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chie
side★rick
「さてと」
リックは唇をぺろっとなめた。
サングラスをはじめ、自分とばれないよう変装済みである。
「ひぃふぅ……三人か。まぁまぁだな」
角から廊下の正規兵を数える。
ま、ちと古典的だが、恨んでくれるなよ。
リックがそう思ったとき、むこうから一人の少女が歩いてきた。
それに気づいた三人の兵士が一斉に銃を向けたが、それが美しい少女と知るや否や、警戒を緩める。
めったに女性と会う機会がない基地内だ。女性に対して、多少甘くなってしまっても責められないだろう。
「どうしたのですか、マドモアゼル?」
銀髪の男が紳士らしく声をかける。
少女は小首をかしげ、長い栗色の髪を揺らした。
「お兄様に会いに来たの。でも妙な人たちがいて、逃げていたら迷ってしまったの」
少し潤んだ瞳を向けられ、兵士たちは騎士道遂行とばかりに張り切る。
「妙な……といいますと?」
黒い癖髪の男がわれ先にと少女の手を取って尋ねる。
「ええ。少し汚れた感じの人で、怖い眼をしていたの。正気じゃない感じだった。怖かった……」
少女が両手で顔を覆うと、黒髪の男はここぞとばかりに半ば少女を抱き寄せ、慰めるような口調で言った。
「大丈夫ですよ。我々がお守りします」
そして顔を上げるとクイッとあごをしゃくり、もう一人の男に『見てこい』と合図した。
その男が向こうへかけていき、彼が見えなくなると、銀髪の男がズルズルと座りこんでしまったが、黒髪の男はそれに気づかず少女にかまう。
「ありがとう。とても心強いですわ」
少女が微笑むと、彼はそのまま何が起こったのかわからないまま倒れてしまった。
「ごめんね、お兄さん」
少女はぺろっと舌を出した。
「男ってのは悲しい生き物だねぇ」
おどけて言いながら、角からリックが出てくる。
「もう一人も片付けました」
先ほど男がかけていった方向からポチが出てきた。
「それにしても、見事に化けたもんだな。女は魔性って本当だね」
冗談めかしてリックが口笛を吹く。
「ありがと」
その美少女――美来は澄ましてそれに答えた。
美来が一人注意を引いてる間、銀髪の男をリックが麻酔銃で撃ち、黒髪の男は美来が出力六十パーセントのショックガンで撃ったのだ。ショックガンとはいえ、最大にすれば心臓麻痺を起こすことだってあるという代物。
もう一人はポチがK.Oした。
「でも、本当にこんな手に引っかかるとは思わなかったわ」
「まぁね。ここに入ったらたまに家族との面会があるぐらいで、女とはまったくといっていいほど縁がなくなるからな。相手がかわいけりゃ、なおさら警戒心もとぶってもんよ。悲しいもんだね」
リックはおどけて肩をすくめ、次の瞬間には真剣な目になった。
「さて時間がない。さっさとやってしまおう」
防犯カメラに細工した作用が終わらないうちに、オートロックをはずさなくては。
☆
「閣下」
ドアが開くか開かないかの所で図太い声が響き、カツカツと足音を鳴らして一人の男が入って来た。
「例の反乱軍に逃げられました」
よほど動揺してるのか、間抜けな言葉をかしこまって言う。
「いかがいたしましょう」
大きな机の奥、背を向けたイスから落ち着いた声が響いた。
「まあ、かまうことはない。倉庫でねずみを二匹捕まえたからね」
side★MARINO
ああ、あ……。情けない。どうしてこうなっちゃうんだろう。
いきなり捕まりそうになったあたしを助けようとして上総さんまで捕まっちゃうなんて……。
あたしってば何しに来たんだろう。
北くんお願い……無事逃げてね(食料もよ)。
そしてそして……絶対助けに来てよ! 約束破ったら一生うらんでやる!!




