就活というより生きてること自体が終活です
翌日、陸奥六郎が、他の惑星に出かけてしまっている様子の後藤三世にビジュフォンを入れた。「衆克は、順調ではないですね。私の計画では、今月から働いているはずでしたから―― まあ、景気が悪い証拠でしょうね。地方は特に。なので、その場しのぎとして、短期収入を模索中です。この週末は、かなり天気が良かったので、昨日は宇宙一と誉れの高い、血の池地獄温泉に入り、満点の夜空を見て、星に願いを叶えてもらえるよう、銀河の川に頼んでおきましたよ。効果は薄いでしょうけど――」苦笑いしながら陸奥六郎がいった。
他の惑星に到着済みの後藤三世が前のめりになりながら返事をした。「やはり、宇宙全体の景況がどんどん悪くなっていますね。惑星カメリヤやユールシア共和惑星、中つ国惑星なんかも下向きの様相を隠しまくっていますね。私の陰謀仲間の一人、カッパ星人の情報では、惑星カメリヤより先に、まさかの、中つ国惑星が不動産バブルが原因でデフォルト分裂に向けて秒読みのようですよ。まぁ、しかしながら、私の所属する不動産マネージメント業は順調ですが―― 私の方は、そんな宇宙の超ハイパー高度資本主義社会がひっくり返る手前であろうと何であろうと、しっかり、毎日、日々、社築していますよ。決してベストではないですが、この時代しょうがないことなんでしょう。陸奥『老苦労』さんの短期というと結構、派遣とかの仕事はあるでしょうね。もう世の中、派遣しか仕事ないのでは? とも思いますよ。私も今の職を失ったら派遣の仕事をするか販売応援のバイトでもするしかないですね。とりあえず、私もヒフ民も手を染めた大手家電販売の販売応援アルバイトがオススメです。結局、この年齢になって気付いたのは、この惑星では、能力とかじゃなくて、どこの会社にい続けるかだけの世界なんですね」
「惑星アリストテレスにある、リア地獄の引越社のニュースを見ましたが、なかなか面白い劇場展開ですね。被害の営業マンは気の毒ですが――、他社工作員では無い事を切に願いたいモンですね。それにしても、動画の撮影に動員されている、撮影会社名も最後に出る。オニオン組織もやり手だが、出来すぎ感もある、というのが感想です。景気悪いから、こんな劇場型ニュースがトピックになるんでしょうんね。アホノミックスの正体でしょうか。これが、経済戦争なのか・・・ やはり、世の中はとうとう、ゾンビゾーンの一歩手前まで来たのかも―― せっかく渋いコネで入ったのだから、流石の後藤三世さんも今回に限っては定年まで、石に張り付いてコケがむすまで、しがみつくことです。また借金できるようになれば、良物件を購入していきながら、不労所得というスーパービズモデルで、余生を送れば良いじゃないですか。それをベースに、派遣か販売応援するも良し・・・、良質物件オーナーになれば、派遣より覇権でしょうけど――」笑いながら陸奥六郎が続けた。
「この前、ヒフ民が、珍しく電話をくれました。どうも彼は、上席研究員から社長に昇格したらしい・・・ まぁ、自分の会社ですから社長にも平社員も自由自在なんでょうが―― そう言えば、後藤三世さんは、今、惑星北海道だそうですね。帰ってきたら、スパカツのレポート下さい。自分にも、不幸があり、明日から惑星松山です。地元は、いかがですか? 蝦夷鹿馬とかに、出会えるのでしょうか? こちらも、惑星松山で久しぶりに、家族と会いましたよ。生まれ故郷や親族と会うと、ノスタルジーに浸れますね――」そう話して、陸奥六郎がビジュフォンを切った。
翌日、陸奥六郎が後藤三世にビジュフォンを入れてきた。「いよいよ、短期の仕事に、突入です。テレビ受信調査という、あの放送教会の手先として働くのは、胸が痛いですね。秋の深まりと共に、懐の寒さも増してくる今日この頃です」
後藤三世が元気そうな声で返事を返した。「就職おめでとうございます。何にせよ、勤労は良いことです。スパかつは、昨日夜食しました。なかなか詳しいですね。こちらだと、ファウンテン屋のスパゲッティが地元民には名物ですからね。惑星松山が今は実家なんですか。なかなか、日本全国に陸奥六郎網があるんですね。地元は相変わらずの過疎っていて、人口減少の激しさを感じます。二十万人都市のはずが十八万人だそうです。比率もジジババが多いんでしょうね。アホ飲みクスがしっかり効いてますね」
「惑星松山は、祖母が亡くなったので、珍しく家族と対面しただけです。俳句を詠む時間もないくらい一泊二日の弾丸旅路でした。しかも、母方なので陸奥網じゃないです。まぁ、しかし、どこの都市も年寄りの集合体でしょう。我々自身が老人になる頃は、更にそうなって廃棄物扱いの世に突入ですかね。仕事は短期だから、就活は、もう少し続行です―― それと、蛇足ながら、スパゲッティは、長期保存可能なナイスな食材ですからね!」
「就活継続なんですね。こちらは、今日、超銀河超特急で惑星北海道を発ち、わが師の常套句『ここから先は有料です』社会に戻ります。とは言っても、観光客みたく地元にマネーを投入したので、極貧生活がしばらく続きますね。弟妹に、自分の謎の病気の話、本当は怖い癌が治る話、この世の支配者は、恐竜ドラゴンであるという真実の話をして、ドン引きされてしまいました」
「まあ、就活というより生きてること自体が終活ですね。じゃー、今回はゆっくり地元創生に貢献した訳ですね。留任大臣も大喜びでしょう。長く離れた親類に、後藤三世教の話はタブーでしょうね。たとえ、多くの事実がポイズンのように盛り込まれていたとしても―― 普通の人は、変化を嫌い、考えや思考を急に変える事は出来ないし―― 皆、自分の興味ありきでしょうから。再び、スパカツの味のレポートでも、お願いします」
「無事、新羽田超銀河ステーションに到着。しかし、なかなか死ねませんね。体がダルくてしょうがないんですけど。原因不明といわれる病はキツイです。この惑星の九割を超えるヤブ医者どもが診断できないだけで、原因は明らかなんですが。さて、スパかつですが、ファウンテン屋のスパゲッティは、地元の人間は大概食しているので、説明不要、言うことなしの絶品です。しかし、『どこでも食べられるものが名物とは――』と思います。まぁイクラドンやらウニドンも名物だけど―― 宇宙中で一番食べられているメニューかもしれませんね。どこでも食べられる、このスパゲッティという食べ物は、一体、どこから奇譚でしょうね」
「長旅、お疲れ様です。折角の休みで銀河を北上しても、なお、身体がだるいのは大変ですね。確かに、カツもスパも国内ならどこでも食えるものですね、辺境惑星の名物って貧乏な時代の産物ですね。今も貧乏時代に戻りつつあるから、B級グルメとか立ち食いステーキとか、流行ってるんでしょうかね?」




