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ザッと音がして無線が切れる。
「聞こえたか?」
上総は唇を動かさず、低い声で言った。
あたしは軽くうなずく。
緊張で心臓の音がうるさい。
カメラには映ってるのかな。北くんが細工したって言うから大丈夫だよね。
だいじょうぶ。なんとかなる。信じてるぞ。
四十秒前・・・三十秒・・・二十・・・十・・・
五・・四・・三・・二・・一・・
ドンッ!!
鈍い音が響き、それがどんどんこちらへ近づいてくる! そしてドアが吹き飛んだ!!
は、派手ー!!
この装置作ったのは絶対北くんだわ。前に科学の授業でやったもん。惑星開発のために作られたM7! 近づけないところにある岩なんかを壊すために、光の屈折とか利用していく装置のミニチュア版だ。(あたしには難しすぎてよくわからなかったのよね……)
「いくぞ!」
上総が走り出す。
北くんが囮になったって言ってたけど、大丈夫だろうか?
そう思いつつ上総について走ったけど、人の心配なんてしてる余裕は皆無だった。
走っていく先々で、妨害するようにゲートが次々にシャットアウトされていくのだ。
北くんが捕まってまで助けようとしてくれてるのに、混乱した頭は正確な道をはじき出せないでいる。
この状態じゃ、外には絶対出られない!
「上総待って!」
肩で息をしながら、あたしは一つの決断をした。
「あたし、逃げるのやめる」
「何?!」
上総が目を見開く。
「この状態じゃ外に出られないもん」
「ああ、しかし」
心配気な上総の目を見て一瞬ドキッとする。あたしの安全を図ろうとしてくれてるのがすごくわかった。きっと上総一人なら切り抜けられたと思う。
きっと上総はあたしが諦めたと思ったんだろう。
でも、あたしの中には諦めなんて言葉はなく、あるのは心配と怒り。
足を引っ張ってるのはわかる。わかってるけど、自分でも子どもだってこともわかってるけど、あたし、わがままなのには自信があるからね!
「あたしたちをねずみのレースみたいに走り回らせてるおじさんに文句言ってやる!」
「なに?」
あたしは軽く目を閉じて、意識を集中させた。
パズルを組み替えるように道順を変えていく。さっきのゲートが86番、次が79番。
OK。道は見えた。
「このままじゃ外に出られない。だから行こう、上総。出られないなら、とことん中に行ってみるだけよ」
きっと、このゲートは北くんの予想外だったと思う。
どうしてこうなってるのか。情報が筒抜けとも考えられるけど、どうしても遊ばれてるような気がしてならなかった。
なにかもっと別の何かに……。
「わかった。で、どこへ行くんだ」
「Bブロック。ロムおじさんのところよ!!」
なぜ、ブロックまでわかるんだというように上総はあたしを見た。
ロムおじさんをあたし達がいた部屋に送るのに、初期の技術なら最大でも四百メートルの距離が精一杯だったはず。受信の間、監視カメラが止まってしまうってことは、おじさんを投影するのに最大出力にしてるのだろう。ってことは、あそこからぎりぎりの距離で、おじさんがいる可能性が高いのはBブロックってことになるのだ。
ただ、そこへ行くにはいくつか難関があるんだけど、見取り図で見た限りでははっきりとそれが何であるかまではわからなかったんだけど……。
「なんとかなるわよ」
迷路のような道を駆け抜け、めざしブロックの手前、Eブロックに差し掛かった時、突然あたしの足が止まった。
壁から触手のようなものが伸びてきて、あたしの足にからみついたのだ。
「マリノ!」
下りてくるシャッターをすり抜けて上総が叫んだ。
あーん、とれない!!
バスッと音がして触手が切れた。
上総が隠し持ってたナイフを投げたのだ。
でも、やだ、シャッターが閉まっちゃう。――その瞬間、誰かがあたしを抱え込むようにしてシャッターに飛び込んだ。
うっ、はさまる!!
そう思った瞬間ドンッと鈍いショック。
そっと目を開けるとそばにポチが倒れていた。
「……ポチ?」
「お嬢さん、大丈夫ですか?」
ニコッとポチがいつもの笑顔を見せる。
けど……
「その顔どうしたの!?」
思わずつかみかかる。ポチの頬に一筋の真新しい傷があったのよ!
「ああ、ちょっとかすったんですよ」
かすったって
「銃で?」
「ええ、まぁ」
とポチは笑う。
ええ、まぁじゃないってーの!! あたしは急いでハンカチを出してポチの血をぬぐう。
「ハンカチ汚れますよ」
「そんなの、かまわないから!」
やだ、痛そう……。
ポチってば、せっかく彫りの深いハンサムさんなのに、跡が残ったらどうするのよ!
「マリノ、この人誰?」
すっかり記憶のかなたにいた上総が言った。
とりあえず歩きながら紹介をする。
話しながらふっと頭の中をかする声……。
『マリノ!』
シャッターに飛び込む前、あの声はポチだった……。
「ポチ?」
「なんですか、お嬢さん」
「――なんでもない」
空耳だったのかなぁ?
ポチの心地よい声で聞こえたあたしの名前を思い出すと、びっくりしてるみたいに少し胸がドキドキした。
気のせいよ、きっと。
あたしは心持赤くなった顔を見られないように、二人より数歩先へ行った。
後ろで上総がポチにささやく。
「おまえ、さっきはマリノって呼んでたのに、どうして後はずっと"お嬢さん"なんだ?」
★
「さて、難関その一。ロボット警備ブロックね」
それからしばらく行き、あたしは二人を振り返って言った。




