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chie
「そうだね。いつかいってしまうんだね」
「うん……。ごめんね」
ロティが少しうつむくと、おばさんはひょいと肩をすくめて
「ま、あんないい男たちが迎えに来るなら仕方ないね」
と、冗談めかしていった。
ロティも思わず笑い出す。
おばさんに抱かれた幼女が、おばさんの服を少し引っ張った。
「ハイハイ、ダニエル先生のところに行こうね。じゃあね、ロティ」
「ん、さようなら。お大事にね」
おばさんが言ってしまうと、少し考えて、お茶をいれることにした。
第三シェルターの中は一つの町のようなつくりになっている。マンションや商店と言ったものが、一応整理はされているものの、所狭しとたっている。一件穏やかに暮らしているように見えるが、その実、第一、二シェルターと比べ、生活水準には天地ほどの差がある。
ロティはため息をついた。
「兄さん、上総……どうか無事でいて……」
「ロティ、何か言った?」
ルームメイトの一人が声をかけてきた。
「ううん、なにも」
不安な表情をさらりと消し去り、微笑して答える。
――私は、私のできることを精一杯やろうと思いながら。
out★side
ふう、と美来は息をついた。
「どうだ、わかりそうか?」
リックが美来を覗き込んでいった。
「そうね。少しだけわかったことはあるけど……」
「どんな?」
「まずね、これ日本語みたいなの」
「にほんご?」
「うん、それもすごく古いやつ」
世界で言語統一がされて久しく、日本語と言っても、自分の時代だと昔の名残で名前に用いられるだけとなっていたので、美来はそれだけで、多少苦労を強いられることになったのだ。
「それから? お嬢ちゃん」
ダンがのっそりとコーヒーを差し出して続きを促す。
「ありがとう、ダン。えっと、それから”うた“なのね」
「うた?」
「うん、いまだすけど……これ」
「あ・を・に・よ・し…?」
「あをによし 奈良の都に咲く花の 匂うがごとく 今盛りなり――万葉集かな」
「これがうた? 呪文にしか聞こえないぞ?」
「まあね。これは和歌っていって、一定のルールに基づいて作られてるの。意味としては華やかな都を懐かしんでるものだけど、それはおいといて、問題はこっち。――この歌のルールって言うのが、五.七.五で音を区切って作るんだけど、この区切られた頭をローマ字で取っていくとa.na.sa.ni.i、アナサニイ。で、さらにアマカーテアから引き出した情報と」
「ちょっと待て。まさかお前、あそこのコンピューターに手を出したのか?!」
「そうよ! 他に方法がなかったし。ああ、二人ともそんな顔しないで。大丈夫よ。痕跡残すようなへまはしてないし。ダン、お説教なら後で聞くから、お願い、今は私の説明を聞いて。この五つの単語が何を意味するのか、私、正直言ってよくわからないのよ」
二人の男は顔を見合わせ、とりあえず言うことを聞くことにしたのである。
side★Marino
「ゲート62」
「なに?」
「ゲート62って言ったのよ、上総。どうにかF区に入ったみたい」
ここを抜けると、すぐおじさんの部屋があるって所ね。
緊張してるせいで、自分の少し語調がきつくなってるのを感じる。
「F区って何があるんですか?」
ポチがいうと、上総は少し首をかしげた。
「それが今一わからないんだ。普通、ただ一介の兵士が来れる所ではなかったのは確かなんだが……。禁止区だったんだ」
その禁止区にすんなりは入れたのはなぜだろう??
そう疑問に思った瞬間、あたしの体を誰かがグイッとひっぱりこんだ。
きゃぁ!
な、なんなの、一体?!
驚いて、次に呆然。
だって今、あたしの目の前には様々な女性がいて、場違いなほど華やかなのだ。
あたしの後にこの部屋に飛び込んできたポチたちも、銃を構えたまま呆然としてる。
「そんな物騒なものはしまって、上総」
めちゃくちゃ綺麗な声と共に、声に負けないぐらい綺麗な女性が歩み寄ってきた。
長い栗色の髪、赤い、体にぴったりとしたエレガントなドレス……。いったい誰?
「セーラ……生きていたのか」
上総がつぶやくように言った。
「ええ、カゴのトリではあったけど……。まあ、状況を説明するのは後にしましょう。今は時間がありません。あなたたち、ロムステルのところに行きたいのでしょう?」
「ああ、そうだよ」
「そして、捕まってる少年を助けたいのでしょう?」
あたしは、ホント言うと何がなんだかわけがわからなかったんだけど、セーラって人のその一言だけはわかった!
「北くんのいるところを知ってるの?!」
セーラはコクンとうなずいた。
「本部でのことはすべてここに筒抜けなんです。さぁ、そこまで連れて行って差し上げますわ。早く支度を。あなた方には女装していただきます。あなたもよ、お嬢さん。あなただってわからないぐらい変身してもらいますわ」
あまりのことに、あたし達は目を白黒させ、また呆然としてしまった。




