23
maki
時をさかのぼること二十分前―――。
「北くんリュック持ったね。 んじゃ帰ろっ!」
あたし達が再び思い扉を開けようとしたとき、
「待てっお前たち! そこでなにをしているっ」
さっ最大のピンチ! なんとアマカーテアの正規軍に見つかってしまったのよ! 背後でなにやら話し声も聞こえる。どうやら二、三人いるらしい。銃を構える音が聞こえる。
「右のおまえ、見たことがあるぞ。こっちを向け」
一人がゆっくりと近づいてくる。あたしの隣にいた上総さんも、あたしから離れてそいつに近づいていく。
「ほぉ、上総じゃないか。脱走兵は重罪だぞ。おとなしくしてたほうがいいな」
そいつは彼の知り合いらしく、なれなれしく上総さんの方に手を置く。が、突然上総さんはそいつに殴りかかった。
「はやく逃げろ!!」
切れのいい上総さんの声を合図に、北くんはあたしの手を握って走り出した。しかも正規兵に向かって。地下から逃げるとリックたちが見つかる可能性があるからだろうか。
仕方がないとはいえ、むちゃくちゃだよぉ!
北くんはうまく体当たりをして逃げられたんだけど、案の定……あたしは何もないところで転んでしまい、とっさにちょうど走り出そうとしていた上総の腕をつかんで……。
そう。そうして今にいたってる。
「マリノ! 必ず助けるから」
北くんは振り返ってそう言ったのよね。
でも、ちょっと見捨てられた気分。
あの場合仕方なかったってわかってるけどさ。
「罠だったな」
上総さんは長い足を投げ出して、のんびりとふかふかのいすに座っている。
ここはいすとテーブルがおいてある、まぁ、ごく普通の部屋。捕虜のはずなのにどうしてかなぁ……。
「罠って?」
あたしが首をかしげると、上総は座りなおしてあたしをまっすぐ見た。
「さっきの変だと思わないか? 変に芝居じみてたぞ。それにあいつ……俺が殴ったやつだけど、あいつは正規兵じゃなく私兵だ。―――なんで私兵が急に正規兵に? あの服装からして、階級はかなり上だ。絶対おかしい。それに、この待遇……」
「契約したんじゃないの? 私兵って事は彼は傭兵なんでしょう?」
あたしは最近仕入れたばかりの知識を思い出しながら言った。
「いや、それはありえない。私兵は正規軍を恨んでる。それに私兵軍基地には正規軍は入ってこない」
確か、相当実力がなくちゃ、私兵は正規兵にになれないんだったよね。
「それじゃ、裏契約とか?」
深い意味もなく、何気なくあたしが言うと、上総さんははっとしたようにあたしを見た。
「裏契約……。そうかもしれないな。……あいつ、あんなに正規軍を嫌っていたのに……」
上総さんはどこかさびしそうだった。友達だったのかな…
「あの、上総さん……、さっきはごめんなさい」
あたしはとにかく話題を変えようと思っていった。
彼はあたしを見て、少し首をかしげた。
「さっき、本当だったら捕まるのはあたし一人だったはずなのに」
頭を下げたあたしを見て、彼はクスッと笑った。
「気にするな」
そうしてにっこり笑った顔が、一瞬誰かの顔とオーバーラップする。
え?
「それから」
「え、なに? 上総さん」
「その、上総さんてのやめない?」
「?」
「上総でいいよ。さん付けって慣れなくて、なんだかくすぐったい」
あたしは思わず笑ってしまった。
「あはは。じゃあ、上総、ね?」
「そのほうがいい」
「うん、わかった」
なんとなくあたし達は、この状況にそぐわない、妙になごやかな雰囲気になっちゃったのよねぇ。やっぱりあたしってば楽天的(能天気?)なのよねぇ。しみじみ……。
「あたし達、いったいいつまでここにいるのかなぁ」
「そんなに長くはないだろう。外にはリック達がいるはずだし、すぐ手を打つはずだ。ま、待遇も悪くないし、しばらくのんびりしよう」
……上総って、あたしに劣らず楽天的かも……。
「あ、そうだ。あのね、上総、耳貸して」
「耳?」
「うん。……あのね、リックは死んだことになってるの」
「?」
そしてあたしはリックが言ってたことを上総に伝えた。
……美来たちのほうは成功したのかなぁ。
out★side
「もういいかげん落ち着いてよ! こっちまで落ち着きなくなっちゃうわ!!」
美来のいらいらした怒鳴り声。
怒られたポチはなおもそわそわしている。
「しかしですね、もうとっくに約束の時間は過ぎたんですよ。きっと何かあったんですよ」
「そんなのあたしだってわかってるわよ。マリノってばいつもこうなんだから」
と、そこへ遠くから聞きなれた声が聞こえてきた。
「真幸だっ。ほらやっぱり無事だったのよ」
実は一番落ち着きがなかったのは美来のほうだったようだ。
慌てて真幸のほうに駆け寄って行く。
しかし、マリノの姿はどこにもない。
「マリノと上総が捕まった」
真幸はそれだけ言うと、肩で大きく息をしながら砂の上にひざまづいた。
「上総が?」
少しトーンの高い声。
この少年はさっきリックが救出した、リー。
「うん、途中で合流したんだけど……ごめん」
うなだれた真幸を見て、リーはふうっと息をついた。
「捕まったんなら助けに行かなくちゃな」
「そうそう。美来ちゃんの友達なら特にね」
なれなれしく美来の方に手を置いたのは、リーと同じく助け出されたばかりのケイイチ・エドガー・ビーだった。




