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maki
「本当に来てくれるかな……」
声には出さずにつぶやく。
やっぱり不安……。
それに気づいたのか、上総は
「マリノ、リックを信用してないのか? あいつは仲間意識が強い。というより、まるで兄弟のように考えるんだ。まぁ、近い将来、実際兄弟になるかもしれないけどな」
上総は不意にポーカーフェイスを消し、かすかに笑う。
「兄弟に? どうゆうこと?」
あたしは思わず身を乗り出して聞いた。
上総がこんなやさしい顔するなんて!!
上総さんは一瞬しまったというような表情になった。
これはやっぱり。
「リックって確か妹がいたよね。ロティだっけ?」
少し答えるのをためらった上総が、あたしと視線を合わせないようにする。
「上総さんとロティってどんな関係?」
「どんなって……」
もごもごもご……
「え? なに?」
「恋人同士だよ!」
あはは、やっぱり! あたしにしては結構鋭かったな。
「さて、寝るか」
照れ隠しなのか、上総は長い足をソファに投げ出した。
「ちょっと待ってよ。もう少しその話聞かせて」
「マリノ……からかうなよ……」
「からかってないってば」
上総は仕方なさそうに、のっそりと起き上がる。
「じゃ、マリノがシャワーから戻ってきたら話してやるよ」
「うん、わかった」
あたしはシャワー室へと駆け込む。
1人上総は『マリノって単純』と感心したようにつぶやき、再びソファに転がった。
そして間もなくかすかに寝息を立てていた。
SIDE ★ 火星
暗くどんよりとした火星の空。これから年に数回しかない雨が降りそうだった。
「どうしたらいいの? 悪い予感が本当にあたってしまうなんて」
と、早瀬雪乃はため息をついた。
「大丈夫だよ。ポチもついていることだし。ちゃんと無事帰ってくるさ」
マリノの父、敬がしっかりとした口調で言った。
その言葉に少し安堵しつつも、やはり一人娘の行方不明。
気が気でないのには変わりはない。
火星内で行方不明になるのは、少々難しい。ドーム内は火星政府の管理網がめぐらせてあり、人を探す場合情報管理局に依頼すれば一時間もたたないうちに必ず探し当ててしまう。
夜遅くなっても帰ってこない娘を心配し、捜索を依頼したところ、答えは『火星ドーム内にはいない』ということだった。
ということはドームの外……ということになるのだが、マリノ達が外へ出たとは考えられなかった。
数世紀前から火星の二酸化炭素と水を使って酸素を作り出し、人類の新たな故郷として開発されてきた火星ではあるが、かなり開けてきたとはいえ、まだまだドーム外の空気は希薄で簡単に外へ出ることはできない。
それに、夏休み、金星旅行のために取ったパスポートも家にある。
多少非常食がなくなっているのが気になるが……。
――当然のことながら、まさか娘たちが過去の地球にいるとまでは考えが及ばない。
と、その時、敬の近くにあった電話が鳴り出した。
美来の母、濱田佑美からであった。
雪乃は画面に映った彼女の顔を見て、あら? と思った。何かわかったのかしらと一瞬期待するが、どうもそうではないらしい。
雪乃が声をかけると、佑美は少しためらってから一枚の紙切れを見せた。
「実は、美来の部屋からこんなものを見つけて……」
その紙には黒いペンで斜めにいくつかの数字が書いてあった。
「どこで知ったのか……。これはうちの地下室への扉を開ける暗証番号なんです」
地下室?
マリノ達は地下室にいるのだろうか?
「ええ、たぶんマリノちゃんは美来たちと地下室へいったんだと思います。でも……もしよかったら、こちらへきていただけますか。電話で話せるようなことではないんです」
「ええ、ぜひ伺います」
雪乃はいそいそと立ち上がった。
「その時、うちの息子の話もしますから……」
そういって佑美の顔が一瞬グニャリと曲がって画面から消えた。
敬と佑美は急いで玄関ホールへと向かう。
雪乃は玄関のドアをロックしながら、ふと疑問に思った。――美来ちゃんは一人っ子じゃなかったかしら?




