表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

改革への一歩


 現在、ソフィーアが講堂に現れてから一刻半が経ち場所は講堂から学園の闘技場に移していた。

 学園の闘技場は学園創立時より立っている歴史深い場所で、学園の行事以外でも国際的な行事で使われることもある。

 ユウキの知識の中ではコロッセウムに似ているが、外装や内装の壁は白地の大理石に似た素材で作られており、泥臭い雰囲気などとは対極的に貴族達が好む気品と風格が滲み出ていた。

 そして、ユウキは闘技場の控え室でアリシアに手伝ってもらいながら戦闘用の服やガントレットを装着していた。


「本当にお前が来てから面倒事ばかり起きている気がするぞ」

「そうですか。あの、ユウキ様動かないで下さい」

「すまん―――って俺の話聞いてる?」


 アリシアにはユウキの愚痴に耳を傾ける気はこれぽっちもない。

 ユウキももう慣れたのかアリシアになされるがまま立っている。


「……はぁ~ ソフィーアからしたら目論見通りに話が進んでいるんだろうな」


 元々反発が大きいだろうと思う改革にソフィーア姫が口添えして貴族達に学園に関与するチャンスを与えた形になっているが、

 

「実際はここで改革反対派の目を摘んで後々横槍を入れられるのを防ぐためか」

「それで間違いないと思います」


 もとより反対されるであろう改革は一つ、二つではない。だから、王族であるソフィーア姫からあえて貴族達に美味し話を出したのだろうとアリシアもユウキも考えていた。

 つまり、学園に関係者を入れるチャンスをあげるから後は口出しして来ないでねっということなのだろう。


「……全く餌の垂らし方が本当に上手いよ」

「それ程この学園の講師になるということに魅力があるのでしょう。でもさらに状況を悪くしたのはユウキ様にも原因があるのではないですか」

「わかってるよ!―――なんであんなこと言っちまったんだぁーーー!」


 っとユウキは拳を強気握りながら一刻程前のことを思いだしていた。




 ソフィーア姫の突然の提案をレニアが戸惑いながらも頷く。すると一人の貴族がすぐさま立ち上がりソフィーア姫に発言を求めてきた。


「僭越ながらわたくしめに発言の許可をいただけますでしょうか」

「ガローニ卿、とうぞなにかありますか」

「ソフィーア様、大変素晴らしいご提案ありがとうございます。つきましては私から推薦したき者がございます」


 予定通りガローニ伯爵がソフィーア姫とレニエの企てに一番に食いついてきた。


「ガローニ卿の推薦であれば期待が持てますね。ガローニ卿のところの兵士は精強で優秀な者が多いと聞いています」

「はは、ソフィーア様からしたら取るに足らない者たちですが、そこらのごろつきをなら片手であしらえる程には鍛えさせております」


 ごろつきと口にした時ガローニの視線は睨むようにユウキを捉えていた。

(……勘弁してくれ)

 ユウキを精一杯の苦笑いでガローニ伯爵の視線を受け止めるしかなかった。


「いえ、英雄というのは奇しくもそういったものから生まれるものです。ですから私も鍛錬を欠かす日はありません。ところで話からするとガローニ卿の兵団から推薦されるので」


 少しであったが苛立った声色でソフィーアはガローニ伯爵に話を促した。

 そんなソフィーアの様子に気づくようすもなくガローニ伯爵は話を続ける。


「さすがは英雄の中の英雄ですな。私の領兵の中で分隊長を務めており、魔法戦闘がこなせる二名を是非推推薦させていただきたい」

「……二名もですか。貴重な人材かと思いますが良いのですか?」

「はい。 確かに両名とも非常に優秀な人材ですが、我が領内でくすぶっているももったいないと思うもので」

「わかりました」


 ソフィーアもレニエも人数制限のことは、口にしなかったためガローニ伯爵が二名もの推薦してきたのを断ることはできない。

 やはり国史古くから権謀術数の中生き抜いてきている名家だけのことはあるっとユウキはガローニ伯爵の危険度を一つ上げた。


 その後、百名近い貴族や商人の中で推薦して来たのはたった五名程しかいなかった。

 ソフィーアの公務のこともあり今日中に選出することが条件だったのもあるが、今はどこの領も優秀な魔導士は不足しているということがわかる。

 レニエはこの国の状況を再確認したかのように頷くと、


「ではソフィーア様、候補はユウキ殿を含めた八名になります」

「レニエ学園長、この場合はどのようにして各々実力を測りましょうか?」

「本来であればペーパーテストや実技試験など行い指導力や教養を測りますが、彼の受け持つはずの授業は魔法戦闘論でした。であれば魔法戦闘、つまり模擬戦の勝敗にて決めるはいかがでしょう」


 ソフィーアは一瞬逡巡した素振りを見せたが、レニエ学園長の提案を気に入ったかのように鷹揚に頷いた。


「とても分かりやすいです。ガローニ伯爵はいかがですか」


 形式上推薦者の中で最も身分の高いガローニ伯爵に同意を求める。


「私共もソフィーア様の意見に賛成です」


 形式的な問いにガローニ伯爵が頷く。そして、その模擬戦の対戦形式に話題が移ると今まで沈黙していた人物が声を発した。


「僭越ながら私から提案がございます」


 っとソフィーア姫の前に一人の男が恭しく跪いた。


「対戦形式の件ですが、高貴な皆様方の貴重なお時間を省くためにもバトルロワイアル形式はいかがでしょうか?」


 バトルロワイアル形式とは自分が以外が全て敵という形式のことである。

 講堂が少しざわめくなか意外にも真っ先に難色を示したはレニエ学園長だった。 


「ユウキ君、今の状況だとその形式難しいのではないか? なんせガローニ卿は二名もの人物推薦しているため、すでにペア出来てしまっている」


 レニエは物言いたそうなガローニ伯爵を一瞥すると心配そうにユウキに声をかける。


「はい、それで問題ありません。もとより戦場で一対一で戦える場面なんて限られています。こういった形式の方がより実力が測りやすのでは?」


 ユウキはやる気のない表情から一変して堂々と語る。できるだけ丁寧な言葉遣いをこころがけているが、ここで完全にある人物の逆鱗に触れていた。


 ガローニ伯爵の顔は血管がはち切れそうなど血管が浮かび上がっていた。ガローニ伯爵からしたら精強を誇る自領の兵士を平民の冒険者が馬鹿にしているかのように聞こえたのだ。



「いい度胸だな。冒険者風情がっ!」

「無礼な発言をしてしまったなら申し訳ありません。あいにく冒険者生活が長かったため言葉遣いに粗があったかもしれません。今後精進して参ります」


 ユウキもこうなるとが分かっていたので、まさしく慇懃無礼とはこのことである。


「ガローニ卿、少し落ちつきましょう!」


 今にもユウキに飛びかかりそうなガローニ伯爵を取り巻きの貴族達が宥めにかかる。そんな中、コロコロと不釣り合いな笑い声がユウキ達の耳に届いた。


「ふっっクスクス、面白い提案ね。確かに手っ取り早く魔法戦闘の実力を図るのに丁度いいわね」


 はしたなくならないよう口に手を添えて、笑いをこらえながら言う。

 普段凛々しい表情が板に付いているソフィーアがこのような表情をするのが珍しく、周りの男性貴族達は皆一様にソフィーアに見惚れていた。


「ソフィーア様がそうおっしゃるなら、私に依存はありません」

「私もその形式で問題はありません」


 レニエ学園長とガローニ伯爵を含む他の貴族も貴族の礼に則りソフィーアに賛同の意を示した。

 

「それでは闘技場へと場所を移動いたしましょう」 

 

 そう言い残し、レニエ学園長を連れ早々に講堂から退場すると座っていた貴族や商人の子弟達は一斉に闘技場へと移動を開始した。

 最後にガローニ伯爵が肩を怒らせながら講堂を後にすると、


「少し挑発しすぎたかもしれませんね」


 その冷静な声にユウキはビクッと肩を震わせた。


「や、やっぱりそう思う?」


 後々のことを考えて少し挑発をしたが、ユウキはただトーナメント方式で戦うのが面倒だから最もらしい言い訳をつけてバトルロワイアル方式を提案したに過ぎない。


「もう、帰ってもいいですか?」

「諦めてください」


 



 そして、なんだかんだと言い訳をつけて逃げようとするユウキの首根っこを捕まえ引きずりながら控え室までやってきたのが今の現状である。

 メイドとして完璧に装備を整えるアリシアに黙ってなされるがままのユウキ。


「俺もあんなこと言っといてなんだけど勝てる見込みが高いと思えないだぞ」


 ユウキは決して、自分自身を卑下してこんなことを言っているわけではない。冷静に自分の実力を照らし合わせて考えた結果だ。 


「これで、準備が終わりました」


 アリシアは自分の仕事に満足気に頷くと、改めてユウキの姿を見直す。

 藍色の戦闘用コートにブーツ、ガントレットっとコート以外は学園の借り物であるが防御力は上位冒険者でも好んで装備しがるほどの一品である。


「最後に今回の得物は何いたしましょう」


 こればかりはアリシアにも選定できなかったため、忸怩たる思いでユウキに尋ねた。

 しかし、いつもなら適当に選んで終わらせるのに対して、今回は珍しく思い悩む素振りをみせた。

 

「如何しましたか」

「いや―――」


 そんユウキの姿にアリシアが物珍しそうに見つめる中、正直ユウキは今回刃物をついた武器を使うのを躊躇っていた。ハロルドやシャルロッテが見ているのもあるが、最近刃ついた武器を使う度に冷徹な自分が帰ってくる感覚に陥っていた。

 しばらく考えて、分が悪いがもうこの際素手でいいかと控え室を見回すとあるものが目に入った。


「……よし。これにする」


 ユウキが決心したかのようにそれを手に取る。

 

「負ければ大目玉だな」

「ソフィーア様はそう思ってはいないでしょう。あの方はあなたを心から信頼しております」

「そんな信頼ありがた迷惑だな」


 心の底から煩わしそうに頭を掻きながら首を振る。

 ユウキの表情や瞳がどこか陰って見える姿にアリシアは寂しげに苦笑する。


「ところで本当にその武器で戦うのですか」

「どうせ何使ったて同じだろ。それに―――今日の余興にはこれで丁度いい」


 アリシアがユウキに再確認していると、控え室の扉が叩かれた。すぐさまアリシアが扉を開けると騎士装束を纏った男が入ってきた。


「準備が整いましたら、闘技場へと足をお運びください。後こちらをお読み下さい」

「誰からの手紙ですか?」


 当然の疑問も口にしたが目の前の男は何も言わず手紙を突き出す。仕方なしにアリシアが手紙を男性騎士から受けとる。

 念の為、何らかの魔法が仕掛けられていないを確認してからユウキに手紙を手渡す。

 あまり内容が書かれていなかったのかユウキは一瞬で読み終えると額に手を当てて眉間を二度三度揉み解す。


「…………差出人に善処しますっとお伝えください」

「かしこまりました。伝言承りました」


 男性騎士は一つ頷くと憮然とした顔で部屋から退出していった。

 アリシアはユウキの表情とこのタイミングから察っして差出人がだいたい誰なのか検討がついていた。


「失礼かと思いますが、内容はなんと書かれていたのですか」

「ほら」


 ユウキは少しよれてしまった手紙をぞんざいに放り投げる。

 アリシアは手紙が落ちる前に拾い上げると「失礼します」っと断りを入れてから渡された手紙に目を通す。


 やはり手紙の内容にも名前は書かれてはいない。しかし、アリシアからすればよく見慣れている文字で書かれていた。


 『私はあなたがあなたであるために完全勝利を望みます』


 どこか傲慢なようでいて、それでも相手を気遣うような優しさを感じる。

 ユウキがこれを見てどの様にどの様に思ったのかアリシアには分からない。けれど闘技場へと赴く後ろ姿は、かつてアリシアが目にした本物の英雄にほんの少し重なって見えた。



ここで戦闘シーンを書くつもりだったのですが、グダグダとちがう事を書いてしまいました.

もっと話をスムーズに転がせるように頑張って参ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ