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maki
「連邦軍?」
美来が言うと、ケイはここぞとばかりに話し始める。
「アマカーテアと同じような組織と戦力を持っている、ガルディア連邦軍のことさ。最近アマカーテアのほうが派手にやってるからご機嫌伺いにでも来たんじゃないかな。アマカーテアと連邦軍が対立にでもなったらすごいことになるぜ。きっと、二十三世紀始まって以来の大惨事になるだろうな」
「ケイ! 冗談にしても言いすぎだぞ。今がどうゆう状況下わかってるのか」
「あ……悪い……」
レットに怒られたケイが素直に自分の非を認めた。
「とにかく三日後だ。それまでシークレット・ホームで待機しよう」
「シークレット・ホーム?」
ポチが言うと、レットは少し微笑んだ。
「ああ、これはロティがつけたんだ。あの廃屋のビルのことさ。ホームってのは暖かいものを感じるんだって。俺たちの帰る場所は、常にホームでありたいってね……。あんなぼろビルでもマイホームって呼ぶんだ。優しい子だよ」
レットがそう言うと、リックが離れたところから、
「俺の妹なんだから当然だ」
と言った。
美来がレットのほうを見ると、彼はなにやら真幸と話をしている。
よしっ、と美来はつぶやいて大きく息を吐き、ゆっくりと二人に近づいた。
「真幸、さっきはごめんね」
今まで素直に謝ることが大の苦手な美来にとって、この一言はとても勇気のいる事だった。真幸は誰よりもそのことを知っていたので多少面食らったが、すぐ優しく微笑んだ。
「美来はマリノが好きなんだろ。美来が謝る必要なんてどこにもないよ。マリノを守れなかったのは俺のミスだ。だから今、リックと話してたんだ」
美来がリックを見ると、彼は低い声で話を進めた。
「真幸が一人で助けに行きたいって言うんだ。勝手な行動は困るんだけどね……、本当は」
「本当は?」
美来は顔をしかめる。
リックが何を言いたいのかよくわからない。
「三日後、たぶん連邦軍はこない。今連邦軍はやばい立場にいるんだって……」
リックはそこでいったん言葉をきり、真幸をチラッと見た。
「マサユキがそう言うんだ」
疲れたのか、座り込んでいた真幸が立ち上がって美来に耳打ちする。
「二二五五年十二月二十五日だ。連邦軍に危機が迫るだろう」
「あっ! もしかして、ゴールディーの反乱!? 連邦軍が鎮圧したのよね、確か。そのあとアマカーテアと対立になって……」
美来は口をつぐんだ。
以前自由研究のレポートで、マサユキと共にこの頃の時代の研究に取り組んだおかげで、授業より、この時代のことは幾分詳しい。
翌年の二二五六年、アマカーテアは原因不明のまま滅亡し、地球は再び再興の時代に入る。他惑星も、自星を安定させることで精一杯だから、地球を援助することもままならず、時代が安定するのにかなりの時間を要するはず……。
そんな時代をリック達はこれから生きていかなくちゃならないんだ。
教えることなんてできるはずがない、してはいけない……。
美来は『知っている』事のつらさをはじめて知った。
「さっきの話だけど……」
リックの声に美来はハッとした。
「聞いてる?」
「ええ、大丈夫、聞いてるわ」
「OK。で、リーは割と協力的だからたぶん一緒に行ってくれる筈だ」
「一緒にって、真幸が行くの?!」
真幸がうなずいた。
でも、あたしたちは平和な火星で育ってきたのよ。頭で考えるほど、簡単にできるはずがない!
「でも、行くよ」
真幸はゆっくりと言った。
「ちょっと無謀すぎるんじゃない?!」
美来が睨むと、真幸は不思議なほど静かな眼をして美来を見た。
「でも、考えは変わらない。大丈夫、無事に帰ってくるから」
「あたりまえでしょ!」
美来はジーッと真幸を見る。そして大きくため息をついた。
「わかった、あたしの負け」
「美来」
「でも、あたしも行くからね」
「それはダメだ」
「リック!」
「後はポチに行ってもらう。美来はダメだ」
「でも!」
「とにかくダメ。留守番」
美来は根負けして黙り込む。
ふと上を見ると、さっきまでどんよりとしていた空だったのに、いくつかの雲の隙間から太陽の光がちらちらと見え隠れしている。
「いつまでも平和なままで」
美来は誰にも聞こえないような小さな声でそっとつぶやいた。
side★MARINO
「ねぇ、暇だね」
何気なくあたしは、ポケットに入りそうな小さな無線機をいじってる上総に話し掛ける。
「ん? ああ」
と言いながらも、上総はあたしの話を聞いてはいない。その時、今まで沈黙していた無線機の音が部屋中に響き渡った。




