしまった。
「ごめんなさい。コンピュータールームには限られた人しか入れないのよ」
ガーティが申し訳なさそうに言った。
すると奥のほうから
「なんだよ、あんた達!! オレらは絶対つかまんねーぞ!」
と元気な声。
ガーティとあたしはびっくりして顔を見合わせる。
そしてすぐに声のするほうへと駆けつけた。
そこには二人の男の子がいた。
一人はやたらと威勢がよくて、身長はあたしより低そう。もう一人はきれいな顔立ちをしていて、ガーティと並べば、もうそこだけ別世界のような気がするほど。
あたしは確かに二人を知っていた。
リックに見せてもらった写真の中にこの二人もいた気がした……(でも、ここって男性禁止区域じゃ?)。
「もしかして……リー?」
上総が呼んでいた名前は確かそうだったと思う。基地の中にいるとすれば、二人のどちらかがリーのはず。
そして、この元気な声にはしっかり聞き覚えがあった。
二人とも驚いているようで、目を見開いていた。そこへセーラさんがやってきた。
「リー、ケイ、久しぶりね。みんな変わりない?」
リーとケイと呼ばれた二人は、セーラさんを見てもっと驚いたようだ。
「セーラ、無事だったのか」
「ケイ、上総もココにいるのよ。むこうの部屋にいるわ」
どうやら背の高い方がケイとらしい。ケイはリーを連れて上総がいると言う方向へ行った。
「あの侵入者、セーラさんが案内したのですか?」
今一状況がつかめないガーティだったけど、セーラさんが反乱軍の一人だと知ると、彼女は顔を赤らめた。
「モニターを見たらリーとケイがいるんですもの。ちょうどいいからこちらに呼んでしまったわ」
セーラさんはお茶目に舌を出す。
「ケイはね、レットも一目置いてる人物なの。ああ、レットって言うのは反乱軍のリーダーよ。ケイは今にすごいやつになるっていつも言ってたわ。実際ケイは何でもできる人だけど」
そう言って、セーラさんは少し遠くを見るような目をした。
あたしには思い出を懐かしんでるように見えた。
セーラさんは儚げで消えてしまいそうで、またあたしは抱きついてしまいたくなった。




