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chie
……このときあたしはまったく気づいていなかった。
この時点で一番苦悩してたのは、本当は美来だったってことに。
そして、それに気づいていたのはポチだけだったんだよね。
あたしは美来の親友としてすごく情けなくなったんだけど、それはまだずっと先の話……。
★
第三次世界大戦から約百二十年経っていたこの時代、月で新しい特殊鉱石が見つかるまではかなり物資不足で、生活レベル的には二〇世紀末期か二十一世紀初頭ぐらいだったらしい。
このホテルはかなりいいホテルのようだった。
五十二階建てで、この辺のビルと上手に調和している。
最上階と二階にレストランがあって、そのほか、喫茶店や様々なジャンルの服屋なんかも入ってる。
自家発電装置が人がいないにもかかわらずちゃんと働いていて、自動清掃装置のおかげで、ホテルはチリひとつないくらいぴかぴかだった。
雑誌なんかも残っていて、あたしたちはそれを参考にこの時代でもおかしくないように、自分たちの服をベースに二十三世紀風の服装にした。
ブティックから拝借しようかとも考えたんだけど、やっぱりそれは気が引け、美来が持ってたお金で小物を数点買った(お店にお金を置いただけだけど)。
あたしたちは二日間をこのホテルで過ごした。
理由その一。
雨が降っていたから。
理由そのニ。
この世界の情報を集めていたから。
そして未来へ帰る方法が見つからないまま、三日目の朝。
夜のうちに雨は上がったみたいで、見たこともないくらいきれいな朝だった。
「今日は外に行ってみよう」
と、北くんが提案した。
「そうですね。いつまでもココにいるわけにも行きませんしね」
軽い朝食をとってあたしたちはホテルを出た。
行き先は適当。
人々がいると思われる"シェルター"がどこにあるのかわからないんだもん。
しかたないよね。
"シェルター"のことはテレビで知った。
でも、テレビの画像も音声もかなり悪かったからはっきりはわからなかったんだけど、世界情勢が不安定で、一般人のほとんどは"シェルター"で生活してるらしいのよ。
だからとりあえず人と会うには、"シェルター"を探さなくちゃいけないわけ。
情勢の不安て言ってのが、正直よくわからないんだけどね。
でも、北くんたちが言うんだから、とにかく危ないって事なんだろうなぁ。あ、来年にはアマカーテアは滅びるんだっけ。それも関係してるのかな?
「ねぇ、アマカーテアの基地って地球にはないんだっけ?」
「基地だけなら世界中に散らばってたはずだけど」
「ふーん、いっぱいあったんだ。本基地は、月だっけ?」
「そう言われてるね」
我ながらなーんにも知らないなぁ。
よし、帰ったらバリバリ勉強するぞ。
ひそかにガッツポーズをとったらポチと目が合ってしまった。
「その決心が長持ちするように祈ってますよ」
クスクス笑いながらポチが言った。
きゃー、考えてることが完全に読まれてる! ふーんだ。祈ってもらわなくったって大丈夫だもん!――たぶん……。
そんな心もたない決心を抱えつつ、それから丸一日後、美来の言葉を借りて言えば『運命の引き金』になったある人と、あたしたちは出会ったんだ……。




