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ぐるりと改めて回りを見回す。あたしの視界にはビルしか映らない。
「でも……」
あたしは少し考えて口を開いた。
「ココが地球だって証拠は? 誰かがあたしたちをだましてるって事はありえないのかなぁ」
あたしにしてはなかなか鋭い! と、内心自画自賛。
でも北くんは少し困ったような顔をした。
「だったらよかったんだけど……。大体、俺たちだましたって何の特にもなんないよ。タレントだますならともかく」
そうかなぁ?
北くんや美来。それにポチだったらかなり人気があるし、学校や隠れファンの人とか、かくれて喜んでる人がいないとも限らないと思うんだけど……。
「それにね、その新聞だけど」
「こんなのいくらでも作れるでしょう?」
あたしが言うと美来はため息をついて一枚のコインを見せた。
「あのね、それ、これで買ったのよ……」
そのコインは、この前みんなで行った「アマカーテア滅後二百周年記念の祭典」で美来が当てたその当時のお金だった。デザインがきれいだったので、美来がセットで最近持ち歩いてたものだ。
「それにね」
「まだあるの?」
あたしが叫ぶと、美来たちは百聞は一見にしかずと、あたしをあるビルの一室に連れて行った。
「勝手に入っちゃまずいんじゃない? 」
そういいつつ、キョロキョロあたりを見回しながら部屋に入ってみる。
アンティークな感じで、かなり洒落た部屋。
テーブルの上にはレターセットが置いてあり『HOTEL LUCE』とかわいいロゴが入っていた。
「へぇ、ココってホテルだったんだ。じゃあ、なおさら勝手に入ったら……」
「勝手も何も、ココには誰もいないのよ」
隣の部屋で、何やらごそごそやってた美来がそういいながら出てきた。
「誰も?」
「うん。ココに来るまでも誰にも出会わなかったでしょ」
あたしはうなずいたけど、まだ誰かのいたずらじゃないかって思ってたから、どうしてもそこいらへんで隠れて見てるんじゃないかって思ってしまう。
何か言おうとしたけど、隣の部屋から北くんが読んだのでそっちへ移動。
そこには壁一面の二次元タイプの大きな……多分テレビ?
「これ見てみなよ」
画面には、少し画像は悪いが、なじみのない珍しいものがたくさん映っていた。
そしてその下にある半永久型時計には、さっきの新聞と同じ日付。
「まさか……」
北くんがチャンネルを変えていくと、母星史学の教材資料にあった制服を着た人が映る。
「アマカーテアの番組みたいだな。ニュース……かな」
北くんの声が遠い。
いったい何がおこってるんだろう。これって本当に、ちゃんとした現実?
あたしははっとして窓へ駆け寄って空を見上げた。
ぺたっト窓に張り付いてみた空は、どんよりと曇り、雨が降り出していた。
「雨……? 」
それはココが火星ではない決定的な証拠だった。火星では一般居住区には決まった日にしか雨は降らせない。それ以外では農業区など、特別な区だけしか降らない。
「本当に地球。本当に過去……」
何度か口の中でつぶやいてみる。
不思議なことにあたしはその現実に、あまり驚いていない。
なぜか慣れたことのような感覚。
そんなことはないんだけど、映画か何かのせいかな?
「お嬢さん」
気遣うようなポチの声。
そして北くんのほうを見ると、唇をかんでうつむいている。
……落ち込んでる?
ああ、そうか……責任感じてるんだ……。
励ましてあげたいけど、こういう場合なんて言ったらいいのかなぁ。
ポチをチラッと見ると、彼はニコッと笑ってうなずいた。大丈夫ですよって言ってるみたいに。




