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そう言いながら、なんか期待のようなものを感じる。
なんなの?
美来はあたしたちに軽くうなずいて見せると、彼にそっと近づき、こっそりと何かをささやいた。
すると彼は一瞬青ざめ、ポチが何か言うと彼はそれに頷いた。
そして、彼はあたし達についてくるように言うと歩き出したのだ。
「美来、いったいなんて言ったの?」
でも美来はいたずらっぽく笑って「内緒」といった。
む。
「だって、おもしろそうでしょ?」
なにが?
「彼ね、あたし達を見てすごく驚いたのよ」
ああ、うん。なんだかそう見えた。知らない人にびっくりしてるのとはなんか違ってて、それに、何か期待してるみたいだった。
「だからよ」
だからよって……美来ぃ、話が見えないんだけど。
「北くんわかった? 」
すがるように北くんを見たら、北くんは少し笑って肩をすくめた。その仕草からは北くんがわかってるんだかわかってないんだかよくわからない。
とにかく釈然としないまま、あたし達は彼についていき、ちょっと目立たない一角にあるビルに入った。
「ふーん。センサー防御システムですか……」
彼がドアを閉めると、北くんが感心したようにつぶやいた。
それを聞き、まだ名前も知らない彼はちょっと笑った。
「ただのお坊ちゃんてわけでもなさそうだな」
センサー防御システムってなんだろう?
(あとできいたら、熱センサーなどの防御装置で、まぁ簡単に言ってしまえば、ここに人がばれないようにするためのシステムだそうだ)
なんだかあたしだけ取り残されたような気がするのは気のせいかしら?
誰もいないビル。
ここ、なんなんだろう?
彼はあたし達四人を見回すと、少し考えるようにうつむき、何かを決心したかのようにうなずくと、ゆっくりと口を開いた。
「まずは自己紹介からしておくよ。俺はリチャード・アーサー・ウィルソン。ご存知のとおり、反乱軍のメンバーだ」
あたしは馬鹿みたいに口をぽかんと開けてしまった。
ご存知って……あたしぜんぜん存じてないんですけど……?
反乱軍て、何?
彼――ウィルソンさん――はそんなあたしに気づかず、どんどん話を進めていく。ポチたちをそっと見ると驚いた様子はまったくない。
なに? もしかしてみんな知ってたの?
え? いつ、どうして?
「ま、反乱軍て言ったって、俺を含めたって十指にあまる程度だけどな」
「ちょっと待って! 」
あたしは我慢できなくなって、彼の話をさえぎった。
「ねぇ、反乱軍て、いったい何の反乱軍なの?」
「え? だからアマカーテアの……」
「ウィルソンさん、アマカーテアの軍人じゃないの?!」
「そうだよ、アマカーテアの私兵だ」
?????
ああ、頭の上に大きなクエスチョンマークがのしかかってくる。
「でも、アマカーテアに反抗したところで相手のほうは痛くも痒くもないでしょう」
北くんが言うと、ウィルソンさんは厳しい顔になった。
ちょっと怖いけど、かっこいい。
「勝ち目があるなんてはじめから思っちゃいないよ。けど、それでもやらなくちゃならないんだ。押しつぶされて、不安定で、家族や友達や大切なものたちと一緒にいられない生活。自由がほしい。なぁ、おまえらだってそう思うだろ?!」
はぁ
「俺はここ数ヶ月、アマカーテアの軍にもぐりこんで内部を探ってたんだ。でも最近目をつけられてたらしくて、地査のとき、いきなり撃たれたんだ」
彼はいまいましそうに舌打ちをした。
「でも、意識が薄れ掛けた時女神のような女が現れてさ『おまえを目覚めさせる四人の人間がおまえに力になって助けてくれる』って俺の傷を治していったんだ」
「女神って……」
ココって二十三世紀だったよねぇ。
こんな神話めいたこと信じてる時代じゃなかったと思うんだけど。
そう思ったら、リチャードさんは怒ったような、照れたような顔をする。
「ほかに表現の仕様がないんだからしょうがないだろう。ふわふわ浮いてるし、半分透き通ってるし、おまけに美人だったしさぁ」
やっぱり、それってただの夢では……?
「あ、疑ってるだろう」
あはは
「そりゃあ俺だって、ほかのやつがこんな事言ってたら信じないだろうな。――けど、普通の人間が致命的な傷をひょいひょいなおせるか?」
うーん、でもぉ……。
「じゃあ、これなんかどうだ? 」
彼はそういったかと思うと、突然シャツを脱ぎだしたのよ!
きゃあ、女の子の前でいきなり何すんのよぉ!!
「ほら」
と見せられたシャツの背には、はっきりとこげた銃痕と思しきもの。そして彼の背中にはこびりついた血液と、ピンク色の傷跡があった。
「信用したか? 」
思わず血の気が引く。
だって、彼の話がたとえうそだったとしても、実際にあそこを打たれたのは本当だって事でしょう。
「それに」
まだあるの?
「女神の示した四人はお前たちだった」
え?
「だからさっき、あんなに混乱していたの?」
美来が言うと、彼はこくんとうなずいた。
それでさっきの「うそだろ」ってわけ……。
思わず考え込み、みんなで固まる。
「どう思う? 」
あたしが聞くと、美来とポチは顔を見合わせる。
「傷だったら、細胞活性剤使えば小一時時間で治るよねぇ」
「この時代にはまだないよ」
そうだっけ。
「信用していいのかなぁ……」
いきなり『力』とか『助け』とか言われても困っちゃうよ。
「とか言いつつ、実はわくわくしてるだろ」
こっそり北くんに指摘されてギクッ。
「え、なんのこと? 」
な、なんでばれたんだろう。
「顔が笑ってるって」
あ、あれぇ? そうかなぁ。
「だって、おもしろそうじゃない」
ねぇ、とポチに同意を求める。
「どうせ帰る方法わかんないし、それならこんな映画みたいなことに参加してみてもいいかなぁ、なんてね」
ニカーっと笑ったら、思い切りため息をつかれてしまった。
フーンだ。そんな態度とったって知ってるもん。北くんだって、実はわくわくしてるって。
チラッとリチャードさんを見ると、すっかり信じきってるみたい。
話がたとえ嘘だとしても、あんなハンサム(!)が思い切り信じてくれちゃってるんだもん、裏切るなんてできないよ。
そう思って、あたしは無謀にも彼を助けることをOKしてしまったの。
後からよく考えてみると、どうして簡単にOKしたのか不思議なんだけど、この時はまったく疑問に思わなかったんだよね。
「ところで、俺は君たちのことをなんて呼べばいいのかな」
明るい笑顔でリチャードさんが言った。
「ああ、失礼。このコは俺のいとこで濱田美来。で、そっちが友達の早瀬毬乃とポチ」
北くんが代表して紹介していくと、リチャードさんがきょとんとした。
「は? ポチ?」
「え、あ、それはあだ名で……えーと……」
くっくっく
北くんが珍しくあたふたしてる。
あたしがいつもポチって読んでるし、長ったらしい名前だから、北くんすっかり忘れてるのね。
それでポチは自分で自己紹介。
「ポッセリアム・シスタル・ヴィゼサート・ロイス・サルーダです」
長ったらしい名前にリチャードさんは面食らって、それからくすっと笑った。
「覚えるのが大変そうだな」
「ポチで結構ですよ」
そう言って握手をする。




