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部屋は簡単に三つに区切られてて、そのうちの一つをあたしと美来で使うみたいだ。
ベッドに落ち着くと美来は少し怖い顔をした。
「あのね、マリノ。マリノはリック達を助けたいと思う?」
「もちろん思うよ」
「ここではね、リックはああいってたけど、あたし達何の力も持ってないわけよね」
力とか助けってやつね。
「うん」
「実際、本当は足手まといだよね……」
「でも、リックはあたし達を"力"だと思ってるわけでしょう」
「そうは言ってたけど、あたし達に"戦争"ができると思う?」
思わず黙り込んだあたしを見て、美来はふっとやさしい目をした。
「あたし、ここにいたいの」
「美来?」
「ううん、いなきゃいけないの。……までは」
「え?」
最後になんて言ったか聞こえなかった。
「なんでもない。あたし達にできるだけのことをしようって言いたかっただけ」
「うん」
窓の外には、満天の本物の星が散らばっていた。
「きれいね」
美来がささやくように言った。
「今戦いが起こってるなんて信じられないわ」
「……そうだね」
戦いか…
まだ夢の中にいるような気がする。
「おやすみ、マリノ」
「おやすみ」
★
次の朝、一番初めに目がさめたのは、なんとあたしだった。
自分でも意外すぎて、びっくりを通り越して笑ってしまう。まだ五時半だったんだけど、なんだか二度寝する気にはなれなくて、そっと部屋を抜け出した。
そこでは、昨日の位置でリックがテーブルに突っ伏して寝ている。隣に座って頬をつついてみたけど、ぐっすり熟睡してるみたい。
リックって寝てるとかわいいなぁ。
昨日ムッとしたことも忘れてしまう。
暇つぶしにリックの腕の下からずるずると地図を取り出す。これを暗記してたのか。
あたしは少し考えてからリュックを取ってきて、底から小型の機械を出した。それからその地図をそのコンピュータにインプットし、それが終わるとそのコードを二本こめかみにつける。軽い振動と共に、あたしの頭の中にその図が流れ込み、同時に目でしっかり画像を見る。二〇秒ほどで赤いランプがつき、あたしはその図面をすべて覚えた。
今あたしがやったのは記憶圧縮学習っていうもの。
個人で一人一人違う、手のひらサイズのコンピュータで、個人の得意分野を伸ばしていくための装置。あたしは図、特に地形などを覚えるのが得意なので、そのタイプの"マリノ専用コンピュータ"ということになる。ついでなので、この世界の地図なんかも覚えてしまった。
でも、あたしは歴史とか暗記ものってぜんぜんできないんだよねぇ。だから苦労するんだわ。あたしみたいに極端なのも珍しいとは言われるんだけどさぁ……。
ちなみに北くんは理数、特に機械工学が得意で、美来は語学に長けている。
さて、アマカーテア軍内のことも地形的にはわかったし、もしもリックが度忘れしてもOKね。あたしの「よけいな物持ち」も今回はかなり役に立つじゃなーい♪
コンピュータをしまい、代わりにインスタントコーヒーを取り出し、お湯を沸かす。このコーヒーはママのオリジナルブレンドなんだぁ。
お湯が沸くと、ちょうどリックが目を覚ましたので、あたしは二人分のコーヒーをついで、そのひとつをリックの前に置いた。
「あ、サンキュー」
まだ少し眠そうな声でリックが言った。
あたしがリュックからスティックシュガーを取り出すと、彼はくすっと笑った。
「おまえのそのリュックには、いろいろなものが入ってるんだな」




